手作りお弁当
「田之倉、齋藤さん居る? 」
昨日と同じく田之倉に凛ちゃんを呼んでもらう。
「あっ、先輩! お待たせしまじっ…。ヒタヒ…」
どうやら舌を噛んでしまったらしい…。
「凛ちゃん大丈夫? 」
凛ちゃんに声を掛けると彼女は頷いて
「ひゃいじょうぶです! それより先輩、場所移動しませんか? 」
そういって俺の手を引いてくる。
「何処に行くの? 」
凛ちゃんに聞くと彼女は黙ったまま北館と南館の連絡通路を渡っていく。
「北館に何か用事? 」
反応が無い…。
北館に着くと階段を上っていって屋上に着いた。
「先輩! いっ、一緒にお昼ご飯食べましょ! 先輩の分も作ってきたので! 」
そういって紙袋からお弁当箱を2つ取り出した。
「えっ、良いの? 」
そう尋ねると凛ちゃんは頷いてお弁当箱を1つ渡してくる。
「たっ、食べてみてくだしゃい! 」
緊張してるのかな? スゴいカミカミだな…。
「ありがとう♪ それじゃあ頂きます」
そういってお弁当箱を開けてきんぴらごぼうを箸で掴み、口に運ぶ。
「先輩、どうですか? 」
そういって俺の顔を覗き込んでくる。
「スゴく美味しい! えっ、何でこんなに美味しいの! コレ凛ちゃんが料理したの? 」
凛ちゃんに聞くと凛ちゃんは笑って『そうです私が作ったんです♪ お口に合いましたか? 』と聞いてくる。
「口に合うも何もこんなに美味しいのは初めて食べたかも! 何か特別な物使った? 」
凛ちゃんに尋ねると彼女は笑って『秘密です♪ 』と言って嬉しそうにしていた。
『だって隠し味は愛情です♥ なんて言えるわけないじゃないですか! だって先輩の周りには魅力的な人達がいっぱい居るし…』
なんだかブツブツ言ってるけど何かマズいこと言っちゃったのかな?
凛ちゃんがポーッとしているので彼女の口に玉子焼きを入れる。
「フミュッ! 」
凛ちゃんは顔を真っ赤にして俺を見てくる。
「ごめん、ポーッとしてたから…。早く食べなきゃ時間無いよ? 」
そういうと凛ちゃんは口をもぐもぐしたあと『せっ、先輩! 急にこういうことは止めてください! その…、心の準備が…』と言って真っ赤な顔で俯いてしまう。
「せっ、先輩! どうぞ! 」
そういって凛ちゃんが自分の箸で肉団子を掴んで口元に運んでくる。
「えっと…」
俺が困惑していると凛ちゃんは恥ずかしそうに
「先輩だって私に『あ~ん』ってしてきたじゃないですか! 私だってやる権利あると思います! 」
そうかっ! さっきのって考え方によっては『あ~ん』に受け取れるのか!
「はい、先輩! 『あ~ん』です! 」
そういって凛ちゃんが迫ってくる。
「拒否権は? 」
「嫌ですか? 」
うぅ~っ、泣きそうな目で見つめてこられたら断れないじゃん!
「ありがとう♪ 」
そういって差し出された肉団子を食べる。
「美味しいですか? で、ででででもこっ、これって間接キスですよね? 」
なっ、何でそんなことを言うの!? 意識しちゃうじゃん!
「意識しちゃいましたか? 私も先輩がポーッとしてたのでしたんですよ! だからおあいこです! 」
そういって凛ちゃんはベロをぺろっと出してウインクをしている。
「凛ちゃん可愛いな♪ 好きになっちゃうかも」
冗談のつもりで言ったら凛ちゃんは顔を真っ赤にさせて
「せっ、先輩! 私、次の授業体育でした! 着替えなきゃなのでこれで失礼します! お弁当箱は今度で良いです! では! 」
そういって凛ちゃんは怒ってしまったのか顔を真っ赤にさせて帰ってしまった…。
「冗談でも好きになっちゃうかもなんて言っちゃマズかったかな…」
そう呟いて凛ちゃんの手作りお弁当を完食する。
「マジで旨いな! 」
◆◇◆◇
「ふぅ~ん、それで私とのお昼をすっぽかして2人屋上でご飯を食べてたんだ…」
そういってリーシャが俺のことを睨んでくる。
「いや、まさかお弁当を作ってきてるなんて思わないし、せっかく作ってくれたのを全く食べないわけにはいかないじゃん! それに凛ちゃんのお弁当美味しかったし…」
そういうとリーシャは頬を膨らまして不貞腐れてしまう。
「朱音、ちょっと良い?」
何故か真琴から呼び出される。
「ん? なに? 」
呼び出されたので真琴についていくと
「あのね朱音、リーシャも朱音のためにお弁当を作ってたんだよ今日…。なのにあの言い方は酷いと思う…。リーシャが可哀想だよ! もう少し朱音は女の子の気持ちを考えた方がいい! ちゃんとフォローしなよ! 」
そういうと真琴は戻っていくので俺も一緒に教室に戻る。
「なんの話をしてたの? 」
リーシャが俺と真琴に尋ねてくる。
「リーシャが俺の分のお弁当を作ってくれてたんだよって真琴に教えてぇぇぇぇっ! 痛い! 痛いから! 」
真琴が俺の足を踏みつけてくる。
「何で正直に言うのかな? 少し考えれば言うべきことじゃないって分かるじゃん! ほら! リーシャ照れちゃってるじゃん!バカ! 」
だからって何度も足を踏みつけなくても…。
「リーシャ、お弁当作ってたんだよね? まだお腹空いてるからもしリーシャさえ良ければ食べたいなリーシャのお弁当…」
そういってリーシャを見つめると彼女は恥ずかしそうに俺にお弁当箱を渡してくれる。
「朱音の口に合うか分からないけど捨てるのは勿体ないからね! 仕方なくだからね! 」
そういってリーシャはお弁当箱を開けて唐揚げを掴んで口元に寄せてくる。
「ほら、食べてみて♪ 」
マジか!…どうしよう女子からは好奇な視線で男子からは殺気のこもった視線を感じる。
「ほら、早くして♥ 」
逃げ場は無いみたい…。
「ありがとう…」
目をつぶってリーシャが口元に運んでくれた唐揚げを食べる…。
教室内からは女子の『キャァ~ッ! 』という声と男子の『リア充爆死しろ』というひがみの声が聞こえた…。
「リーシャ、めっちゃ恥ずかしいんだけど…」
そういうとリーシャも顔を真っ赤にさせて
「私も恥ずかしいんだから我慢してよ! 」
いや、そんなことを言われても…。
顔を真っ赤にさせながら俺はリーシャに『あ~ん』をされながらお弁当を食べきった…。
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