お昼ごはんは部室で…。

「もっ、もう限界…」

 長距離走を走り終わった縁は俺に寄り掛かってきた。

「お前、体力無いな…。大丈夫か? 」

 そういってあらかじめ持ってきていた水筒を渡してタオルを顔にかけてやる。


「あっ、ありがとう♪ 中身なに? 」

 そういって水筒を開けて聞いてくるので

「スポドリを少し薄めたやつ、味は薄いから美味しくないぞ! あんまり期待するな」

 そういうと縁は、えぇ~っという顔を見せたあとそれを飲み……

「ありがとう朱音♪ 確かに君の言っていた通り美味しくは無かったね♪ 」


 空になった水筒を返してきた。

「お前さ、体力テストの最後の種目だったから良いけど少しは遠慮というものを…」

「無いな♪ だってこのあいだから一緒に住んでるんだからな。私が遠慮してたら朱音だって嫌だろ? 」


「確かに一緒に住んでいるのに遠慮されるのは何か嫌だな。それで、昼はよろず部に行けば良いんだな? 」

 縁は頷いて

「あぁ、それと上着はどうすればいい? 」

 耳元で聞いてきたので俺も周りの男子に聞こえないように

「結局ウチで洗うのには変わらないけど学校で返してくれ乾いたらお前に渡すから」

 と縁に伝えると彼女は頷いて微笑んだ。

◆◇◆◇

 午前中の授業を終え、縁とあとで合流することにして俺は慶次と一緒に1度教室に戻ることにする。

「朱音~、メシ~! 」

 そういって俺に寄り掛かってくるので

「昼飯ならリーシャにお金渡しといたから一緒に食べてこい! お前とリーシャは会うとすぐ喧嘩するから俺や真琴が大変なんだ、だから仲良くなってこい! 」

 

 そういうと慶次は少し困った顔で

「お前は一緒に来てくれねぇ~のか? 」

 と聞いてくるので俺は頷いて

「俺は橘と予定があるからこのあと無理だ」

 そういって教室に入り財布とスマホそれと弁当箱を持って前の席のリーシャの肩を叩き

「リーシャは嫌かも知れないけど慶次と一緒に飯を食べてやってくれ、リーシャも一緒に食っていいから! それじゃっ、あとは頼んだ! 」

 そういって俺は教室を出てよろず部に向かった。

◆◇◆◇

「「あっ!」」

 俺と縁は同時に部室に着いたのに驚いて同時に声をあげる。

「もしかして運命!? 」

 なにボケをかましてるんだコイツは…

「こんな安っちい運命があってたまるか!」

 律儀にツッコミを入れておく。

  

「それより部室に入れよ」

 そういって部室の扉を開けて縁を中に入れて、俺もそのあとに続き入っていく。

「さて、これが今回の依頼の手紙だ! 」

 縁が目安箱から折り畳まれたメモの様な物を開き、読み始める。


「えぇ~っと、なになに…」

 読み始めた縁は最後になるにつれて顔が赤くなっていく。

「朱音、これを読んでみてくれ…」

 そういって縁が手紙を渡してくる。


 なになに…?

 長ったらしく書いてあったけど要約すると

『好きな人が出来たのでなんとか接近出来るように機会を作って欲しい! 2ーF匿名希望』

「匿名じゃ、どうすんだよ! 」

 

 思わずツッコミをいれると縁も笑っている。

「そうだよな? 内容を見て、この手紙が恋のアシストをして欲しいのは分かったけど名前が無いんだもんな…。朱音? どうする? この筆跡で誰か分かるか? 」

 

 男性の筆跡では無いのは分かる。

「女性のだと思うけど、誰の字かは分からないな…」

 そういって縁に手紙を返すと

「じゃぁ、今日は差出人を探す所から始めようか♪ 」


 そういって席を立ちあがり教室を出ようとする縁に

「俺が午後の授業で調べてみるから、とりあえず昼飯食べようよ…」

 そういってお弁当の包みを開けて弁当箱を出す。


「それもそうだな♪ それじゃあ私もいただこうかな♪ 朝、早くから作ってくれてありがとう朱音」

 そういって縁もお弁当を広げ始める。

「今週は俺が当番だし1人分作るのも3人分作るのも大差ないからね…」

 唐揚げを箸で掴み、話していると

「貰い!♥ 」


 縁に唐揚げを強奪された。

「お前は…、俺のを食べなくても自分の分があるだろ? 」

 そういうと縁はイタズラっ娘の様な微笑みで

「朱音のだから意味があるんだ! むしろ朱音のじゃなきゃ嫌だ! 」

 胸を張って言えることなのか?

 仕方無くきんぴら牛蒡を摘まんで食べる。


「朱音、どうかな私の唇の味は? 」

 縁は何を意味不…! 。

「間接キスになるじゃん! 」

 縁は笑いながら

「だから朱音のじゃないと意味が無いって言ったじゃないか…。それでどうかな私の味は? 」


 どうかなってきんぴらです。それ以外は特に何も感じないけど…、こんなに顔を真っ赤にしてイタズラが成功して喜んでるんだもんな、俺も恥ずかしがって意識する振りした方が良いんだよな…。


「うっ、うん…。何かそういわれると少し甘酸っぱい気がする…。ほら、キスは甘酸っぱいっていうし…」

 恥ずかしそうに俯く! よし!ナイス俺!演技派だね! そしてチラッと縁を見るとプルプル震えて真っ赤になっている。

「ほら、アーン! 縁も食べてみれば分かるって」

 そしてすかさず箸を使ってやり返す!


 俺が使ってる箸で縁の唐揚げを摘まんで縁の口の前に持っていく。

「えっ、いやっ、その、えぇー! 」

 縁はパニクっている。ざまあみろ!

「たっ、食べなきゃダメか? 」

 いや、むしろ食べずに返せ!『お前と間接キス何か出来るか!お前が食べろ』的な感じで…。

 

「わっ、分かった…、アーン」

 そういって俺の箸から顔を真っ赤にして唐揚げを食べた。

 マジか…。唐揚げのためだったらここまでするのか!? 唐揚げ相当好きなんだな…。

「恥ずかしくて全然味が分かんないじゃないかバカ♥ 」


 やっぱり唐揚げを多く食べられたからなのか嬉しそうだな…。

「朱音、やっぱり朱音は私の理想のパートナーだ(恋愛的意味で)」

「俺も縁は最高のパートナー(部活的意味)だと思ってるぞ? 今さらどうした?」

 不思議そうに縁を見つめると縁は顔を真っ赤にして泣きながら

「大好きだ朱音!ずっと一緒にいよう!」

 俺の胸に抱きついてきた。


「おっ、おう…。そうだなずっと一緒にな?(まぁ、高校の間は両親からOK貰ったから大丈夫だろ? 急にどうしたんだ縁のやつ…? )」

 縁は俺の言葉を聞くと嬉しそうに

「言ったからな♪ 言質したからな言い訳できないからな! 朱音は私とず~っと一緒に居るんだからな! 」

 

 何故そんなに『ず~っと』を強調するんだろう?

「あぁ、どっちかがいなくなるまで一緒に居ても良いと思うぞ? それでいいか? 」

「うん、これからもず~っとよろしく♥」

 抱きついてくるとか感情表現がオーバーだな…。勘違いするなよ俺! 縁は部員として好きだって言ってくれてるんだ! 期待を裏切らないためにもしっかり差出人を探さなくちゃ!


「勿論、俺の方こそよろしく! 午後は差出人探しを頑張るね! 」






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