ラッキーアイテムは野菜とフライパン

「さて、今日は喫茶店のメニューを考えよっか♪ 」

 昨日はあの後ダンスを2人に教えて踊りまくったせいか家に着いて風呂に入ったらバタンキューだった…。

 そして今日は喫茶店のメニューを決めよう! ということで調理実習室によろず部と新旧生徒会がきている。


「綾、そこ違うから! 」

 そういって綾先輩から野菜を取り上げるのは旧生徒会の副会長の小鳥遊たかなし立夏りっか先輩。

「えぇ~っ、いいじゃん! 人参美味しいよ? 」

 そういって綾先輩は人参をミキサーに入れようとする。


「そういう問題じゃないの! とりあえず席に座って綾は待ってて、お願いだから…」

 そういって隣で調理をする俺を見る。

「君が朱音君? 料理上手なんだね♪ 」

 俺の手元を見て小鳥遊先輩が驚いた様子で尋ねてきた。

「えぇ、家では美鈴と交互に食事を作ってるので。食べてくれる人が居るとマズい料理は出せないですから練習あるのみですよ♪ 」


 そういって手元にある果物を飾り切りを施していく。

「うわぁ~本当にスゴいね…」

 珍しそうに俺の切った果物を見ている。

「へへっ、スゴいですよね私のおにぃ♪ おにぃは手先が器用だからバラとかも作れるんですよ♪ 」


「お前が偉そうに言うな♪ 」

 美鈴の頭を軽くチョップすると美鈴は舌をペロッと出して恥ずかしそうにしていた。

「ねぇ、気になったんだけど2人って同棲してるの? 」

 小鳥遊先輩が気まずそうに声をかけてくる。


「えっ、はい…。一緒に棲んでますけど?」

 そう答えると小鳥遊先輩は顔を真っ赤にさせて口をパクパクさせた後

「そっ、そんなダメですよ不純異性交遊なんて! せっ、せめて同棲するなら高校を卒業してからじゃないと! 」

 そういってワタワタしている…。


 あっ、そういうことか!

「あっ、いや! そういう関係じゃなくて俺と美鈴は義理の兄妹なんですよ! お互いの両親が子連れで再婚したから…。名前は変えるのに抵抗があったので俺は母方の姓を名乗ってるんです」

 理由を説明すると小鳥遊先輩は頷いて納得してくれたけど…。

「あれ? でも義理の兄妹ってことは結婚出来るよね? この場合は不純異性交遊になるのかな? それとも兄妹だからいいのかな?」


 そこは食いつかなくても…。

「不純異性交遊じゃないです! 私とおにぃは兄妹だけど恋人どうしだからOKです! 」

 いつのまに恋人どうしになったんだ?

「えっ…。それってシスコン? 」

 ちょっ、汚物を見るような目で見ないでください小鳥遊先輩!


「まったく、美鈴君は…。朱音の彼女はまだ決まってないだろ? それに朱音は美鈴君じゃなくて私を選ぶはずだからシスコンじゃないですよ先輩♪ 」

 おぉっ…、フォローになってるのか、なってないのか分からない発言ありがとう…?

「えっ…? どういうこと…? 縁ちゃんも彼のこと好きなの? えっ? 彼って案外チャラ男? 」

 まぁ普通だったらそういう反応ですよね…。


「違います。チャラ男なんかじゃないです! それに2人に告白されたのは確かですけど…。でもきちんと答えは出すって言ってあります。高校在学中には答えを出して一生を添い遂げようと思ってます」

 そういうと小鳥遊先輩は驚いた顔で俺を見つめたあと考えて

「なるほど、一生を添い遂げる相手を決めるなら慎重になっても仕方ないか…。後悔の無いようにね♪ 」

 そういって両手をパンッと叩いて料理を再開する。


「野菜スムージー作るけど何か食べられないものってある? 」

 そういって小鳥遊先輩が辺りを見ると美鈴が手を挙げて『私、セロリが駄目です! 』

と言っているが

「セロリとトマトジュース投入します! 」

 そういって小鳥遊先輩はミキサーにセロリとトマトジュースを投入した…。


「あっ、あぁ~っ!! 先輩の意地悪!! なんでトマトジュースを入れるんですか! 私に対する嫌がらせですか! 」

 縁が泣きそうな目で小鳥遊先輩を睨んでいる。

「あれ? 縁ってトマト平気だよね? 」

 不思議に思い縁に尋ねると縁は頷いた後

「トマトは平気なんだが、どうして潰したり濾したり加糖したりするのか理解出来ない…」

 そういって拗ねてしまった。


「もぅ~っ、2人とも好き嫌いしてると大きくなれないよ! 」

 小鳥遊先輩はそういって野菜スムージーをみんなに差し出してきた。

「 喫茶店のメニューにどうかな? 」

 差し出されたスムージーを見ると禍々しい色をしていた。


「小鳥遊先輩、コレ味見は? 」

 そう尋ねると先輩は笑って

「空腹が最大のスパイスだよ♪ 」

 と言って笑ってるけど絶対飲んでないな…。

「おにぃ、グイッと逝っちゃって! 」

 おい…いま、いくって字が違くなかったか?


 どうしよう怖すぎる…。だけどみんなが俺を見つめている。

 そんなに見つめられても困るんだけど…

「それじゃあ飲むよ! 」

 そういって俺はスムージーを口の中に注ぎ込む…。


「どうかな朱音君? 」

 小鳥遊先輩は俺の顔を見つめてくる。

「コレはヤバい…。ちょっとアレンジしますね? 」

 そういって俺はフライパンを取り出してフレンチトーストの液と合わせてフライパンで焼き始める。


「おにぃ、何作ってるの? 」

 そういって美鈴が俺の手元を覗き込んでくる。

「出来てからのお楽しみ♪ ほら、もうすぐ出来るからお皿用意して♪ 」

 そういうと美鈴はお皿を用意してくれた。


「はいおにぃ、ねぇ最初に食べてあげるよ♪ おにぃのならきっと美味しいと思うから」

 そういってお皿に盛り付けた料理を食べ始める。

「ちょっ、美鈴! セロリ入って…」

 さっき見てたと思うんだけどな…。

「うっ…、セ、セロリの味が…。なんで教えてくれないのおにぃのバカ! 」


 美鈴は顔を渋らせながら俺の肩をバシバシ叩いてくる。

 俺の責任なのだろうか?

「とりあえずみんなも食べてみて、さっきのスムージーよりは食べやすくなってると思うから」

 そういってみんなのにも差し出すとスプーンで掬って口に運ぶ。


「美味しい…けどセロリの味が強いかもセロリ入れないほうが美味しいと思う」

 綾先輩はそういって二口目を食べ始める。

「そっか残念」

 そういって小鳥遊先輩はセロリを片付けた。


「とりあえずは1品決まったね♪ あと何か目玉になりそうなのが欲しいね! 各自明日までに最低2品考えてくること! じゃあ解散にしよっか! 」

 俺と美鈴はいいけど料理が壊滅的な縁にはドリンクで何か教えてやろう…。

 とりあえず俺達はこのあとスーパーに寄ることになりそうだ…。

 

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