機種変とアイスとボルダリング

「おっ、お待たせ朱音♪ 」

 校門の前で5分ほど縁を待っていると普段はストレートヘアーなのに、何故か今日はピンクのリボンで髪を纏めてポニーテールにしている。縁に似合っていて、とても可愛らしい。

「どっ、どうかな? カワイイかな? 」

 そういって縁は少し前のめりになって俺の顔を見つめてくる。


「カワイイ…。はわぁっ! いっ、いや! スゴく髪形似合ってるよ♪ うん、リボンもカワイイし…(うわぁ~っ、思わずカワイイって本音が出ちゃったじゃん! うわぁ~恥ずかしい) 」

 そういって縁の手をそっと握る。

「うっ、うん! ありがとう♪(えへへっ、朱音にカワイイって言ってもらっちゃった♪ ) それじゃあデート! じゃなかった、機種変に行こっか! 」


 そういって縁は恥ずかしそうに俺の腕に抱きついてきた。

「ねぇ、色々と当たってて恥ずかしいんだけど…」

 そういうと縁は顔を真っ赤にさせながら俺を見つめて『わっ、わざと当ててるの! いい加減気づきなよ! (私の気持ちに! )』と言ってきたのだけど、気づいたから声をかけたんだけどな?

◆◇◆◇

 なぜ今日に限ってカップルが多いんだ?

 そしてなぜ携帯ショップでは無く、何故アオンに来たんだ?

 家の近くのある程度の物は何でも揃う大型ショッピングモールだけれども…。

「あっ、朱音♪ 見て! 新作のアイスが出てる! 美味しそう! 」


 そういって縁は俺の手を引き41アイスクリームの新作アイスを2つ注文する。

「ねっ、ねっ♪ あとでお互いのアイスを食べさせっこしないか? そっちのアイスも食べてみたいんだ! ダメかな? 」

 そういって縁は自分のアイスをスプーンで掬って俺の口元に運んでくる。

 もうすぐ9月だからだろうか、アイスは俺が買ったのは栗カボチャで縁がスイートポテトだった。


「あ~ん、ん! 美味しぃ~っ! 朱音の栗カボチャ味、思ってた以上に甘くて優しい味がする! 」

 そういってニコニコしている。

「おまっ、結構食べたな…。それじゃあ俺も縁のアイスひとくちくれよ」

 そういってスプーンで掬おうとすると

「待って! 私が食べさせてあげる! じゃないと朱音のことだから私のアイスを多く食べそうだ」

 そういって縁は自分のスプーンでアイスを掬って俺の口元に運んでくる。


「ほら、口を開けるんだ! 」

 縁、顔を真っ赤にさせるんならやめてくれ!

「周りも見ているだろ! 早く食べるんだ♪ わっ、私だって人前でこんなことするの恥ずかしいんだからな! 」

 そういって俺の口にアイスを掬ったスプーンを突っ込んでくる。


「どうだ朱音? 美味しいだろ? それに今さらだけどこれって間接キスだな♥」

 そういって俺の顔を見つめてくるけど

 間接キスって意識しちゃったら味がまったく分からない…。

「あっ、うん…。縁のアイスも美味しいな」

 そういうと縁は嬉しそうに笑って

「そうだろ? やっぱり41のアイスは大体美味しい♪ 」


そういって美味しそうにニコニコしながら俺たちはアイスを食べ終えた。


「次は今回の本題、スマホの機種変に行こう」

 そういって食べ終わったカップとスプーンをゴミ箱に入れて立ち上がり携帯ショップに向かう。

「でも水没だから機種変というより買い替えじゃないのか? 」

 そういって俺の顔を伺ってくる。


「本体の代金は払い終わってるからどっちでも大丈夫だけどメモリーが壊れてたら、また一から電話帳に登録しなくちゃだから本当にめんどくさいな…」

 そう呟くと縁は嬉しそうに

「そうしたら私が新しくなった朱音のスマホのハジメテになるんだな♥」

 そういってモジモジしている。


「あってるけど言い方がイヤらしいからやめろ! 」

 そういって縁の頭を軽くチョップする。

「はぅっ、背が縮んじゃうじゃないか! 身長差があるとキスしづらいんだからな!」

 そういって頭をおさえている。


 そうこうしているうちに携帯ショップに着いたので俺は店員に事の顛末を説明した結果メモリーも復活しなかったため買い替えることになった。

「彼女さんのアドレスを入れておきましょうか? 」

 店員さんが俺と縁を見て尋ねてくる。

「あっ、はい…。お願いします」

 そういうと店員さんは縁のスマホを預かって操作を始めた。


 隣に座る縁を見ると真っ赤になった顔を手で覆い指の隙間から俺を見つめていた。

「どうしたの縁? 」

 縁の耳元で囁くと縁は更に顔を赤くして首を横に振っていた。

◆◇◆◇

「ありがとうございました」

 新しくなったスマホを受け取り店を出る。

「ねぇ縁、どうして店の中であんなに真っ赤になってたの? 」

 今もうっすら赤くなっている縁に尋ねると

「だって、彼女さんのアドレスを入れておきましょうか? って尋ねられて朱音がお願いしますって答えるんだもん! それって私を彼女って認めてくれたってことでいいんだよな? 」


 あぁ~っ、だから恥ずかしそうにしてたのか…。俺は店員に説明するのが面倒で軽くながしてたなんて絶対に言えない…。

「あっ、うっ、うん…。縁はだ…」

「おにぃ、不倫は許さないからぁ~! 」

 後ろから美鈴の蹴りが飛んできた。


「おっ、お前どっから…」

 美鈴に尋ねると美鈴は頬を膨らまして

「ついさっき見かけたから尾行してた! おにぃは私が食材を買いに来てるのに橘先輩とイチャイチャですか💢 いいご身分ですね💢少しは重い荷物を持ってる私を手伝おうとは思わないんですか? 橘先輩も橘先輩ですよ! おにぃとイチャイチャして顔が緩みぱっなしですよ💢 それにおにぃは私の彼氏なのでそんなに抱きつかないでください💢」

 そういって美鈴は俺と縁の間に入って荷物を俺に差し出してきた。


「持って💢 か弱い女の子にこんなに重い荷物を持たせるつもりなんですか? おにぃ💢」

 こっ、怖い((( ;゚Д゚)))美鈴が怒ってる!

「仕方ない、私も持ってあげるよ♪ 朱音も持ってあげなよ♪ 私は彼女みたいに心は狭くないからね♪ 」

 ひっ、火に油を注がないでぇ~っ!

「へぇ~っ、それは私が心が狭いって言いたいんだよね? それじゃあアレで勝負しようよ♪ アレで勝った方が相手に1つだけ命令出来るって賭けありでさ♪ 」

 そういって美鈴が指差した方向には吹き抜け部分を活用したボルダリング体験スペースがあった。


 あれっ? 美鈴って高いとこダメじゃなかったっけ?

 ボルダリングスペースにむかう2人の後ろ姿を見ながら、そう思った。

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