縁の過去
「よし、だいたい決まったし今日はこれぐらいにして週明けにでもまた集まりましょ♪ 」
楓さんがそういって今日のところは解散になる。
「それじゃあ俺はカバン取りに行ってそのまま帰ります。お疲れさまでした」
そういって扉を開いて教室から出ようとすると後ろから襟元を掴まれる。
「グッ!! …何か用か? あといきなり襟元を掴むな一瞬窒息するかと思ったぞ! 」
そういって背中にいる縁に声をかけると
「駐輪場に居るから先に帰るなよ」
そういって俺をスルリとかわして廊下を走って行ってしまった。
「あらあら、お熱いですね♪ 」
楓さんが紅茶を飲みながら俺を見つめていた。
「それなら氷とか入れたらどうですか? そうすれば舌、火傷しないですよ♪ 」
何故だろう周りの女子からの視線が痛く感じる。
楓さんは苦笑いをしながら『そうですね』と言って紅茶を飲んでいた。
◆◇◆◇
俺はよろず部に入りカバンを回収して駐輪場に向かう。
「やべぇ~、思った以上に時間かかっちゃった…。何で荷物持ちをさせられるのかな? 特に今日は俺のクラスは科学の授業なんて無かったのに…」
縁が生徒会室を出てから30分は経っている。さすがにもう帰っているとは思うけどもし居たら本当に悪いことをしてしまった。
「そういえば縁のスマホの番号とかメアド聞いてないんだよな…。連絡用に今度教えてもらうか…」
そんなことを呟きながら駐輪場に走っていくとスマホを何かを確認しながらキョロキョロ辺りを確認する縁が居た。
「ごめん、まだ待っててくれたんだ? 」
そういって縁に駆け寄ると縁は安堵の表情を浮かべたあと般若の形相に変わった…。
「朱音、君はカバンを探すのにこんな時間がかかるのかな? 私はここで30分も待たされたよ…。理由を説明してもらえるかな? 」
どうやらかなりご立腹な様で…。
俺はカバンを見つけてからここに来るまでの出来事を縁に説明した。
「ふぅ~ん、私よりあのハゲのご機嫌をとる方が大事なんだな…」
ハゲって言っちゃダメでしょ♪あの科学教師はああ見えてまだ40代なんだから!
「いや、違うけど断ってよろず部の評判を下げるわけにもいかないじゃん…、そうなったら縁にまで迷惑かけちゃうじゃん」
そういって縁を見ると彼女は顔を赤くして
「馴れない気障なセリフを言うからそんなに赤くなるんだ! まったく…、(けどそんな風に思ってもらえて嬉しい♥)」
顔を真っ赤にしてボソボソ呟いている縁には言われたくない。っと、そんなことより
「縁、そろそろ帰らないと! 日も沈みかけちゃってるし、いくら8月とはいえ晩夏だし天気も曇りで良くないから暗くなる前に帰ろう♪ 」
そう縁に話しかけると縁は寂しそうに
「1人は嫌、もう少し朱音と一緒に居たい」
そういって抱きついてくる。
「ちょっ、いきなりどうしたんだよ? それに1人は嫌ってどういうことだ? 」
そういって抱きついてくる縁を受けとめて腕の中にいる縁を見つめると縁は涙を流しながら
「ってね♪ 男はこういうことされるとグッとくるんでしょ♪ どうかな? グッときた? 」
そんな冗談を言ってくる。
「いくらなんでも怒るぞ、
そういって縁を抱き締めると彼女は腕の中で大粒の涙を流していた。
泣き止んだ縁に話を聞くとなんでも彼女は小学生の頃に親から虐待を受けていて両親が警察に捕まり、親戚に保護者になってもらい1人暮らしをしているが今でも夜、暗いところに居るとまた何か起きるのではないかと不安になって震えが止まらなくなってしまうようだ。
それで人間不信になり孤高のお姫様が出来上がったのだが、あの犬の一件でお節介な俺が彼女の殻を砕いてしまい彼女はまた1人になるのが怖くなってしまった様だ。
「分かった、俺にも責任がある…。だからその責任を取らせてくれないか? 」
泣き止んで俺の腕の中にいる縁に声をかけると
「責任ってどうやって取るんだ? 」
不思議そうに俺を見つめて首を傾げてくる。
「明日から俺の……」
「フェッ!? いや、たしかに理には適っているけど…。君の義妹ちゃんは良いのか?」
俺は親指を立てて
「今日中に説得しておく! それと縁の連絡先を教えてくれないか? 」
そういってスマホを差し出すと
「分かった、私のためにありがとう❤ 」
そういって縁は俺のスマホに連絡先を入力したあと頬にキスをしてきた。
「あれ? 縁って俺のこと嫌いじゃ無かったか? 」
「うっさい! バカァ!」
キスされた頬にグーパンチがめり込んだ…。
◆◇◆◇
「ただいま…」
音が出ないように鍵を回し音を立てずに玄関を開けたはずなのに…。
「おかえりおにぃ💢 橘先輩とのことしっかり話してもらえるかな💢? 」
目の前が真っ黒になった…。
◆◇◆◇
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい! 」
俺は全ての事情と出来事を話して床に土下座をして、ひたすら謝罪をした。
「まぁ、事情は分かったけど何か納得出来ない! 何でおにぃの初めてが私じゃないの? おにぃもおにぃだよ! 何で避けられないの反射神経良いはずだよね? もしかしてわざとキスをしようとして…」
違う、違うから! だからゴミを見るような目で俺を見るな!
「そんなこと計算して出来るほど器用じゃないから! 」
そういって手を胸の前で振って違うと訴える。
「うん、知ってる♪ おにぃにはそんな度胸無いもんね? ごめんおにぃ、私もおにぃが橘先輩に取られちゃうんじゃないかって少し嫉妬してた…。それでおにぃにも橘先輩にも八つ当たりしちゃった…。ごめんなさい」
そういって頭を下げてくるのでその頭を撫でて両頬を触り顔をあげさせると美鈴は顔を真っ赤にさせて目が泳いでいる。
「別に気にしてない大丈夫だから♪ 縁にも悪いと思ったなら今度謝ればいい。それより美鈴にお願いがあるんだけどいいかな? 」
美鈴に顔を近づけて尋ねると
「うっ、うん…何かなおにぃ? 」
美鈴は何故か緊張している…。何故だろう?
「明日からちょっと訳ありなんだけど、友人(縁)がこの家に越してきて一緒に生活したいんだけどいいかな?
そう言うと美鈴はため息を1つ吐いて
「正直、嫌です。でもおにぃの大切な友人(男性)なんですよね? 分かりました。でも私を襲ってきたら殺しますからね♪ 」
何で縁が美鈴を襲うんだ? あぁ~、レズってこと? たぶん大丈夫だろ?
「そこらへんは大丈夫だと思うぞ! ありがとう美鈴♪ 」
そういって美鈴を抱き締めると美鈴は顔を真っ赤にさせて『へにゃ~』と言ってポワポワしてた。
「それじゃあ連絡してくる」
俺は自分の部屋に戻りつつ縁に電話をかける。
「もしもし」
「説得出来た♪ しっかり荷造りしておけよ♪ 明日迎えに行くからな! 」
「うん、ありがとう朱音♥ 」
今度から1人じゃないからな縁…。
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