ドキッ!後夜祭!

 2日目のメイド? 喫茶は何事もなく無事に終わった…。

「朱音、このあとは後夜祭があるよ♪ 」

 そういって縁がメイド服を着たまま隣に座る。

「あ~っ、そういえばそんなこと言ってたな…。疲れたからパス! 縁は行きたいならみんなと行ってきなよ♪ あっ! ついでに俺のビンゴカード確認したおいて♪ 」


 後夜祭でビンゴ大会をやるらしく昼飯を買った売店でビンゴカードを1枚渡されていた。

「えぇ~っ、私は朱音と行くつもりだったのに! 」

 不機嫌そうな顔で縁は俺を見つめてくる。

「無理なものは無理! 回復したら後夜祭に参加するよ…。それまで休ませてくれ」

 そういって俺は椅子に座って机に突っ伏す。


「分かったよ! それじゃあもしこのビンゴカードで景品が当たったら私のだからね♪ 」

 そういって縁は後夜祭の最初の会場である体育館に向かっていった。

「あれ? 朱音は行かないの? 」

 リーシャが俺の隣に座り俺を見つめてくる。


「あぁ、疲れたから休んでから行くよ…。リーシャは先に行ってなよ」

 そういってグデ~っとしているがリーシャが動く気配が無い。

「? どうしたの? 」

 リーシャに尋ねるが返答が返ってこない。


「どうしたのリーシャ? 」

 声をかけて隣に居るリーシャを見ると彼女は疲れていたのか『スゥースゥー』と寝息を立てて眠ってしまっている。

「お疲れさまリーシャ。結局2日目はリーシャがホール長みたいに動き回ってたもんな。ご苦労様でした」


 そういってリーシャの頭を撫でると嬉しそうな顔で『大…き…』と言って俺の手を掴んできて寝てしまった。

 なんて言ったのだろう?

◆◇◆◇

「あれ? いつの間にか俺も眠っちゃってたな…」

 俺も疲れていたのか、どうやら俺も寝てしまった様だ。 

「おっ、おはよう…」

 リーシャの声が聞こえる。


「あっ、リーシャ起きたんだ…。後夜祭行かなくていいの? 寝て少しは疲れとれたでしょ? 」

 不思議そうにリーシャに尋ねるとリーシャは恥ずかしそうに俺を見て

「手、握ったまんまだったから離れられなかった」

 リーシャは顔を真っ赤にして俺を見つめてくる。


「そっか、ごめん」

 そういって離そうとするとリーシャの方から手を握ってきた。

「もう少し握ってたい…」

 そういって俺を見つめてくるので俺は頷いて手を握っていた。


 寝てる間にどれくらい時間が経ったのだろう外を見ると生徒たちがキャンプファイヤーを囲んでフォークダンスを踊っている。

「何か外スゴいなリア充がいっぱいだ…」

 手を握ったまま窓から外を見て呟くと隣に居るリーシャが俺の肩を叩いてくる。


「ん? どうしたリーシャ? 」

 リーシャを見て尋ねると彼女は頬を赤くして

「月が綺麗だね♥」

「あっ、うん? 」

 何処に月があるんだ?

「ねぇ私達も踊らない? ここで…」

 そういって俺を見つめてくる。


「ダメかな? やっぱり朱音は橘さんが良いのかな? 」

 泣きそうな目で俺のことを見つめてくる。

「いや、何でそこで縁を引き合いに出すんだよ? 俺は綾さんの演出通りにやってただけだから! 確かに縁は上手かったけど俺自身下手だから誰と踊っても大差ないと思うぞ?」

 そういって俯いているリーシャの顔を覗き込む。


「やっぱり朱音は私の気持ちに気づいてないんだね? ねぇ踊ろ♪ 」

 そういってリーシャは俺の手を引いて、踊るためのスペースに俺を引っ張っていく。

 窓の外から流れてくるマイムマイムの音楽に合わせて俺達は教室の中で踊り始める。


「ねぇ朱音、私ね好きな人が居るの♪ 」

 リーシャが何故か唐突に語り始めた。

「ふぅ~ん、それでどうしたの? 俺で手を貸すことが出来るなら手伝ってやるよキューピッド役」

 そういってリズムに合わせてステップを踏む。


「ううん、大丈夫♪ きちんと私から好きって伝えて意識させてやるから」

 何だか嬉しそうに笑っている。

「それで、どんな人なの? 」

 そういってリーシャに声をかけるとリーシャは呆れた顔で俺を見ながら


「うぅ~ん、ひとことで言うと大好きですって伝えても気づかない程の鈍感で周りには可愛い女の子がたくさん居る人なんだけど優しくていつも周りに気を配れる人なの」

 ふぅ~ん、そんな鈍感野郎が居るんだなぁ

「そっか…、何かその…ドンマイ? まぁキスでもすればさすがにバカでも気づくんじゃないか? 」


 そういうとリーシャは呆れた顔で

「ねぇ朱音、月が綺麗だねってどういう意味か分かる? 」

 何をいきなり言い始めるんだ?

「単純に月が綺麗だって話だよね? 」


 いや、何でブスッとした顔で見てくるの?

「ILOVE YOUってどういう意味か分かる?」

 小学生でも分かるだろ…。

「あなたを愛してます? だよね? ん? 今の話に何の一貫性があるの? 」

 理解が出来ずにリーシャに尋ねると


「ねぇ朱音君、夏目漱石って知ってる? 」

 そりゃぁ知って……へっ? もしかして!?

 俺が驚いたことに気がついたのかリーシャは苦笑しながら

「やっと気づいてくれたのかな? 」


 そういうと同時に柔らかい唇の感触が頬に伝わる。

「本当は唇にしたいんだけど、それは私の気持ちを伝えてからにする。あのね、私は朱音のことが大好きだよ♥ 私のことを物珍しく見てくる様な人達と違って朱音はきちんと私に向き合ってくれて私が道迷ってたりしてもちゃんと手を差し出してくれた。それに朱音は困ってる人が居るといつもその人に寄り添って問題を解決していく。そんな誰にも優しくてきちんと私を見てくれる朱音のことが大好きです」


 リーシャはそういって俺の腕の中に飛び込んできた。

「えっ、うん…」

 この状況どうすればいいんだろう…。

「分かってるよ、朱音が橘さんと美鈴ちゃんに告白されて困ってるってことも…。だから私が朱音に告白して余計に困らせちゃうんじゃないかって少し躊躇ってたんだよ? なのに手伝うって言うから…気持ちが抑えられなかった…」


 そういって顔を真っ赤にさせて俯いてしまう。

 どうしよう…。だけど彼女は泣きそうな顔をしてた…。

「ごめんね、俺って鈍感だからさハッキリ言われないと分からなかった。だけど俺のことを好きって言ってくれて嬉しかった。けど今リーシャの気持ちに返事が出来る程、心が整理出来てない…。だからもし可能なら考えが纏まるまで待っててほしい! さっきリーシャも言った通りなんだけどあの2人に告白されて全然整理出来てなかったから…」


 そういってリーシャを見つめると

「減点! 正直に言うのは良いけど、それって結局は選んでるってことでしょ? そういうことは言っちゃダメ! 」

 まぁ、普通はそう受け取るよな…。

「言い訳するけど遊び相手を選んでるわけじゃないから! その…生涯を添い遂げる相手を選んでるから…。そりゃぁ迷うでしょ?」


 リーシャは驚いた顔で俺を見つめてくる。

「俺の本気が分かってもらえた? 」

 そういうとリーシャは恥ずかしそうに頷いてくれた。

 はぁっ、何で俺の高校生活はこんなにも騒がしくなってしまったんだ?


「あっ!おにぃ! 何でリーシャ先輩を抱き締めてるの! リーシャ先輩もおにぃを独り占めしてズルいですよ! 前々から怪しいと思ってたんですよ! 」

 みんなが戻ってきた教室は一気に騒がしくなった。

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