殴られ蹴られ、それでも地球は回ってる

 商店街では揉みくちゃにされて

『同棲祝いだ! 』なんて言われて、ありとあらゆる物を持たされて帰路についた。

 残念ながら誤解は解けなかったので今日は早めに寝ることにする。(美鈴から逃げ切れるかな? )

◆◇◆◇

 家に戻ると時刻は午後6時を差していた。

「それじゃあ俺は夕ごはん作るから縁は風呂入ってきなよ♪ 」

 そういってキッチンに向かい調理を始める。


 縁が風呂にいってからしばらくすると

「えぇ~っと、その…石鹸とか持ってくるの忘れちゃったんだけど、どれを使えばいいかな? 」

 縁の声が聞こえたので声のした方向を見るとそこにはバスタオル1枚の姿で縁が立っていた。


「おっ、おおおおお前はなんて格好でこっちに来てるんだよ! ボディーソープとシャンプーは今日はとりあえず俺のを使っとけ!」

 そういうと縁は頷いて

「分かった、ありがとう♪ 」

 そういって風呂に戻っていった。

 

 家にいる異性は義妹だけだったから気にしていなかったけど、こういうことも今後起こりうる事なのだと思った。

「さて、今日の夕飯は『キャベツ入りメンチカツとキャベツの千切りそれと野菜のコンソメスープにポテトサラダとご飯』うん、我ながら美味しそうに作れた! 」

 そういって食器に盛りつけてテーブルに並べていく。


「朱音、お風呂から出たぞ♪ 」

 そういって縁がリビングに入ってきた音がしたのでキッチンから冷えた麦茶を持っていこうと振り返ると、そこには黒の下着姿の縁がいた…。

「ばっ! お前服を着ろ! 服を! 」

 そういって目を隠すように手で覆うと縁も気づいたのか

「ヒャァッ! ごっ、ごめん! 自宅だとこの時期はまだ暑いから下着で居ることが多いのだけど…、そうだね朱音も居るんだもんね気をつけなくちゃ? 」


「何で最後疑問系なんだよ! 気をつけてくれよ! そうでなくても縁はスタイル良いんだから! 服着たら教えてくれ! それまでここで目を瞑って待ってるから! 」

 そういって俺は、しゃがんで縁から合図があるのを待っていると


「ねっ、ねぇ朱音、私の下着姿はどうだった? 」

 そう俺に聞きながら衣擦れの音がする。

「そんなことを聞いてどうするんだよ! 」

 縁に聞くと縁はうわずった声で

「どっ、どうもしないけど(好きな人の好みとか色々知りたいじゃないか…)もう大丈夫だぞ」

 OKが出たので顔をあげてカウンターの向こう側を見ると…。


「OUT! その格好は余計ダメだから! 何でブカブカの白Tなの? 余計怪しまれるでしょ! そんな格好で美鈴に…」

「ただいま♪ おにぃ、どこ?💢」

 マジかよ! まだ19時だぞ!? 1時間も早いじゃねぇか!


「芝さんに聞いたよ💢 何? 友達って橘先輩だったの? へぇ~っ、私が居るのに女を連れ込むんだ…? 何処に居るのおにぃ💢部屋かな? 今行くからねおにぃ♪💢」

 ヤバい……。美鈴が笑いながら怒ってる。あの状態の美鈴は何をしでかすか分からない…。

「縁、お前ズボンあるか? 」

 縁にスウェットのズボンがあるか聞くと

「持ってない、普段家に居るときはこの格好だから…」


 その格好で今2人で居るところをバレたら確実に誤解される…。

「今俺が美鈴の注意を引くから縁は俺の部屋に行ってジャージのズボン穿いて来い! いいな、絶対にその格好で美鈴にバレるなよ!」


 そういって俺はテーブルに座り

「美鈴、夕飯出来てるからリビングに来てください。それときちんと説明するから怒らないでくれないか? 」

 そういうと2階から

「うん、おにぃ💢今から逝くけど覚悟はいい?💢」

 行くが逝くにしか聞こえない…。ヤバい逝くのかな?

 縁はキッチンから廊下に出れる様にスタンバイしている。


「おにぃ、どういう事なのかな? 」

 そういってリビングに入ってきた美鈴と同時に縁はエスケープした。

「あぁ、これには海より深~い理由があって…」

 とりあえず縁がズボンを着る時間を稼がないと…。

 

 ガコン!!!


 おぃぃぃぃぃ!!! 何をやってんだよ!

何で大きな音を立ててるんだよ!

「何だろう今の音…。 橘先輩かな?💢 」

 美鈴が部屋から出ようとするのでそれを必死に引き留めようとするがスルーされ真上の俺の部屋に向かって行く。

「ちょっ、美鈴落ち着いて、きっと何か物が落ちただけだよ! 縁は俺の隣の部屋だから…。だから俺の部屋はいいから! ねっ?」


 ダメだ、聞く耳を持ってくれない…。

「居るんだよね? 開けるよ橘先輩💢 」

 そういって美鈴が俺の部屋の扉を開けて中を確認すると…。

 おぃぃぃぃぃ! 隠れる場所がベットってお前はバカか! 異様に膨らんでてモロバレだよ! どうやって誤魔化すんだよ!


「おにぃ💢 ベットが膨らんでるんだけど💢 何で? 」

 やっぱ気づかれたよ! どうする…。

「あれは抱き枕だよ! うん、抱き枕…。いやぁ~、ここ最近寝つきが悪くてJUNGLE《ジャングル》で注文してたのが届いたんだよ♪ 」


 そういってベットに横になり布団の上から縁を抱きしめる。

(ヒャッ! ちょっ、ちょっと朱音! どこを触って…ヒャワァッ!)

 縁が驚いてるけど、こっちはそれどころじゃない…。


「おにぃ💢 そこ退いて! 」

 美鈴の蹴りで俺はベットから蹴り落とされた。

「橘先輩💢! 」

 怒りの声と同時に布団を剥ぎ取ると…。


 そこには黒の下着姿の縁が居た…。

 白Tは!? 俺は目を見開いて縁に合図を送ると縁はそれに気づいて

「朱音、義妹が帰ってきたからって気にせず続きをしようじゃないか…。その…、ここまで剥いておいて最後までヤラないとか生殺しは嫌だぞ…」

 おい…、おぃぃぃぃぃ!! なに顔を赤らめてそんなこと言ってんだよ! 確実に誤解…。


「おにぃ、弁明は?💢 」

 拳を振り上げて聞いてくるけど弁明の余地はあるのかな?

「朱音、早く私の初めてを貰ってくれ♥」

「殺す…、殺す! おにぃのバカ! 」

 右頬、左頬、アッパーのコンボが炸裂した。


(すまん朱音、君に包まれてる気分になって…。バレちゃったから咄嗟の嘘を吐いたら修羅場になっちゃった)

 申し訳なさそうに縁が何か呟いて俺を見つめてくるけど悪いと思うなら助けてくれ…。

 気を失うふりをしてこの場をやり過ごそうと思ったけど…。

「ちゃんと説明しておにぃ、逃がさないよ♪💢」

 そういって美鈴が足を踏んできた。


「分かった、説明するから落ち着いてくれ…」

 そういって身体を起こして俺は縁とのことを説明していく。

◆◇◆◇

「と言うことで義父さんからは許可を得てるダメか? 」

 説明をして義父さんからも許可を得たことを話して美鈴を見つめる。

「義父さんには橘先輩が女の子ってことは伝えたの💢? それでOKが出たの? 」

 俺がその言葉に頷くと

「分かった、けどそれならルールを決めるからね💢 」


 そういって美鈴は俺の足を蹴ってルールを話し始めた…。



 

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