赤と白の共演

「いらっしゃいませ~、あら? 今日は彼氏さんと一緒? 縁ちゃん」

 そういって店員さんがこちらにやって来る。

「いや、そういうわけじゃないんだが…(そうなれれば良いなとは思ってる)」

 縁が顔見知りの店員さんと何か話している。


「そうなんだ、隣の女の子は? 」

 店員さんは美鈴の顔を見て不思議そうに首をかしげると縁が美鈴のことを伝える。

「彼女は朱音、彼の義妹だ今日は一緒に彼に服を見立ててもらおうと思って…」

 そういって縁はモジモジしている。


「縁ちゃん、義妹ってことは法律上結婚出来るから油断したらダメよ! (大好きな彼を盗られちゃうかもしれないんだから)」

 あの人達は何をこそこそ話しているのだろう?

(そうですよ! 義妹は奥さんになれるんです! 今まではおにぃの周りに群がる蝿達は駆除してきましたが今回はおにぃから橘先輩についていったので許しますがおにぃを譲る気は無いので覚悟してください! )


 なんか置き去りにされてる気がする…。今のうちにこの店から抜け出して逃げよう!

 俺は音が出ないように回れ右をして店を出ようとすると両肩を縁と美鈴に掴まれた…。

「「朱音(おにぃ)どこに行くの? 今日は買い物に付き合ってくれるんだよな(よね)? 」」

 逃げられなかった…。

◆◇◆◇

「これはどうだろう朱音? 」

 そういって縁がヒラヒラしたゴスロリの服を着て俺の前で1回転してきた。

「いや、似合ってるとは思うんだけどイメージと違う…。こっちとかどうかな? 」

 そういって緋色のワンピースを渡すと

「私に似合うだろうか? 」

 縁はワンピースを持って試着室に戻っていった。

 

「おにぃ、私の服はどうかな? 」

 美鈴は腕と胸元がシースルーの黒い服を着てこちらにやって来た。

「おまっ、その服、透け透けじゃん! ダメ! そんな服は絶対ダメ! 」

 そういうと美鈴は不貞腐れながら

「えぇ~、じゃあどんな服がいいの? セクシーでおにぃを悩殺出来ると思ったんだけどなぁ~」

 そういって店内をキョロキョロしている。


「お前にはこういう清楚な服の方が似合うから着替えてこいよ…」

 そういって白と紺のボーダー服と白のフレアスカートを美鈴に渡す。

「おにぃは、こういうのが好きなんだ? ってことは私の普段着にメロメロってこと♪ もぅ、おにぃのえっちぃ~♥ 」

 正直、今のお前の姿の方がエロいと思うが…、そんなことは口が裂けても言えないので美鈴の背中を押して試着室に押し込む。


「フフッ、彼氏さんは義妹ちゃんと縁ちゃんに猛アピールされて大変ね♪ 」

 俺たちのやり取りを見ていた店員さんが笑いながら水の入った紙コップを持ってきて『どうぞ』といって渡してきた。

「誰のせいでこんな大変な目に遭ってると思うんですか! 店員さんが2人を煽るから俺がこんな目に遭ってるんですよ! 」

 そういって渡された紙コップの水を飲んでため息を吐くと

「お~い朱音! これはどうだ? 」


「ほらほら、縁ちゃんが呼んでるわよ彼氏さん♪ 」

(ニヤニヤしやがって、この店員アマ

 心の中で悪態を吐き、縁の入った試着室に行くとそこには緋色のワンピースを試着した縁がモジモジしながら俺の顔を窺っていた。

「どうかな朱音? 君の好みの服装になったかな? 下着も合わせてみたんだけど、どうかな? 」

 そういってワンピースの裾を持ってパンツ(女性だからパンティーか? )を見せてきた…。

「って、おい! それはダメだろ! ちょっ! やめろ縁! お前女の子なんだろ! ダメだろそんなことしたら! 」

 一瞬思考が止まりかけたけど理性と自制心をフル稼働させ、ワンピースをたくしあげていた縁の腕を降ろさせる。


「おまっ、さすがにダメだろ! 俺だって男の子だよ? 確かに事故とはいえキスしたし縁の下着だって見たけど、誘ってますみたいのはダメだって! 勘違いしちゃうでしょうが! 」

 縁にそう訴えかけると縁は少し困った顔をして

「あっ、うん、ごめん(いや、誘ってるんだけど気づいてないのかな朱音? )」


 何かボソボソ心のこもってない謝罪が聞こえるのだが本当に縁は分かってるのだろうか? 美鈴といい縁といい、どうして急に色気づくのだろう? 今は晩夏だぞ? 春じゃないのに……。

「ハァ…」

 ため息しか出ねぇよ!


「そんなため息が出るほど嫌で興味が無かったのか? 」

 泣きそうな目で見つめてくるなよ…。そういう意味じゃないんだから俺の理性がガリガリ削られてるから困ってんだよ!

「興味があるとか無いとかじゃなくて、さっきも言ったけど俺も男だからその……。いいから分かれバカ…」

 あぁ、本当に帰りたい…。早くこの地獄が終わってほしい…。


「おにぃ! どうかな? 」

 隣の試着室から美鈴の声が聞こえたので縁には服は似合ってると思うけどあんまりふざけるなと釘を刺して隣に行くと

「似合ってるおにぃ♪ 」

 そこには…。

「知らん💢帰る💢 」

◆◇◆◇

 今俺は家に向かいながら道路を歩きながら1人愚痴っている。


「まったく何なんだあの脳みそ花畑のバカ達は💢 」

 美鈴に呼ばれて行ってみたら白い下着姿で服を着ていない美鈴が居た。

「義理とはいえ兄妹だから意識しないようにず~っとしてきたのに何なんだよ💢 」

 それでいて美鈴アイツ

『どうかなおにぃ? このブラ似合ってるかな? 』


「はぁ~!? 服を買いに行ったんだよな? 確かに下着も服ですけど💢 俺に意見求めてどぉ~すんだよ💢 こっちの気も知らねぇ~で💢 」

 あぁ、本当に腹が立つ、確かに美鈴はおっちょこちょいな部分もあったけど何故か縁が俺と親しくなった3日前から、わざとそういうフリをしているのがたまにある。


「縁も縁だ💢 人を小バカにしたようにしやがって💢 」

 だけどそんな2人でも大切な家族と守りたいと思った相手だ…。

「はぁ~っ、腹は立つ、だからって店を飛び出すのはマズかったな…」

 そう思い、来た道を戻ることにする。


「とりあえず謝って、きちんと服を選んで夕飯の食材買って帰るか…」

 俺から謝るのは釈然としないけど、どっちかが折れなきゃな…。

 そう思いながら戻っていると

「ねぇ~、良いじゃん俺たちとデートしよ♪ デート♪ 」

 チャラ男2人に絡まれてる美鈴達がいた。


「嫌です! 興味ありません! 」

「興味無い、帰れ下衆」

 下衆って辛辣なこと言うな縁は…。

「ハァ? 誰が下衆だってこのアマ! 」


「お・ま・え・だ・よ! 」

 顔面クリティカルヒット!

「まったく、お前らよく見たら櫻ヶ丘高校のサッカー部の1年坊主達じゃないか? 俺の義妹と部長になに手だそうとしてんだよ💢」

 

 そういって2人を睨むと2人は土下座をして謝罪し逃げていった。その様子を見ていた2人はポカンとしていた。

「さっきは急に店を飛び出して悪かった、ほら服、買うんだろ? あんまり露出が激しいのは止めてくれ、どう反応していいか困る。あと夕飯の食材買いに行くからな」


 そういって歩き出すと両腕に抱きつかれ

「朱音はツンデレだな」

「おにぃ、大好き♥」

 両頬にキスをされる。


「お前ら、やっぱり人をからかって楽しんでるだろ…。もぅいいや、あぁ、はいはい、俺も大好きですよぉ~」

 まったく何なんだろうコイツら…。



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