第2章 縁の下の力持ち
何故お前が?
「おはよう♪ 2人とも顔洗ってこい」
今週は俺がご飯担当になったので1番早く起きて朝食を3人分作っている。
「なぁ、今更だけど縁って朝はパン派? ご飯派? 」
顔を洗ってテーブルに座った縁に気になったので聞いてみると
「長い間1人だったから朝は簡単なパンが多かったな? 」
そういって『いただきます』と言ってテーブルに並んでるご飯と鮭を美味しそうに食べている。
「おにぃってさ、本当に人が美味しそうに食べてると嬉しそうだよね♪ 頬が緩んでるよ♪ はい、アーン♥」
横から出てきた箸と言葉に思わず口を開けてしまった…。
「どうかなおにぃ? キスは甘酸っぱい味っていうけど間接キスはどんな味? 」
美鈴の言葉と同時に机の下では向かいに座る縁から蹴りが飛んでくる。そして美鈴に向かって
「朱音はぁ~、もう私にア~ンしてもらってるから美鈴君は2番目だからどうとも感じないって♥ ごめんね美鈴君♪ 」
笑顔だけど目が笑って無いぞ…。
「おにぃ?💢」
美鈴がこっちを見てくるので俺は席を立ち
「俺、今日は慶次達と予定があるから先に行くね♪ それじゃ! 」
そういってシンクで洗い物を済まして部屋に行き制服に着替えて家を出る…。
「よっ! 朱音、今日も1日張り切っていきましょう! 」
後ろから慶次が背中に跳び乗ってくる。
「お前は本当に他人の背中に跳び乗ってくるの好きだよな? 他にやることねぇ~の? 」
そういって慶次を見ると慶次は笑いながら
「すまん、怒るなよ! それより週末から始まる林間学校のこと三ノ宮さんから聞いただろ? お前どうする? 」
『どうする? 』って何がだ? 班分けは決まってるんだろ? 俺、縁とだと思ったけど?
不思議そうにしていると
「何処だ此処は! たしか家を出て学校の方に向かっていたのに…? 」
聞き覚えのある声が横の公園から聞こえてくる。
「すまん慶次、あっちに行くぞ! 」
そういって公園に行くと案の定
「おぉ! 東雲! 東雲じゃないか!やった!やったぞ私! 」
やっぱりリーシャだった…。
「おうっ! おはよ、迷ったのか? 一緒に行くか学校? 」
慶次、もう少しオブラートに包めよ…。
「なんだヘッポコ、お前も居たのか? 私は迷ってるわけじゃない1人でも平気だ! 東雲、またあとでな♪ 」
あぁ、絶対ダメだアレ…。学校と逆方向行ってる…。
俺はリーシャを追いかけて手を掴む。
「リーシャ、俺達と一緒に登校しないか?」
リーシャの手をギュッと握って声をかけるとリーシャは俺を振り返り顔を真っ赤にさせて驚いた顔で見つめてくる。
「そっ、それは私と東雲の2人でってことか? 」
ん? 不思議に思い後ろを振り返ると慶次が居ない…。あの馬鹿…。
「あぁ、慶次は居ないしリーシャが良ければ一緒に行かないか? 」
そう微笑みかけるとリーシャは少し驚いて
「まぁ、東雲なら信用出来るし…任せる」
そういってリーシャは俺の袖を掴みながら一緒に登校をした。
◆◇◆◇
「おはよう♪ あれ?珍しいリーシャちゃんが教室にこんな早く来るなんて…」
真琴を含めクラスのメンバーが首を傾げている。
「おはよう♪ 朝、東雲に会って連れてきてもらったんだ…」
そういって俺の袖から手を離してVサインをしている。
「ってことは2人でラブラブ登校してきたの!! 」
殺す慶次!
「黙れヘッポコ! 」
顔を真っ赤にしたリーシャが慶次の顔面に右ストレートを叩き込んだ! グッジョブだよリーシャ!
周りの女子達は初めからそんなことは思ってもいないのか俺になんぞ目もくれず、リーシャと慶次の漫才の様なじゃれあいを見ている。ねっ、俺ってモテないし興味も持たれないでしょ♪
「は~い、皆さん席に座ってくださぁ~い」
加藤先生が出席簿を持って教室に入ってきた。
「あっ、リーシャちゃんが教室にいる! 」
先生までそんなことを言うのかよ…。
「先生! それは朱音が…痛ッ! 」
うっさい慶次💢! それ以上何か言ったらもっと刺すとボールペンをノックしながら慶次を見つめる。
「うん? どうしたの慶次君? 」
加藤先生が出席簿を見ながら不思議がって声をかけると慶次は
「なっ、何もないです! 」
そういって律儀に敬礼までしていた。
◆◇◆◇
「朱音君ってさ慶次君に容赦ないよね…」
朝のHRが終わると隣の真琴が俺と慶次を見て笑いながら話しかけてきた。
「あぁ、慶次とは5年も一緒だったから、だからコイツの良いところも駄目なところも好きな女子のタイプも知ってる」
そういって慶次を見ると慶次も
「その言葉そのまんまお前に返すけどな♪ 」
そういって笑っていた。
「それより大丈夫なのか慶次は? 」
慶次を心配そうにリーシャが見つめるけど
「あぁワリィ…、さっきのはつい咄嗟に出ちまった痛ッ! なんだよ…」
そういって慶次は申し訳なさそうにしている。
「どういうこと? 」
真琴が俺に聞いてくるので
「要するにボールペンの先は慶次の手の甲に刺す寸前でしまって刺したの、だからあんまり痛くないのにコイツは騒いだの! で、恥ずかしかったから『なっ、何でもないです』って言って恥ずかしそうにしてたんだよ」
そういって隣を見ると慶次は苦笑いをしていた。
「心配して損した…」
リーシャは自分の席に戻って授業の準備を始めた。
「私も準備しよ~」
真琴も戻っていった。
さて、俺も準備を始めるか! そう思いスマホを確認すると
『朱音、朝食ありがとう。美味しかったぞ♥それと今朝、目安箱に依頼があった!しかも2件(^_^)vお昼は部室に集合だ! 頼んだぞ朱音! 愛しの縁より』
愛しかよ!? 思わずツッコミたかったけど画面に叫ぶわけにもいかないので
『りょーかい( ゚Д゚)ゞ』
とだけ文面を打ち込みSNSで返事をしておいた。
「どうした朱音? 彼女か? 」
スマホをしまうと慶次がニヤついた顔で俺を見つめてくるので
「リーシャ、ちょっといいか?」
リーシャを呼ぶ。
「どうしたんだ? 」
振り返えったリーシャの手を掴み、その手の平にお金を渡す。
「はっ?」
「その2000円で昼飯を食べてきてくれ慶次と」
そう伝えると同時に余鈴がなり体操着になるために移動を始める。
今日の午前中は男子は新体力テストなのだ!
◆◇◆◇
「それじゃあペアになったか? 」
体育教師の声がする。
「なぁ…」
「何? 」
「あのさ、何故お前がここにいるの? 」
目の前で男達に混ざって参加することになり俺のペアとなった縁を見る。
「深くは聞くなバカ! 」
男子達は明らかに縁の胸を凝視している。
「お前、上着は? 」
「暑いだろまだ、だから無いぞ? 」
無防備すぎるだろ…。あのケダモノ達はお前の透けブラを期待してる目だぞあれは…。
「はぁ、縁これ着ろ」
そういって着ていた上着を縁に渡して耳元で説明する。
縁は理解したのか上着を着て俺と一緒に男達を睨むと男達は散っていった。
「それじゃあ、始めるぞ! 」
体育教師の声と同時に俺と縁の新体力テストが始まった。
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