入部希望者(なんでこうなるの!?)

 加藤先生を保健室に連れて行ったあと生徒会室に戻ると

「おにぃ! 決まったよ! 」

 そういって美鈴が俺の腕の中に飛び込んでくる。

「何に決まったんだ? 」

 そう聞くと美鈴より早く縁が

「トレッキングになった。そのときは部屋ごとの行動でパートナーとの親睦を深めようという狙いだ♪ いいな…」


 いいなも何も…、異論は認めないって雰囲気じゃないか…。

「あぁ、良いんじゃないか? 他に異論が無ければ」

 そういって周りを見渡すと周りも頷いていて異論は無いようだ。


「じゃあ、林間学校のレクリエーション決定! 」

 そういって楓さんは手のひらをポンッと合わせて紅茶の用意を始めた…。

 レクリエーションも決まったし、あと決めることはないよな?

「じゃあ、俺と縁はよろず部の部室に戻るか? 」


 そういって立ち上がると楓さんが紅茶のカップを持ってきて

「朱音さんと縁さんも一緒にどうですか?」

 と聞いてくるので縁を見ると縁は頷いて

「私達もいただこうか! 」

 そう言うので俺も席に戻って紅茶をもらうことにした。


「今日は美味しいキャンディの茶葉が手に入ったんです♪ 」

 そういって嬉しそうに紅茶のカップを渡してきた。

「うん、いい香りだね♪ 後味もスッキリしてて美味しいな♪ 」

 そういって縁はコクコクと喉を潤していく。

「朱音、何をじっと見てるんだい? 」


 顔を赤くして隣に座る俺を見つめてくる。

「いや、可愛いなって…」

 聞こえるか聞こえないかのギリギリの声の大きさで呟くとその声が聞こえたのか縁は顔を真っ赤にして

「そっか…。ありがとう」

 縁も小さな声で呟いた。


「ねぇおにぃ、おにぃも生徒会に入ってよ」

 そういって俺の向かい側に座る美鈴が微笑みかけてきた。

「ダメだ! 朱音はよろず部の部員だ! たとえ生徒会でも朱音を譲るつもりは無いからな! 」

 縁が美鈴の言葉を聞いて俺を離すまいと腕を抱き寄せてくる。


「もぅ~、おにぃにそんなにくっつくな!」

 そういって美鈴が頬を膨らまして不貞腐れて足をバタつかせている。

 そんな2人を尻目に俺は楓さんに部屋割りについて話を聞くことにした。


「楓さん、部屋割りなんだけど俺は誰と一緒の部屋なのかな? 」

 そう尋ねると楓さんは笑いながら

「う~ん、私からは言えないかな…。当日のお楽しみってことじゃダメかな? 」

 そういってウインクをしてきたので俺はため息を吐いて2人を宥めることにした。

◆◇◆◇

「それじゃあ私達は紅茶も戴いたことだし帰るとしようか♪ 」

 そういって縁が俺の手を握り俺を見つめてくる。

「了解、それじゃあ行きますか? 」

 そういって席を立ち上がり生徒会室をあとにする。


「朱音、1度部室に戻って依頼が無いか確かめよう♪ 」

 俺の腕を抱いて、はしゃぎながら笑いかけてくる。

「そうだな…、とりあえず部室に戻って目安箱を見て依頼を確認して無かったら美鈴と正門で合流して夕飯の食材を買って帰りますか! 」

 そんなことを話しているうちによろず部の扉の前に着いた。


「あれ? 朱音、部室の明かりって消してなかったっけ? 」

 縁が不思議そうに首をかしげている。

 俺の記憶が正しければ、確か俺が最後に消したはずだ…。

「いや、俺が消したと想うけど…」

 そういうと縁も頷いて


「そうだよな…? 私も朱音が消したと思っていたんだが…? 」

 俺と縁は互いの顔を見つめ合って首を傾げる。

「とりあえず部室に入ってみるか…」

 そういって部室の扉を開けると…。


「おっ、おかえり朱音♪ 」

 そこには何故か俺を見て手を振るリーシャが居た。

「うん、ただいま……? ねぇ、普通にただいまって応えちゃったけど、なんでリーシャがここに居るの? 」

 俺と縁はポカンとリーシャを見つめているとリーシャは顔を赤くしながら

「朱音に会いに来た」


 そういってリーシャが抱きついてきた。

「ちょっ、ちょっと! 私の朱音になにするんだ! 朱音も朱音だ! なんで引き剥がそうとしないんだ私の事が好きなんだろ!? 」

 そういって縁が俺の腕を胸元に引き寄せる。

 「ちょっ、2人とも落ち着いて!? 確かに縁は大切な人だけどリーシャは何か用事があって来たんだから話を聞かなくちゃ…、なっ? 」

 

 縁を宥めてリーシャの方を見るとリーシャは恥ずかしそうに

「だから朱音に会いに来たんだよ…。スマホを見てないの? 」

 リーシャに言われたのでスマホを確認するとそこには


『朱音、道が分からない…。学園内で迷った』

 その次のメールには

『よろず部の部室発見! そこで待ってるから朱音、一緒に帰ろう♪ 待ってるからね! 』

 俺のスマホを覗いていた縁と視線が合った。


「学園内で迷子って…。分かったよ朱音、彼女と一緒に3人で帰ろう」

 そういって縁がため息を吐いて承諾するとリーシャが何か言いたげにこちらを見つめてくる。

「どうしたのリーシャ? 」

 リーシャに声をかけると


「2人にお願いがあるんだ…。私をよろず部に入部させてください」

 そういって入部届けを縁に差し出した。

「ちょっ、いきなり入部だなんて一体どうしたんだい? 」

 縁はそういってリーシャの顔を見るとリーシャは顔を赤くさせて俺を見てきたので微笑みかけると耳まで真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。


 俺は何か怒らせることをしてしまったのだろうか…。

「やっぱりそういう理由か…。だけど君にも美鈴君にも譲るつもりは無いからな! 特に君はクラスも一緒なんだ手を抜かないからな! 」

 縁がリーシャにそう告げるとリーシャも縁に

「私だって譲るつもりは無いです! 絶対に射止めてみせます!泣いたってしりませんから! 」


 おぉ~っ、何だかバトルが勃発してるよ…。触らぬ神にはなんとやらだね♪ とりあえず中立の立ち位置で傍観してよう…。

「そんなに言うんだったら正々堂々勝負しようじゃないか! リーシャ君」

「もちろん、受けて立ちます橘さん」

 どうやら話は済んだ様だ。


「それじゃあ、とりあえず目安箱の中身は……。空なので帰りましょうか」

 そういって3人で校門に向かうと

「おにぃ~♪ お待たせ! って何か1人増えてる! 」

 美鈴がこっちに駆け寄ってくる。

「何かって…。言い方が悪いぞ美鈴」

 そういって美鈴の頭をコツンと叩くと


「ゴメン…。おにぃ、私も一緒に帰る♪ 」

 そういって抱きついてくるけど…。何かいつもと違う…?

 違和感に気づき首を傾げると美鈴はニンマリ笑って耳元で囁くように

「ゴメンおにぃ…。実はブラが濡れちゃって気持ち悪いから脱いじゃって今、実はノーブラなのだから、その…先っぽは敏感だからそんなに擦らないでね♥」


 そういって美鈴はさらに力を込めて腕に抱きついてきた。

 もう嫌だこの状況! 何で義妹はノーブラで他の2人はその様子を見て悔しがってるの? (しかも視線に殺気が…。もしかして2人とも実は美鈴の事が…。いや、さすがにそれは無いか…)

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