ロシアンたこ焼き

「おにぃ! 焼きそばと一緒にたこ焼きもやろうよ! 」

 そういって美鈴が茹で蛸や紅生姜も一緒に入れたため結構な金額になったがなんとか買えた。

 スーパーで買い物を終えた俺達は俺の家に向かった。

◆◇◆◇

 キッチンの三口みつくちコンロで焼きそば、お好み焼き、それとフライドポテトを作っていく。

「おにぃ、こっちは任せて! 」

 そういってリビングでは美鈴がたこ焼きを焼き始めている。

「へぇ~、ホットプレートの鉄板って変えられるんだ! 」

 

 忍が不思議そうに美鈴の手元を覗き込んでいる。

「おにぃ、チョコってどこだっけ? 」

 何に使うんだろう? 不思議に思いながらも美鈴にチョコを渡す。

「ありがとうおにぃ! 」


「ちょっ、美鈴さん! たこ焼きに入れるんですか! 」

 凛ちゃんの慌てる声がする。きっと大丈夫だよね…?

「それじゃあコレも入れてみようよ! 」

 楓さんの楽しそうな声も聞こえてくる。

「じゃあコレはどうだろう? 」

 縁、君にはみんなを止めてほしかった…。


 縁の声と同時に生臭い臭いが部屋に充満する。

「ちょっ! 縁、何を入れたの? 」

 俺が縁に尋ねるとリビングから美鈴が怯えた声で

「そっ、それお父さんが大切にしてた塩辛じゃ…」

 そういっているので俺は慌てて冷蔵庫の中を確認すると1番上の段にあったはずの1瓶3,000円の塩辛が無くなっている!


「全部使ってないよね! 」

 そう尋ねると縁は『あと少ししか無かったぞ? 』と言って空瓶を持ってくる。

「マジかよ! どうすんだよ! 義父さんメッチャ好きなおつまみで3,000円もするんだぞ! 仕方ないUmazonで注文するしかないか…。ちょっ! マジかよ!Umazonだと送料込みで5,000円するじゃん! 」

 予想外の出費が何気に痛い。


「縁、次からは使う前にひとこと声をかけてくれ…」

 そういって俺はスマホからUmazonに塩辛(1瓶5,000円の)を注文した。

「そろそろ料理出来るから運ぶの手伝え~」

 みんなに声をかけて、お皿に出来上がった料理を盛り付けていく。


「やっぱり先輩の焼きそばは、いつ見ても美味しそうです! 」

 忍はうきうきしながら焼きそばを

「お好み焼きって何だか男の料理って感じですよね♪ 」

 凛ちゃんはお好み焼きを

「何も手伝えなくてすみません」

 雪ちゃんはフライドポテトを持ってリビングに運んでくれた。


「それじゃあ、文化祭『メイド喫茶』頑張りましょー! 乾杯! 」

 そういって楓さんが乾杯の音頭を取って決起集会というなの焼きそばパーティーが始まった。

◆◇◆◇

「おにぃ、上手に焼けたよ! 食べてみて!」

 美鈴がたこ焼きを差し出してくる。

「なぁ、本当に大丈夫なんだよな? 」

 俺は差し出されたたこ焼きを爪楊枝で1つ刺して口に運ぶ。

「中身は何だった? 」


 縁が興味津々な様子で尋ねてくる。

「チェダーチーズ」

 そう伝えるとつまらなそうにするので俺はたこ焼きを1つ刺して縁の口の中に放り込む。

「ちょっ! 私は…セーフ! 普通のたこ焼きだ! 」


 どうやら凛ちゃんから話を聞くと10個が普通のたこ焼き、5個が当たり食材、残り15個がハズレ食材らしい…。

 俺と縁がそれぞれ大丈夫なたこ焼きを食べたので残り28個中15個がハズレ食材らしい。

 計算上1人1個は確実にハズレ食材が当たる。


 俺、縁、美鈴、楓さん、雪ちゃん、忍、凛ちゃんの7人によるロシアンたこ焼きが始まった。

◆◇◆◇

 もう1つは何を入れたのか分かる…。だって見るからに赤いんだもの…。それに美鈴の使うジョロキアの粉末が減ってるんだもの…。

「なぁ美鈴、いくら辛いものが好きだからってやりすぎはいけないと思うんだよ。だからあれは除外して普通のを作ろうよ」

 そういって美鈴に意見を求めると

「おにぃ、あーん」

 デスボールが飛来してきた!


「うぅ~ん、お腹いっぱいだなぁ~」

 そういって爪楊枝を受け取り縁の口元に運ぶ。

「ほら♪ あーん」

 縁は口を閉じて涙目で首を横に振る。

「このロシアンたこ焼きの言い出しっぺだろ? 責任を取れって♪ 」

 縁の口を無理矢理こじ開けてジョロキアたこ焼きを放り込むと縁は悶絶して『トイレ』と叫んだあとロシアンたこ焼きが終わるまで帰ってこなかった。


 1人脱落! 残り6人!


 縁が『トイレ』と叫んでリビングを飛び出たあと俺は悟った『あっ、アイツ逃げたな!』と…。案の定縁はまだ帰ってこない。

 たこ焼き残り27個。人残り6人。

 ハズレを引く確率が上がった。

「それじゃあ私はコレ! 」


 美鈴は美味しそうにたこ焼きを食べる、どうやら当たりだったらしい。

 クソッ、ハズレが減らなかったか! そんなことを思いながら2つ目に手をつけると…。

 あっ、マズッた! 中から生臭い臭いがする。

「おにぃ、やっちゃったね♪ 責任はおにぃが自分で取ってね! 」

 美鈴はそういってエチケット袋を渡してくる。


「最悪トイレまで間に合わなかったらリビングから出て吐いてね! 」

 マジかよ…。

 俺は腹を括り、たぶん塩辛の入ったたこ焼きを口に運ぶ。

「………ヴぉぉぉぉぉっ~! 」

 噛めない噛んで飲み込めない! 臭い臭すぎる!


 俺はリビングから飛び出てエチケット袋に吐く!

 口が! 口が臭いしネチョネチョしてる!

「うぇっ…マズッ! 」

 あのバカ(縁)なんでこんなのを入れるんだよ!

 そんなことを思っていると中から被害者(雪ちゃん、美鈴、忍)がリビングからエチケット袋を持って出てくる。


「「「ヴぉぉぉぉぉぇぇぇぇ~っ! 」」」

「大丈夫か? みんなは中身なんだったんだ? 」

 そう尋ねると美鈴は

「私はハイチュウ…」

 雪ちゃんは

「ガムです」

 忍は

「チョコしかもホワイト…」


 あのバカ(縁)は一体何がしたかったんだよ!

「ヴぉぉぉぉぉぇぇぇぇ~っ!」

 治まったと思ったけど3人につられてまた吐いてしまう。

「おにぃ、まだ吐くのぉ"ぉ"ぉ"…」

 そういって美鈴達3人と一緒に吐くことになった…。

◆◇◆◇

「みんな大丈夫? 」

 いち早く復活した美鈴が雪ちゃんと忍の背中を擦りながら俺達3人に確認をしてくる…。

「俺は何とか…」

 雪ちゃんと忍も頷いている。

「じゃあリビングに戻ろっか…」

 

 リビングに戻ると口から泡を吹く凛ちゃんと楓さんが居た。

 楓さんの手元を見ると誰が用意したのか外国(フィンランド)の不味い飴で有名なアレの袋とたこ焼きから顔を出すアレ…。

 凛ちゃんの手元にはイナゴがたこ焼きから顔を出していた…。(確か義父さんの酒のつまみの蝗の佃煮だよな…)


「どうやらみんなアウトだったみたいだね? 私のがまだ1番マシなハズレだったからな」

 そういって縁がリビングに戻ってくる。

 このあとたこ焼きは縁が涙を流しながら食べきりました。

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