第3章 櫻祭

 文化祭開始!

 決起集会?(いや、地獄のロシアン会)が終わって2週間…。本当に大変だった…。

 俺と縁、それと美鈴とリーシャは接客の他に踊りの練習もして正直かなり疲れた。

「あぁ~っ、かなり疲れた…」

 そういってカバンを机に放り投げベットにダイブする。


「あぁ~っ、しかも明日が本番か…」

 明日から2日間文化祭で俺は中世ヨーロッパの貴族の様な格好で接客をしなくてはいけない…。

「おにぃ、夕飯出来たよ! 」

 部屋の扉の向こう側から美鈴の声が聞こえる。

「分かった、着替えたら行く」


 ベットから起き上がり、服を着替えてリビングに行くと美鈴がドヤ顔で俺を見つめて

「今日の夕飯はオムライスです! 」

 テーブルには綺麗に盛り付けられたオムライスが並んでいた。

「うん、美味しそうじゃん! 」

 そういって一口スプーンで掬って口に運ぶと…。


「辛い! お前コレ、ジョロキア入れただろ! 」

 美鈴に声をかけると美鈴は頷いて

「おにぃのオムライスには愛情もジョロキアもたっぷり込めたからね♥ 」

 ですよねぇ~! メッチャ辛いので俺は冷蔵庫から牛乳を取り出して一気に飲み干す。


「そんなに辛いのか? 私のは辛くないぞ?」

 そういってスプーンに一口分掬って俺に差し出してくるのでそれを食べると確かに辛くない。

「あっ、あああああああああっ!!!」

 美鈴が大声をあげて俺がくわえたスプーンを指差す。


「ん? どうしたの美鈴」

 美鈴を見ると美鈴は鯉みたいに口をパクパクしている。

「何か俺やらかしたのかな? 」

 そういって縁を見ると縁は顔を真っ赤にさせてフリーズしていた。


「かっ、かかかか間接キス!!! おにぃのバカァァァァァァッ!!! 」

 強烈なビンタを頬に喰らった。

「朱音は大胆なんだね♪ 」

 縁は嬉しそうにモジモジしながら俺を見つめていた。

 そして明日は文化祭初日

◆◇◆◇

「皆さん、準備万端ですか? 櫻祭開始します! あっ!そうだ! 生徒会&よろず部で『メイド喫茶』をします! 櫻高の白百合しろゆり楓生徒会長と黒薔薇くろばら橘部長のメイド姿が見れるのは今回の櫻祭だけだぞ男子! 女子は櫻高の生田斗真! 東雲朱音が執事姿でお嬢様を待ってます! 是非おこしください! 」

 おい💢! 雪ちゃん、ノリノリで弄ってくるな…。誰だよ櫻高の生田斗真って! 俺はそんなにイケメンじゃねぇ!


 そう思っていると横から美鈴が顔を覗き込んでくる。

「あんなの関係ないよ♪ だっておにぃはいつだって私のナンバーワンだから♥ 」

 そういって美鈴は目を閉じて唇を向けてくる。

「そういうことは一切しません! 」

 そういって美鈴のおデコをデコピンする。


 そんなやり取りをしていると隣の扉が開いて雪ちゃんが頭を下げて放送室から出てくる。

「お疲れさまと素直に言いたいのだけど、何櫻高の生田斗真って? 話を盛るなよ! うわぁ~っ! もう完全に『ガセ情報じゃん! 』とか顔見られながら言われるじゃん! 憂鬱なんですけど! 」

 そういって雪ちゃんを見ると雪ちゃんは美鈴を指差して『原稿を作ったのは美鈴』と呟く。


「そっかゴメンね雪ちゃん♪ 今日の休憩時間に何か奢るね♪ ……美鈴、おにぃお話があるからこっちに来なさい♪ 」

 美鈴にそういうと美鈴は『おにぃが美鈴に敬語を使った! 怒られる! 』といって逃げていった。

「美鈴、まだ仕事あるの~っ! 」

 雪ちゃんが美鈴を追って何処かに行ってしまった。


「俺、どうしたらいいんだろう? 」

 置いていかれた俺は生徒会室に戻ることにした。


「お帰り♪ 櫻高の生田斗真君♪ 」

 縁がクスクス笑いながら肩を叩いてくる。

「お前は櫻高の黒薔薇だろ? 確かにお前の髪の毛ツヤがあって綺麗だもんな♪ 」 

 そういって縁の髪の毛を触ると顔を真っ赤にさせて恥ずかしそうにして俺を見つめていた。


「2人ともイチャつくのは文化祭が終わってからにして! それよりほら! 橘さんはメイド服、朱音は執事服でしょ♪ 」

 リーシャが俺と縁に衣装を持ってきてくれるけど…。

「リーシャなの? 何でリーシャ着ぐるみなの? 」

 リーシャは蜂蜜の大好きな熊の着ぐるみを着ていた。


「あぁ、コレ? 私が綾先輩に頼んだの『美鈴ちゃんが着ぐるみで踊るのに相方の私があんなスケスケな服で踊るのはどうなの? 』って、相談したら綾先輩が『リーシャちゃんも着ぐるみにしよっか! 』っていってこの着ぐるみを渡してくれたの」

 そういってリーシャは着ぐるみ姿で俺の腕に抱きついてくる。

 着ぐるみの生地が思っていたより薄く、リーシャの柔らかい双丘が当たってる。

「リーシャ、男性には抱きつかない方がいいと思う…、その…当たってるからさ…」


 リーシャはその事に今気づいたのか顔を真っ赤にさせて俺をポカポカと叩いてくる。

「いや、何で俺は叩かれるの? ちゃんと教えたじゃん」

 恥ずかしそうにポカポカ叩いてくるリーシャに尋ねるとリーシャは恥ずかしそうに

「教えてくれたのは嬉しいけど…その…当たったんでしょ? どっ、どうだった? 」


 どうだった? って感想を求めるのおかしくないか?

「えっ、あっ、うん…。その柔らかかった?」

 おかしい! おかしいだろ! しかも何で嬉しそうに笑ってるんだよ! あぅ~っ、凄い羞恥プレイだよ!

「リーシャ、服ありがとう着替えてくる」

 俺はその場から逃げ出した。


「おぉ~! 本当に執事服だ…。着ぐるみといいドレスといいメイド服といい、ここメイド喫茶っていうよりコスプレ喫茶じゃないか? 」

 独り言を呟きながら着替え室から出て皆のところに行くと

「何でリーシャ先輩はクマさんで私はランプの魔神何ですか! 他にも何かあったはずです! 」


 そういって美鈴が綾先輩に詰め寄っている。

「いやぁ~っ、ゴメンね♪ それしかなかったの♪ 」

 綾先輩はそういって制服を…!

「ちょっ! 先輩! 着替え室に入って着替えて! 俺も居るから! 脱ぎ始めようとしないで! 」

 そういって綾先輩が着替えようとするのを何とか阻止する。白い物が見えた気がするけど見なかったことにしよう。


「朱音先輩…。着替えてみたんですけど、どうですか? 」

 メイド服を着た凛ちゃんが恥ずかしそうに俺の前に現れた。

「すごく可愛いよ♪ 」

 そういうと凛ちゃんは顔を真っ赤にして忍の後ろに隠れてしまった。


「先輩、ダメですよ凛ちゃんが恥ずかしがっちゃったじゃないですか~」

 忍は何故か執事服を着ていた。

「お前はお前でなんで執事服を着てるんだ?」

 忍に尋ねると忍は笑って

「だって男性が先輩しか居ないので女子生徒の集客力が弱いじゃないですか、だから僕が男の子のふりをしてお客さんを呼ぶんです」

 そういって張り切っている。


「それじゃあ1日目頑張ろう!! 」

 そういってみんなとハイタッチをして1日目が始まる。

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