もう1つの依頼ともう1つのフラグ

「あっ、待て朱音! 依頼は2件あると伝えたはずだ!もう1つの手紙を開けてみよう!」

 そういってノートの紙で書かれた手紙を見ると

『好きな人が出来たんだけど女心がよく分からない、だからよろず部に教えてもらいたい2ーFの歌舞伎者』


「あっ、これは分かった! あとで本人に聞いておくよ! それじゃあ放課後また打ち合わせな! 」

 そういって俺と縁は部室前で別れ、それぞれの教室に戻る。

◆◇◆◇

「朱音ぇ~、どうして一緒に来てくれなかったんだよぉ~」

 おや? 2ーFの歌舞伎者が現れた。

「なんだよ慶次、何か問題でも起きたのか?」

 慶次に尋ねると、慶次の後ろからリーシャが出てきて

「どうしてヘッポコと私の2人なんだ…。なんで朱音は来なかったんだ? 2人だったから周りからカップルだと誤解されちゃったじゃないか…」

 そういって少し恥ずかしそうにしてる。


「まぁ、そういうことだよ…。かなり大変だったんだからな…」

 そういって慶次はお釣りを俺に渡してきた。

「いやいや、お釣りはリーシャの好きにしていいよって伝えたよね? 」

 リーシャの手を掴んで手のひらにそのお金を返すと

「だから朱音に返してるんだ私の好きにして良いんだろ? 」

 そういってリーシャは返したお釣りを俺に渡してきた。


「分かったよ。ありがとうリーシャ♪ 」

 そういって彼女の頭を撫でると恥ずかしそうに頷いていた。

「うっ、うん…」


「おい、席につけ~! 」

  科学の楯山たてやま先生が教室に入ってくる。

「よ~しっ、5限始めるぞ」

 午後の授業が始まった…。

◆◇◆◇

 縁から見せてもらった1通目の手紙の特徴的な文字は平仮名の[る]なんだよな…。数字の3みたいな[る]なんだよな…。どうやって調べるか? とりあえず…

「朱音君! 朱音君! 」

「はっ、はい!」

 思わず立ち上がると先生が驚いた顔をして

「おぉ~、もう問題解けたのか? それじゃあ黒板に回答を書いてくれ…」


 どうやら俺に話しかけたのは先生では無く真琴だったようだ…。やっちまった…。

「えぇ~っと…」

 出来なくは無い問題だったのでなんとか命拾いした。

 5限も終わり、休憩時間になって机で誰が差出人なのか考えていると横から


「朱音君、何か悩みごとかな? なんだかボーッとしてたけど…。私で良ければ相談にのるよ♪ 」

 真琴は俺を見てニコッと爽やかな笑みを浮かべている。

「じゃあ、平仮名の[る]ってノートに書いてくれる? 」

 そういって真琴にノートを渡すと真琴は首をかしげながらもノートの[る]と書いてくれたけど…。

「違うな…。なぁ真琴、このクラスの女子でこんな感じに[る]を書く人知ってる? 」

 真琴は俺のノートを見たあと

「あっ、その感じの[る]なら多分あの子だと思う! 」


 そういって真琴が指を差した方向には慶次と話している眼鏡の女の子がいた。確か名前は岩清水いわしみずさんだった気がする…。

「そっか、ありがとう真琴」

 そういって縁に連絡を取る。


『手紙の差出人が分かった。女子の方は縁に任せる。名前は岩清水さん。男の方は任せてくれ! 』

 SNSでメッセージを送ると

『分かった、放課後そっちに行くからそれまで引き留めておいてくれ♪ 』

 そう返信がきたので『了解( ゚Д゚)ゞ』と返信しておく。

 

 あとは放課後、岩清水さんを縁に引き渡して俺は慶次から話を聞けばこの依頼はほぼ完了。

「6限って誰だっけ? 」

 独り言を呟くと前の席から

「今日は那奈ちゃんの英語だぞ、宿題はやって来たか? 」

 リーシャの声がかかるけど…。

「宿題? あったっけ…? 」


 土日、忙しくてそんなのやってる暇はなかった…。ということは必然的に…。

「ヤバいリーシャ、範囲を教えてくれ! 那奈ちゃんに殺される! 」

 リーシャにお願いをするとリーシャは笑いながら

「しょうがないな、範囲はこの単元の和訳と単元の終わりにある大学入試の過去問だ!」

 そういってリーシャは俺と向き合うように座ってきた。  

「サンキュー! 早速取りかかる! 」

 そういって教科書に書き込んでいこうとすると目の前にノートが置かれる。


「どうした? どかして良いか?」

 リーシャに声をかけるとリーシャは顔を赤くしながら

「私のノートだ、もし良ければ見せてやっても良いぞ…。ただし条件がある」

 見せてくれるのは、かなりありがたいけど…。

「なんだ条件って? 」


 首をかしげてリーシャを見るとリーシャは顔を真っ赤にして震えながら

「今度から一緒に登校しないか? ほら、その、私1人だとまた今朝みたいに迷子になっちゃうかもしれないから…。ダメか? 」

 確かに今朝みたいな事が毎日だと大変だよな…。

「俺がリーシャの家に迎えに行く感じで良いか? たぶん今日は偶然会えたけど明日会えるか自信無いから俺が迎えに行った方が確実だよな…。家教えてくれよ迎えに行くから…。それとノート借りるな♪ 」


 そういってリーシャからノートを借りて書き写していく。

「良いのか? 学校がある日は毎日だぞ? 」

 いった本人が何で困ってるんだよ?

「あぁ、リーシャのこと心配だし俺で良ければリーシャと一緒に登校させてくれ」


 どうしたんだろう? 隣にいる真琴まで顔を真っ赤にさせてキャーキャー言っているけど…?

「うっ、うんヨロシク…」

 リーシャが顔を真っ赤にさせて手を差し出してくる。

「あぁ、サンキューなリーシャ! これ俺の連絡先な! あとでリーシャの家の住所送っといてくれ! 」


 やべっ、加藤先生が教室入ってきた…。

「みんなぁ~、席についてくださぁーい」

 リーシャが前を向き直るとほぼ同時に

「サンキュー! 助かったリーシャ♪ 」

 なんとか大学入試の過去問の答えは間に合った…。(和訳はなんとかしなくちゃ…)

◆◇◆◇

「それじゃあ、このままHR始めちゃうよ!クラス委員号令! 」

 加藤先生から指示を受けた真琴が号令をかける。

「起立、きをつけ! 礼! 着席」

 俺たちは一通りの動作をする。


 そのあと先生が話をして放課後になった。

「慶次、話があるからちょっと待っててくれ! お~い、岩清水さん! ちょっと話があるんだ少し待っててくれないかな? 」

 そういって岩清水さんを呼び止めると周りにいた女子達が

「何!? 告るの告るの!? 」

 と言って囃し立ててくる。


「いや、そんなんじゃないから! 用があるのはこっち! 」

 教室の扉を開けるとそこには縁がいた。

「こっちは任せてくれ! 朱音はもう1つの依頼を頼むよ♪ 」

「了解、こっちは任せろ! 」

 そういってハイタッチをして岩清水さんを縁に任せる。


「さて、俺は慶次の依頼を聞こうかな」

 そういってノートに書かれた依頼書を慶次に見せると

「お前、よろず部だったのかよ…」

 そういうこと♪ さて、慶次の恋ばなを聞かせてもらおうか…。









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る