捜査開始!

「お疲れさま! 凛ちゃん居る? 」

 放課後、俺は凛ちゃんに言われた通り北館の屋上にやって来た。

「先輩! お待たせしました! 」

 そういって凛ちゃんがドアを開けて屋上にやって来る。

「お疲れさま凛ちゃん! 」

 そういって彼女の頭を撫でる。


「先輩に撫でられると何だかホッとします」

 そういって凛ちゃんは嬉しそうな顔で俺の腕に抱きついてくる。

「ちょっと恥ずかしいから凛ちゃん! 」

 そういって腕を離そうとすると

「2人きりだからいいじゃないですか! 」

 そういって抱き寄せてくる。


 女の子独特の甘い香りがした。

「先輩、座りましょ♪ 」

 そういって凛ちゃんは腰を下ろす。

「分かった、でも凛ちゃん寒くない? 」

 そう尋ねると凛ちゃんは隣に腰かけた俺に

腕を組み直して身体をピタッとくっつけてくる。

「くっ、くっつけば大丈夫です! 」

 そういって恥ずかしそうにくっついてくる。


「それじゃあ話してくれる? 」

 そう凛ちゃんに尋ねると凛ちゃんは頷いて話し始めてくれた。

◆◇◆◇

「先輩とお昼ご飯を日があったじゃないですか、私は次の授業が体育だったので更衣室で着替えていたんですけど、そのときに撮影されていたみたいで水色の下着姿が映ってたみたいです」

 そんな…、下着の色まで言わなくていいのに…。

 少し困りながら凛ちゃんの頭を撫でて

「怖かったでしょ? 俺達よろず部が解決するから安心して」

 そういうと凛ちゃんは頷いて

「お願いしますよ先輩♥ 」


「そういえば、その日何か変わったことってあった? 」

 凛ちゃんに尋ねると

「あっ、そういえば私が使おうと思ったところを隣のクラスの女の子が『邪魔だからあっちで着替えて』って言ってきて私の着替えを移動させられちゃったんですよね…。でも関係あるのかな? 」


 関係があるかどうかは分からないが普段使っている場所が使えなかった様だ…。

「他には何かあった? 」

 凛ちゃんは少し考えたあと首を振って他は特に何もなかったと言っていた。

「ありがとう凛ちゃん! それじゃあ今の情報を必ず活かしてみせるよ! 」


 そういって凛ちゃんと別れて俺は手帳に情報を整理する。


『手帳』

 その1、女子更衣室で盗撮事件は起こった。

 その2、盗撮の被害者は3年生~1年生と依頼されれば誰でもやるようだ…。

 その3、凛ちゃんの時は使っていた場所を移動させられて偶然そこにカメラがあった。


「うぅ~ん、これだけだと全然分からない…。もっと情報が必要だな! 」

 とりあえず明日には動画の購入者から話が聞けるから今日はとりあえずコレでいいかな?

 俺は家に帰ることにした。

◆◇◆◇

「朱音、何か成果はあったかい? 」

 家に帰りキッチンで料理をしていると縁が疲れた顔でテーブルに着いた。

「そっちこそ何か手掛かりはあったの? 」

 縁に聞くと彼女は首を振って

「なんにもない、さすがに初日から引っ掛かるとは思ってなかったから想定通りだけど映像をきちんとチェックしなくちゃいけなかったから大変だったよ…」


 そういって縁はテーブルをパタパタ叩き始めて夕飯の催促をしてくる。

「何かよろず部を手伝うことはある? 」

 そういって美鈴が難しい顔をしながらタブレットを持ってリビングにやって来た。

「何だか大変そうだな? 」

 そういうと美鈴は頷いて

「ターゲットが分かれば罠を張ることも出来るんだけど、どうやって犯人がターゲットを決めるのか分からないから後手にまわっちゃうんだよね…」


 そういってタブレットの液晶をタップして俺と縁に渡してきた。

「今のところ彼女達が盗撮魔の被害者…。でもコレは1年生のスマホチェックで見つけた人数だから2年生と3年生も含めるともっと多くなるかもしれない…」

 そういって頭を抱えていた。


 俺と縁は渡されたタブレットを確認する。

「あれっ! 凛君が名前載ってるじゃないか! 朱音! 絶対に犯人捕まえるぞ! 」

 どうやら縁も俺と同じ気持ちらしい…。

「勿論、縁はカメラを頼む! 俺は足で稼ぐよ! 」

 そういって俺はタブレットのデータをスマホに移す。


「おにぃ! それ! 学校のだからコピーは…。しちゃったか…。ダメって言おうとしたんだけど…」

 そういって美鈴は額に手を当てて困った顔をしている。

「ゴメン…。でもこの被害に遭った人達を見ると比率的に1年生が多くないか? 」

 被害に遭った10人の生徒のうち5人が1年生だ…。


「そうなんだよね! だから次のターゲットも1年生なんじゃないかって…」

 そういって美鈴は何人かの女の子をピックアップしていた。

「可能性の1つとして生徒会はこの子達をマークする予定だからおにぃ達は違う人をマークしてみて…」


 ピックアップされた生徒を見ると確かに可愛くて男子に人気がありそうな女の子達だ…。

「とりあえず俺は明日、購入した奴から話を聞くから販売主との連絡の取り方とか確認してみるよ! 上手くいけば盗撮魔の尻尾が掴めるかもしれないからな…」


 そういって俺はキッチンから土鍋と真鯛のカルパッチョをテーブルに並べる。

「まさかの鍋にカルパッチョという不思議な組合せだねおにぃ…」

 少し引きつった笑顔で美鈴が俺を見つめてくる。

「いや、鍋の中はトマトリゾットだから」

 そういって俺達は夕飯を食べ始めた。

◆◇◆◇

「先輩! 今日の夕方に南館の屋上に来てほしいだって! ことなんでゴチになります!」

 そういって田之倉が昼飯をたかりに来た。

「分かった、それじゃあ学食に行くぞ」

 俺は田之倉に飯を奢るために財布の中身をいつもより多めに持ち学食に向かった。


「でも先輩、買った奴に会ってどうするんですか? 簡単に口を割るようには思わないんですけど…」

 田之倉が俺の奢った味噌ラーメンを食べながら不思議そうに尋ねてくる。

「とりあえず会ったら映像を買う方法を教えてもらって囮を使って盗撮魔を誘き出す」

 そういうと田之倉が

「まぁ、そうですよね! 齋藤さんと付き合ってる先輩が他の女の下着姿に興味あるわけないっすもんね! 」


 付き合ってないから! そんなことを言ったら凛ちゃんに迷惑だから!

「田之倉、俺は齋藤さんと付き合ってないからな? よろず部の依頼で犯人を探してるだけだから! 」

 そういうと田之倉は疑いの目で俺を見つめていた。

「それじゃあ先輩、頑張ってください! 」

 そういって田之倉は自分のクラスに戻っていった。

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