生キャラメルを貴方に…。

 痛い格好で縁達を待っていると『美魔女と猛獣』の曲が教室に流れ始めた。

「朱音、踊るぞ」

 そういって縁が俺の手を握ってステップを踏み踊り始める。

「スゴい朱音君と橘さん息ピッタリ! 」

 

 教室から真琴や岩清水さんの驚いた声が聞こえる。

「次は左だぞ」

 小さな声で縁が指示を出してくれる。

「あぁ、なんか色々とありがとう」

 そういって指示通りステップを踏んでいく。


「困ったときはお互い様だ! でも朱音のご両親については、あとで聞きたいかな」

 そういって縁は笑いながら俺の手を取りリードしてくれる。

「分かったよ、あとで全部話すよ」

 終始、縁のリードで踊りきり俺達はバックヤードに戻る。(もちろん俺はみんなが着替え終えたあとに…)

◆◇◆◇

「さてと休憩か…。どうしよっかな? 」

 あのあとは特に何もなく義父さんがインターポールのことなどは触れられず、ただ時間が過ぎていった…。やっぱりメイド服の影響力はスゴいのか男子がたくさん店に来店しててんてこ舞いだった。

「あっ、朱音も休憩? 」

 そういって手を振ってこちらにやって来たのはリーシャだった。


「あっ、そういえばリーシャと休憩時間一緒だったっけ? 」

 そういってリーシャの隣に行くと彼女は頷いて

「そうだよ♪ あっ、じゃあ一緒に少し文化祭を見て廻ってみない? 」

 そういって手を差し出してくるので

「OK! 初めにどこ行く? 」

 そう返事をして差し出された手を握る。


「あっ、朱音となら何処だって良いよ♪ 」

 そう笑って俺を見たと同時にリーシャのお腹が鳴った。

「それじゃあ美味しそうなお店でお昼ご飯食べよっか! そのあと教室に行って慶次達をひやかしに行こう」


 そういってパンフレットを開こうと手を離そうとするとリーシャが手を離してくれない。

「あのさ~リーシャ…」

「私が右側持つから手はこのまま繋いでいたい」

 顔を真っ赤にしながら、そういって俺の手を握ったままだった。


 怒ってるのか? それともお腹の音を聞かれて恥ずかしいからなのか? 顔が赤いことツッコんだほうが良いのかな…?

「パンフレット見るの? それとも見ないの? 」

 リーシャは不思議そうに俺を見つめてくる。

「あぁ、うん! 見るからそっち持って♪ 」

 とりあえず何があるのかパンフレットを見ることにした。


「ん~っ!! 美味しい! 美味しいよ朱音! 朱音も1つ食べる? 」

 そういってリーシャは生キャラメルを1つ摘まんで俺の口元に運んでくる。

「ほら♪ あ~ん♪ 」

 いや、周りにいっぱい人が居るんですけど…。

「もう! 溶けちゃうじゃん!ほら♪ 早く♪ 」


 そういって俺の口に生キャラメルを突っ込んでくる。

「ちょっ……。ん~っ!!たしかに美味しい! 」

 突っ込まれた生キャラメルを食べたけど正直恥ずかしくて味なんて分からなかったよ!

「でしょ! ねぇねぇ、朱音の食べてる芋羊羹ってどんな味? 食べたいな♪ 」


 そういってリーシャは口を開けて見つめてくる。

「食べてみる? 良いよ食べてみて♪ 」

 リーシャの前に芋羊羹を置く。

「私は朱音に食べさせてあげたのに私には自分で食べろっていうの? 朱音の意地悪! 」

 リーシャは、そういって俺のことをジト目で睨み付けてくる。


「分かった、分かったよ…。恥ずかしいけどするから怒るなって…」

 俺は芋羊羹を竹楊枝で一口大に切って彼女の口に運びいれる。

「キスの味は甘酸っぱいっていうけど間接キスだと甘いだけだったね♪ 」

 おまっ…、意識しないようにしてたのにこの竹楊枝使いづらくなったじゃねぇーかっ! どうやって残りを食べよう…。

 結局諦めて間接キスを意識しないように食べました…。(途中から味がしなくなっちゃった…)

◆◇◆◇

「そういえば俺達のクラスって何をやってるんだ? 」

 そうリーシャに尋ねるとリーシャは呆れた顔で『お化け屋敷、パンフレットにも書いてあったじゃん』と教えてくれた。

「それじゃあ行くついでに中に入っていこうよ♪ 」

 そういうとリーシャは少し強ばった顔つきになった。


「あれ? リーシャってお化け屋敷とか苦手? 」

 そう尋ねるとリーシャは笑って『そんなわけないだろ! 』といって俺の手を引いてスタスタと先を歩いていってしまう。


「やっほー! みんなお疲れさま! 」

 そういって買ってきていた一口チョコをクラスの面々に配っていく。

「おっ、サンキュー朱音! 」

 そういって子泣き爺の格好をした慶次がチョコを他のメンバーに渡す。


「お前…。プッ! ……めっちゃ似合ってるぞ!」

 そういってグーサインをする。

「おまっ! 今笑っただろ! 俺だって本当はコンニャク係がよかったのにジャンケンで負けちまったから仕方なくやってるんだぞ!」

 ご愁傷さまです…。


「とりあえず中に入るよ」

 そういって入り口にある受付に入場券を2枚渡してリーシャと一緒に中に入っていく。

「ちょっ、絶対に手を離さないでよ! 」

 リーシャは教室に入る前にそういって手をギュッと握ってきたので俺は頷いてその手を握り返した。


「なんか雰囲気がスゴいね! 」

 教室の中は暗く作りもしっかりしていた。

「ヴァァァァァァァッ、リア充爆死しろぉぉぉぉぉぉっ! 」

 うわぁ~っ、私情をばっちり挟んでるよ…。


 縞模様の半纏を着て下駄を履いて某アニメキャラの真似をしている奴が俺とリーシャを引き離そうと襲いかかってくる(半纏お化けはどさくさに紛れてリーシャの胸を触ろうと手をワキワキさせてるけど…)

「ギャァァァァァァァァァァッ!! あっち行ってぇ~!! 」

 俺に抱きついたまま空いてる方の手で拳を作って半纏お化け目掛けて振り回す。


 案の定、リーシャの振り回した拳は半纏お化けをボコボコにしてしまいました。

「怖い! 怖いよ朱音! 絶対! 絶対に離れないでね! 」

 リーシャはそういうけど俺は脅かしてきたお化けを拳1つで退治するリーシャの方が怖いかな…。

 そんなことは言えないのでこれ以上被害を出さないためにも

「リーシャ、駆け抜けるよ♪ 」


 そういってリーシャを抱きかかえる(要するにお姫様だっこです)

「ちょっ、ちょっと朱音! 恥ずかしい! 恥ずかしいから! 」

 クラスメイト達からの視線が気になるけどそんなことを気にしていたら被害が広がる。


「リーシャ、そこでキスだよ! ほら! チャンスだよ! 」

 訂正、なに言ってるんだ真琴(砂かけババア)は…?

「そうだよ! ここはハグしてから見つめあってキスだよ! 頑張れリーシャ! 」

 岩清水さんも何を言ってるんだ?


「うっ、うるさい! そんなこと言われなくても大丈夫だ! 」

 そういってリーシャが顔を寄せてくる。

「わっ、私も…」

「おっ、やった! ゴール! 」


 教室から被害を最小限に抑えて脱出することに成功した!

「リーシャ、何か言おうとしてた? 」

 リーシャは顔を真っ赤にさせて『おっ、降ろしてほしい』と伝えてきたので彼女を降ろすと教室の中から『死ね』だの『リア充爆ぜろ』と呪いの言葉が聞こえた気がするが聞かなかったことにする。


「それじゃあ、そろそろ時間だから戻るか」

 そういってリーシャと手を繋いでメイド喫茶に戻ることにした。


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