告白

「遅いよおにぃ! 」

 そりゃあ自転車で先に行ったお前達は早いだろうよ…。

「朱音お疲れ! 」

 そういって慶次は俺の背中を叩いてきた。


 本当だよ、まったく…。

 ため息を1つ吐いて席に座る。

「それより三ノ宮さん、部活は? 」

 確かに慶次の言う通り部活はどうしたのだろう?

 美鈴を見ると彼女は視線を反らして聞こえないふりをしている。


「美鈴、部活は? 」

 俺からも聞くと美鈴は少し困った顔で

「休んできた♪ 」

 笑顔でなんてことを言ってるんだ…。

 まぁ、それは追々聞くとして

「縁、依頼を片づけよう! そっちはどうだったんだ? 」


 縁に話を振ると

「とりあえず注文をしよう! 込み入った話はそのあとだ! 」

 そういってベルを鳴らして店員を呼んでドリンクバーを4つと縁と美鈴はイチゴパフェを注文した。

「朱音、私はコーヒーがいいな♪ 」

「おにぃ、私はオレンジジュース! 」

「それじゃあ俺は…」

「慶次、お前は俺と一緒に運ぶの手伝え!」


 男2人が飲み物を用意する。

 慶次は『何で俺まで…』とぼやいていたが当然だ!

 俺は縁に、慶次は美鈴にそれぞれの飲み物を渡す。


「ありがとう朱音♪ あっ♪ ちゃんとミルクポーションを2つ持ってきてくれたんだね♪ ここだと牛乳がないからね♪ そのくらいがちょうど良いと思ってたんだ♪ 」

 そういって持ってきたコーヒーにポーションを注ぎマドラーでかき混ぜる。

「縁は確かアメリカンじゃなくてブレンドで良いんだよな? 」


 自分の野菜ジュースを飲みながら縁に聞くと縁はコーヒーを飲みながらウインクをしてくる。

「おにぃ! 私には! 私のオレンジジュースに何か言うことないの? 」

 何に張り合ってるんだ美鈴は…。

「オレンジジュース美味しいよな? 」

 慶次は思いっきりズッコケていた。


「そうだけど、そうじゃないの! 」

 そういって美鈴はテーブルをパタパタ叩いている。

「えっ? 不味いの? ひとくち頂戴! 」

 そういって美鈴のオレンジジュースを飲んでみるけど特に何の変哲の無いオレンジジュースだった…。


「えっ!? バッババババ、バカ!何で私のストローで飲むの!? おにぃ間接キスだよ!? 」

 はて? 家族だし特に気にすることでも無いのでは…? ハッ!? まさかおにぃ汚い!変態! おにぃなんて大嫌い的な…。

 さすがに無神経すぎたのかもしれない…。

 美鈴も高校1年生のお年頃だもんな、いつまでもおにぃ!っていってお兄ちゃん離れ出来ないままじゃ心配だもんな…。


「ごめんな、ついやってしまった…。汚いよな? 中身捨ててコップとストロー換えてくるから貸してくれ」

 そういって美鈴のコップを取ろうとすると

「良いから! 別に大丈夫だから! 」

 美鈴は顔を赤くしてコップを取りストローでオレンジジュースを飲み干す。

「おにぃ、もう一杯持ってきて! 」

 

 仕方がないのでオレンジジュースを入れて美鈴に渡す。

「ありがとうおにぃ! ストローは? 」

 ストローは捨てて新しいのを持ってきたのでそれを渡すと

「おにぃの鈍感! 」

 そういって頬を膨らませてジュースを飲み始めた。


「さて、話は戻すけど慶次君、君は岩清水君のことが好きなんだよね? 」

 縁がそういって慶次のことを見つめる。

「あっ、あぁ…。俺は岩清水のことが大好きだ! 」

 何も好きか嫌いかを聞いたのに『大好きだ』って答える必要があったのか? 普通に好きだって答えればいいのに…。

「それならば慶次君、君は岩清水さんに明日にでも…、否、今すぐにでも告白をしなくちゃマズいことになるぞ! 」


 そういって縁は慶次に自分のスマホをテーブルに置いて画面を慶次に見せる。

「お前、それ本人に許可を得たのか? 」

 画面には岩清水の連絡先が表示されていた。

「朱音は、私がそんな面倒なことをすると思うか? 」

 ですよねぇ~…。


「さぁ慶次君! 今すぐ岩清水君に情熱的な愛の言葉を叫ぶんだ! じゃないと彼女はチャラ男のものに…、っとこれは言っちゃいけないんだった…」

 何か今、縁から聞いてはいけないことを聞いてしまったかも…。

「ちょっ、橘さん今のチャラ男ってなんですか!?」


 どうやら聞こえたのは俺だけじゃなかった様だ…。

「いや、あの、その~…。ここだけの話にしてくれよ? 岩清水君から聞いたんだが岩清水君も慶次君のことが好きなんだが1つ上の学年のチャラ男で有名な先輩から交際を迫られてるみたいなんだ…。それで今日までに慶次君から告白されなかったら慶次君のことは諦めてその先輩と付き合う約束をしていたらしいんだ…。電話口にその先輩も居るらしくて上部だけ取り繕った様な告白だと嘘だと思われかねないんだ! だから本当に岩清水君のことが好きなら情熱的な告白をしなくちゃいけないんだ…。状況は理解出来たかな慶次君? 」


 あっ、これ嘘だ…。だって縁がイタズラっ娘の顔をしてるんだもの…。まだここ何日かしか一緒に居ないけど何か縁の性格が少しは分かった気がする。

「うしっ、分かった! そんな奴に岩清水を渡してたまるか! それじゃあ電話するぜ!」

 うーん、慶次に縁の嘘だと伝えるべきなのだろうか?

「あのさおにぃ、嘘も方便って言葉知ってる?私は言わない方が上手くいくと思うよ! 何かあの人を認めるみたいで悔しいけど…」


 そういって美鈴が俺の耳元で囁くので俺は縁と美鈴を信じて慶次を見守ることにした。

「もっ、もしもし岩清水さんですか? 鷹条だけど…。突然ごめんね。岩清水さんに伝えたいことがあって…」

 慶次がそういうとスマホの向こう側から岩清水さんの声とガヤガヤと周りの声が聞こえる。

『なっ、何かな鷹条君』

 岩清水さん、動揺してるのがバレバレだぞ。慶次は気づいてないみたいだけど…。


「俺は岩清水さんのことが大好きです! 俺と結婚を前提に付き合ってください! 」

 マジか…。結婚を前提にってまだ高2だぞ…、どんだけ本気なんだよ慶次…。

 スマホの向こう側からガヤガヤと声が聞こえる。

『ヒューッ! やったじゃん桃! 結婚前提で付き合ってだってよ! きちんと返事しなくちゃ! 鷹条君が待ってるよ! 』

 誰だよ…。もしかして…。嫌な予感がしたので縁を見ると縁は俺の視線に気づいたのか視線を反らす。


「その声はもしかして海野さんか? 」

 慶次がスマホの声に気づいて声をかける。

 あぁ、どっかで聞いたと思ったら、確かに

縁と一緒に俺をハメた生徒会長の声だった。

「何で楓さんがそこにいるの? 」

 俺がスマホに話しかけると

『私、生徒会長もだけど女子水泳部の部員なの! それでね、実は女子水泳部の全員がこの電話聞いてるんだよね♪ 』


 俺はその言葉と同時に縁を睨み付けると

「実は彼女から追加でもう1つ依頼があって…」

 そういって耳元で追加の依頼内容を教えてくれる。

 追加依頼の内容は

[皆の前で告白してもらい認知してもらうことにより慶次と付き合うのは私だと言う主張をしたい! それと皆に認知してもらうことにより慶次が他の女の子にフラフラさせないために]

 だそうだ…。愛されてるな慶次の奴…。


 慶次を見ると顔を真っ赤にして呆然としたあと

「さすがに恥ずい…。でも今話したことに嘘はない! 俺と結婚を前提に付き合ってください! 」

 おぉ~っ!! イケメンで男前ってスゲェな!

 スマホの向こうから岩清水さんの泣く声が聞こえる。そして…

『もちろんです。不束者ですが末長くよろしくお願いします♪ 』


 どうやら今回の依頼は達成出来た様だ。

 縁と美鈴を見ると彼女達は親指を立ててウインクをしていた。

 だけど俺にはこのあと怖いイベントが待ち構えていた…。

「それじゃあおにぃ、帰ったら家族会議だからね♪ 」

 この嬉しい気持ちに水を差すなよ美鈴…。

 うわぁぁぁぁぁっ、めっちゃ怖ぇぇぇ~((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

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