肝試し(2日目夜)

 何故こんなことになったのだろう…。

 俺の目の前のは縁、リーシャ、美鈴の3人が鬼の様な形相で立っていて俺の腕のなかでは服が乱れた凛ちゃんがいる。

「待って、3人とも! 誤解だ! 3人は誤解してる! 」

 3人は笑顔で俺に、にじり寄ってくる。

「本当に何もやってないからぁ~」

◆◇◆◇

 時間は遡ること3時間前

「それじゃあ皆、準備はいいかな~! 」

「「「イェ~イ!」」」

「それじゃあ、これからペア決めをするね♪ 皆くじを引いてね! 」

「「「イェ~イ!!! 」


 楓さんの号令とともに男達は盛り上がっている。

「ふぅっ、私の仕事は終わり。ここからは皆の仕事だからよろしくね♪ 」

 ステージから降りてきた楓さんは俺達を見つめてきた。

「もちろんだ、任せてくれ楓! 」

 うわぁ~スゲェ楽しそうだな縁…。


 ニヤニヤしている縁をよそに俺達は最終チェックを始める。

「縁が暴走しないように雪ちゃん、よろしくね♪ 」

 雪女姿の雪ちゃんを見ると彼女は頷いて

「暴走しそうだったら制圧する」

 う~ん、可愛い顔して言うことが怖すぎる

「私はこの格好で良いんだよね? 」



 白い着物と皿の割れる音を再生した美鈴が笑顔で近づいてくるけど…。

「うぉぉっ! 予想以上のクオリティでちょっと怖い…」

 そういって半歩後ろに下がるとスマホが鳴ったので電話に出ると

「私、マリーちゃん今貴方の後ろに居るの」


 そういって何かが腰に抱きついてきた

「¥@●§☆¢*◎」

 声にならない悲鳴をあげると腰に抱きついてきた金髪の女の子はケラケラと笑っている。

「もぅ~っ、私だよ♪ リーシャだよ♪ もしかして朱音って怖がり? 」


 そういって俺の前に立つけど…。

「お前、血が出てるぞ! 手当てするから顔見せろ! 」

 そういって顔を引き寄せると

「ちょっ、違うから! えっと、ボディーペイントだから…、それと顔近いから…。テレるじゃん! バカァ! 」

 そういってリーシャはトテトテと美鈴達のところに向かって行った…。

 

「どぉ~するんですか? 」

 リーシャと入れ替わりで楓さんがこっちにやって来た。

「どうするって美鈴のことですか? 」

 そういって楓さんを見ると彼女はため息を吐いて項垂れている。

「えっ、もしかして違ってました? 」


 そう尋ねると楓さんは首を振って

「いや、それもあるんだけど思い当たるのはそれだけ? 」

 それだけも何も、それ以外何かあったのか俺?  

 特に他は何も思い当たらなかったので頷くと楓さんは深いため息を吐いて

「朱音君あのね、鈍感すぎるのって私は罪だと思うんだ…。だからもう一度よーく自分の周りを確認してね♪ 私が言えるのはここまでだからあとは自分で考えて答えを導きだしてね? 」


 そういって楓さんは、こんにゃくの付いた釣竿を渡してきた。

「これは? 」

 楓さんに聞くと楓さんもイタズラっ娘の様な微笑みで

「首筋にペタッとやっちゃってください♪ 」

 それは嬉しそうに言うことなのか?


 首を傾げていると雪ちゃん達がやって来て

「そろそろ配置に向かいましょう! 」

 楓さんにそう告げると楓さんは全員を呼び寄せて円陣を組ませる。

「皆の働きにかかってるからね! 驚かせるぞぉ~! 」

「「「「オォ~!!! 」」」」

 暗視ゴーグルを配布され俺達の肝試しが始まった…。

◆◇◆◇

「きゃぁ~っ!!! 」

「ぎゃぁ~っ!!! 」

 1つ驚いたのが案外こんにゃくの威力はスゴいようだ…。さっきからこの道を通るペアの首筋にペタッとくっつけると予想以上に驚いて逃げていく。


「けっ、慶次怖いよ…」

「大丈夫だ俺がついてる」

 どうやら次は慶次と岩清水さんのペアらしい…。

 こんにゃくを投下すると


「慶次! 慶次! 何か! 何か私の首もとにぬるっとしたのが! 」

 おっ、岩清水さん怖がってる♪ 次は慶次、お前だぁ!

 慶次に向かって、こんにゃくを投下すると

「そこか! 」

 そういって慶次はこんにゃくにかぶりついた…。


「ちょっお前、なにかじってんだよ!」

 思わず慶次文句を言うと

「その声は朱音か? 」

 ヤベッ! バレた…。

 気配を消してって無駄か…。

「見つけた! 」


 釣竿の糸を辿って来れるもんね…。

「朱音ぇ~、なに楽しそうなことしてんだよ! 俺達にもやらせろよ! 」

 1番恐れてた事態になったぞ…。慶次は加減を知らないからなぁ~。


 そのあとは慶次の独壇場でした…。

 釣糸に何を垂らすかと思えば制服のブレザーだったり、俺が持ってきた水筒に入ってた氷だったり…。えぇ、本当にやりたい放題でした…。


「あぁ~っ、マジで楽しかった! サンキューな朱音! 」

 そういって慶次と岩清水さんは順路に戻って行ったので痛い目に遭わせるためにリーシャに電話で慶次達が行ったことを知らせて電話番号を教える。きっとリーシャなら有効活用してくれるだろう…。


「凛ちゃん、そんなに怖いの? 」

 おっ、凛ちゃん達がやって来たみたいだ

「はい、昔からお化けとか幽霊は怖くて…。すみません、私みたいな不細工が腕にしがみついちゃって…」

 誰と凛ちゃんなんだろう? 少し気になり様子を伺うと…。


「私がしっかり守るから大丈夫だよ♪ 」

 忍だった…。しかも何故か嬉しそうだ、確か忍は男装してたときも可愛いものとアイドルとかは好きだった…。そういえばこのあいだ凛ちゃんがアニメのアイドルに似てるとか言ってたな。だから一緒に居られて嬉しそうにしてるのか…。

 

 俺はバレないように移動しつつ秘密兵器の入っている発泡スチロールの蓋を開けて水をそこに入れる。それを5ヶ所に設置してある発泡スチロールに同じことをする。

「なんだか霧が出てきたね」

 どうやら秘密兵器の効果が出てきたらしい。そうです、秘密兵器は大量のドライアイスです。


 だけどこれの欠点は俺も相手の位置が分からなくなるんです。

 さて、2人は何処にいるのだろう?

 釣竿を片手に霧の中を進んで行く。

「凛ちゃん、離れないでね…って凛ちゃん何処! 」

 凛ちゃんを探す忍の声が聞こえる。

「私はこっちですよ! 」

 忍の後ろから凛ちゃんの声が聞こえたのでまずは凛ちゃんの首もとに向かってこんにゃくを投下する…。


 しかし霧の中でピンポイントで当たるはずもなく…。

「ひゃっ! なっ、何かが顔に…! しかも生臭いですぅ~」

 つぎこそ首もとに…! 氷をくくりつけ凛ちゃん目掛け投下する。


「ひゃっ!ひゃわぁぁぁ~っ!!!」

 あれ? 悲鳴が俺に向かって近づいて…

 気づいたときには遅かった、氷に驚いた凛ちゃんは俺に向かって走ってきて正面衝突してしまい何の因果か凛ちゃんを受け止めたあと持っていた釣竿の釣糸が絡まり服が乱れた凛ちゃんと抱き合った状態になってしまった。

◆◇◆◇

 現在

「だから理由は言ったじゃん! わざとじゃないんだって! だから早く…。くすぐったいから脇腹をつつくなって! 」

 絡まって動けないことをいいことに3人は俺を弄ってくる。

「朱音はもう少し私達に気を配るべきだと思うよ♪ 」


 縁がそういって持ってきたハサミで釣糸を切っていってくれる。

「先輩に抱かれてると何だかフワフワします」

 凛ちゃん…、だからって抱き締めないで…。

「おにぃ、鼻の下伸びてる…」

 えっ、ちょっ、何ハサミ持ってんの! 待てって!

 

「ごめんおにぃ! 手が滑っちゃった♪ 」

 俺は視界良好の前髪パッツンになってしまった…。

 後ろでその様子を忍が笑いながら見ていた…。女だからって容赦しねぇぞ、あとでホテルの人に言ってアイツの食事に嫌いだって言ってたピーマンを多く入れてやる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る