家族会議(議題はリーシャとの登校について)

「3人ともありがとな! このくらいは俺に払わせてくれ! 」

 そういって慶次がドリンク代を払ってくれた。

「ありがとう慶次、それと大切にしろよ彼女♪ 」

 そういって慶次の脇を肘でツンツンすると

「ありがとう、お前はこのあと修羅場みたいだけど頑張れよ♪ 」

 慶次は俺の背後に居る鬼2人を見ながらエールを送ってくる。


「明日俺が登校出来なかったら、そういうことなんだと理解して救急車を家に呼んでおいてくれ…」

 そういうと慶次は

「霊柩車にならないことを祈っとく…。じゃあな♪ 」

 そういって2人を抑えるストッパーが居なくなってしまった…。


「さてと、おにぃ! 外で話すのもアレだし早く家に帰ろっか!? 」

 美鈴が自転車を降りて近づいてくる。

「そうだぞ朱音♪ 逃げ道なんて作らせないからな♪ 」

 ひゃうっ!? ゆっ、縁まで降りて背後に回ってくる。

「分かってるから家に帰ってきちんと説明するから…」


 そういって俺は2人に連行されて家に帰ることになった。

「ほら、おにぃダッシュ! 」

 美鈴は自転車で、縁は俺の横を歩いて逃げられないように包囲された。

◆◇◆◇

「ただいま、とりあえず部屋に行って着替えと鞄を置かせてくれる? 」

 2人に確認を取ると2人は腕を×にして

「逃げる可能性があるからね、もちろん駄目だよ! 」

 縁、笑いながら言うなよ…。

「おにぃなら可能性あるもんね♪ 」

 美鈴、お前もか…。


「さぁ、早速話し合いを始めようか♪ 」

 そういって縁がリビングのテーブルに座り美鈴も縁の隣に座るので必然的に俺は2人の向かい側の席に着く。


「さてと、おにぃあのメールの相手とはどういう関係なのかな? しっかり説明してもらってもいいかな? 」

 尋問が始まった…。

「だから、さっきも言ったけど一緒のクラスの超がつくほどの方向音痴で迷子になりやすい子なんだよ♪ だから今日のお昼に色々あって明日から朝、一緒に登校しようって話になったんだよ! 」


 そういって2人を見つめると2人は疑いの視線でこちらを見つめてくる。

「何その疑いの目は…。俺、嘘吐いて無いからね!」

 そういって席を立ち上がり逃げようとすると

「話は終わって無いからね朱音♪ 」

 縁が隣に来て鳩尾みぞおちをグーで殴ってくる。


「ぼっ、暴力反対! 」

 そういってゴホゴホと噎せていると

「橘先輩! ナイス! 次は私がやります」

 義妹は鬼だった…。


「朱音、君の意見は分かった…。でも、それは君がしなくちゃいけないことなのかな? それは他の誰かに任せることは出来ないのかな? 」

 うわぁ~、その潤んだ目で見てくるとか反則だろぉ~!でも、リーシャと約束したし…。

「ごめん、1度約束したことだから、それに約束を破るなんてことはしたくない…」


 2人に頭を下げて気持ちを伝えると

「はぁ~っ、おにぃならどうせそう言うと思ったけど…。ダメ! 絶対ダメ! だって女の子と2人きりだよ! 私だっておにぃと一緒に2人きりで登校したことないのに…」

 そういって美鈴は頬を膨らまして怒っている。


「美鈴君は本当に独占欲が凄いな。朱音、どうして彼女とそんなに登校したいんだい?」

 縁が不思議そうに俺に尋ねてくるのでリーシャの方向音痴のスゴさを説明する。

◆◇◆◇

「うぅ~ん、確かにそのリーシャ君がとてつもない方向音痴だと言うことは分かったけど…。だからって女の子と1対1で登校するとか、そんなことは承認できないぞ? 」

 そういって縁は顔をしかめている。

「あのさ、だから人の話を最後まで聞いてくれよ! 何もリーシャと2人きりで行くなんてひとことも言ってないじゃん! 」

 

 そういうと2人は驚いた顔で

「「えっ、だって一緒に登校するって…」」

 言ってねぇょ…。お前たちも一緒にどうだ? って聞こうとしたところでお前達が怒って誤解してこんな状況になってるんだろ…。

「きちんと最後まで話を聞いてくれよ…。俺はあの時、お前達も一緒に…っていってたと思うんだけど」


 そういって彼女達を見つめると顔を真っ赤にして俯いている。

「もしかして俺の話を聞いてなかったのかな? 」

 2人に聞くと2人は頷いたあと

「「仕方ないか…。良いよ、ただし朱音(おにぃ)が言ったように3人でその子を迎いに行って4人で登校するからね! 」」


 なんとかリーシャを迎いに行ってもいいと許しをもらえた。

「それじゃあ今日の夕飯は私が当番だったね」

 話し合いが終わった俺達は各々の仕事を始めようと思ったが…。

「縁、夕飯の準備大丈夫か? 」

 心配になり声をかけると

「大丈夫だ! きっと何とかなる…はず? 」


 うわぁ~っ、めっちゃ心配なんだけど…。

 そんなことを思っているとリビングの外から美鈴が手招きをして俺を呼んでいる。

「何? 」

 首をかしげて美鈴に寄ると

「ちゃんと食べられるものが出てくるか不安だからおにぃが手伝ってあげて」


 そういって美鈴は俺の首の後ろに腕をまわして俺の顔を引き寄せて


チュッ♥


 一体全体なにがどうしたのか分からず目をパチクリさせていると

「おにぃはいつもフラフラするから…。だけどね、おにぃは私のおにぃなんだからね!絶対誰にも譲らないんだから! 」

 そういって美鈴はキスをしようと再度唇を近づけてくる。


「いや、今の言葉とキスがどう繋がるのか意味が分からないから! やめなさいって! 俺と美鈴は義兄妹なんだから! そんなことはしません! 」

 そういって美鈴の頭に軽くチョップをする。

「ヒグッ! もぅ~おにぃのいけずぅ~! 」


 そういって俺を見つめてくる。まったく俺の気持ちも知らないで人をからかいやがって…。

「キャァァァァァッ! 」

 キッチンから『ボンッ! 』と音がしたあと縁の悲鳴が聞こえる。

「あっ、朱音ぇ~! 助けてくれぇ~! 」


 縁の助けを求める声がしたので

「縁の所に行くから、それとあんまり調子に乗るな! 本気にしちゃうだろ? 俺はモテないんだから…。今のはカウントしないから本当に美鈴が好きな人にしなさい! 分かった? 縁、今いくぞ! 」

 美鈴の頭をチョップして俺は縁のもとに向かう。

◆◇◆◇

 おにぃのバカ! 私の本当の気持ちも知らないで! 何が『カウントしないから本当に好きな人としな』よ💢。

 橘先輩のところに向かうおにぃの背中を見ながら私は『バカ、おにぃの鈍感』と呟いて絶対におにぃのことは他の女性ひとに譲らないと 心に決める…。だっておにぃのことは、おにぃになる前からずっと、ず~っと好きだったんだから…。

「だから絶対に諦めないから♪ 」

 思わず大きな声で決意を言葉にしていたら

「何を諦めないんだ美鈴? まぁ頑張れよ!」


 私の決意を聞いていたのか、おにぃは笑顔でそういってリビングの扉を開けて橘先輩のもとに向かう。

「本当におにぃは鈍感なんだから…」

 私もおにぃを追ってリビングに入る。

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