材料が足りません!(発注は正確に…)
俺とリーシャが休憩から帰ると店内が慌ただしかった。
「どうしたの小鳥遊先輩? 」
バックヤードに居る小鳥遊先輩に声をかけると小鳥遊先輩は慌てた顔で
「ヤバイ! ヤバイの朱音君! 」
そういって小鳥遊先輩が俺の肩を掴んでガクガク揺すってくる。
「ちょっ、ちょっと落ち着いてください小鳥遊先輩! 」
そういって小鳥遊先輩を落ち着かせて話を聞くと
「なるほど、思っていた以上に売れて今日と明日の分として用意していた果物と小麦粉それとチョコやハチミツ等がなくなってしまったんですね…(簡単に言うとドリンクメニューしか提供できないと…)」
どうすればいいのか考えるけど答えは1つしかない。
「買ってくるしかないか…小鳥遊先輩が会計をしてるんだよね? 小鳥遊先輩、買い物についてきて! 」
そういって小鳥遊先輩の手を握る。
「えっ、あっ、ちょっと! 」
「俺と小鳥遊先輩で買い出しに行ってくるから、そのあいだ任せたからね! 」
そういって俺と小鳥遊先輩は教室を飛び出す。
「先輩、自転車通学でしたっけ? 」
小鳥遊先輩に尋ねると小鳥遊先輩は頷いて
「そうだよ! 乗っていく? 」
そういって鍵を渡してくれる。
「はい、先輩は後ろに座って落ちないように、しっかり掴まっていてください! 」
駐輪場から小鳥遊先輩の自転車を取り出して小鳥遊先輩を後ろに乗せて校門を出る。
「ちょっ、朱音君! 速いよ! 坂道が! 」
「しっかり掴まっててくださいね! ノンストップです! 」
そういってペダルを踏み込む。
「きゃっ! きゃぁー! 」
そういって小鳥遊先輩は俺の腰に腕を回して抱きついてくる。背中には柔らかい物かフニョリと当たっているけど気にしたら負けだと思う。
「それで朱音君! どこまで買いにいくの?」
後ろにいる小鳥遊先輩が俺に抱きつきながら尋ねてくる。
「土曜日のお昼で果物と小麦粉とかがある程度の量を揃えることが出来るお店…。あそこしかないかな…小鳥遊先輩、俺の胸ポケットからスマホを取り出して芝さんって人に電話してください」
そういって商店街に向かう。
「朱音君、電話をかけたよ! 」
後ろから俺の耳元にスマホをかざしてくれる。
スマホの向こう側から
『はい、こちら芝精肉店です』
「もしもし芝さん? 朱音です! 急で申し訳ないんですが八百屋の
用件を伝えるとスマホの向こう側から芝さんの声が聞こえる。
『いくつ買う? 』
数を尋ねてくる声がする
「分かりました元気メンチ7個でお願いします」
そういうとスマホの向こう側から
『了解! 毎度あり! 』
ポケットマネーから10,500円の出費が確定した…。
◆◇◆◇
「なんだ朱音、また違う女の子か? お盛んだねぇ~! 」
芝さんはニヤニヤしながら俺と小鳥遊先輩を交互に見比べる。
「いや、そんなんじゃないから…。今日、櫻祭で彼女は会計をしてるんだよ♪ だからお金を管理する彼女もついてきてもらう必要があったんだよ」
そういって芝さんから頼んでおいた品物を受け取る。
「まったく、いきなり電話してきて果物と小麦粉に卵だもんな正直かなり驚いたぞ! あっ、あと元気メンチ7個で10,500円なっ!」
芝さんはそういって領収書を持ってきた。
「芝さん、元気メンチだけ別会計にしてもらっていいかな? 」
俺は自分の財布からお金を取り出して芝さんに渡す。
「毎度あり! それにしても文化祭か…明日定休日だから俺が朱音と美鈴ちゃんの勇姿を見に行ってやるよ! 」
芝さん夫婦は子供が居ないせいか俺と美鈴のことを実の子供の様に良くしてもらってる。だから小6から両親が海外に行ってしまってからは保護者みたいな存在だ。
「俺は別にいいですけど絶対美鈴が恥ずかしがりますよ…」
そんなことを話していると店の奥から奥さんの
「朱音の彼女さん? 可愛いわね♪ 」
そういって小鳥遊先輩をマジマジと見つめている。
「いや、さっきも
再度小鳥遊先輩を紹介する。
「あら、そうなの? お似合いだと思ったのに…。残念」
そういって揚げたての元気メンチをビニール袋を小鳥遊先輩に渡す。
「それじゃあ、ありがとうございました! みんなが待ってるんでこれで戻ります! 」
荷物を自転車にくくりつけて戻ろうとすると由美さんが笑いながら
「急いでるんだろ? 小麦粉とか重いのはウチのに車に乗っけて持って行かせるから美鈴ちゃんに連絡しといてくれる? それとお茶みんなで飲みな♪ 」
そういってペットボトルのお茶を7本渡してくれた。
「ありがとうございます! 芝さんもよろしくお願いします! 」
俺と小鳥遊先輩お辞儀をして自転車に乗って来た道を戻っていく。
「いい人達だったね♪ 」
小鳥遊先輩は俺の背中に抱きつきながら呟く。
「えぇ、とっても…。俺たちの保護者みたいな人ですから! 」
今度みんなを紹介しに来ようと思った。
◆◇◆◇
『分かった、小麦粉と果物は芝さんが車で持ってきてくれるんだね? うん、分かった! はーい! 』
学校への帰り道、自転車を漕ぎながら美鈴に連絡をしている。
「あぁ、そういうこと! それじゃあそっちは任せたぞ美鈴! 俺と小鳥遊先輩はもう一軒寄ってから帰るから! 」
そういって電話をきる。
「えっ? まだ何処か行くの? 」
不思議そうな声が背中から聞こえる。
「えぇ、だってそれだけ商品が出たってことはそれを載せる紙皿とかも必要でしょ? だから近くのスーパーに買いに行きますよ!」
そういって自転車を走らせてスーパーで紙皿やプラスチックのスプーンとフォークを買い揃える。
「よし! これであとは学校に戻るだけだね! 」
かごに紙皿等が入って後ろには小鳥遊先輩と卵…。
「先輩、さすがにこれで自転車に乗って戻るのはキツいっす…押していきましょう」
俺と小鳥遊先輩は自転車を押しながら帰ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます