第51話 まずは前準備から
「それは、多分打ち上げの時だと思うんだけど……それで良いよな?」
この責め苦がいつまで続くのか。
これもまた妄想の糧になると考えているのか。
亮平は麗玖紗の問いかけに尚も答えようとしていた。
この話し合いの当初の目的を見失っていると主張すれば、それが通るような状況ではあるが、亮平にとってもやはり百合空間は重要なファクターになり得るのだ。
だからこそ真摯に答えようとする。
ましてや、紀恵については何を況んや、状態である。
亮平の問いかけに、紀恵はこっくりと頷いた。
「打ち上げ? 何の?」
「学祭だよ。カラオケに行ったんだ」
麗玖紗の続けての質問に、やはり亮平は淡々と答える。
というか、どういう感情で答えれば良いのかは全くの不明なのだが。
「あ~、それで歌が上手かったとか、そういうきっかけなんだ」
と、弥夏が亮平の答えを先回りしようとするが、この時は同時に首を横に振る二人。
「じゃあ、何がきっかけなの?」
当然という流れで比奈子が重ねて尋ねると、二人はこれまた同時に、スンッ、とした表情になって首を横に振った。
「……ったく、盛本も同じ反応かよ」
そんな二人の様子に対して麗玖紗がそう吐き捨てると、弥夏が反応した。
「ノリちゃんには聞いたことあるんだ?」
「ああ、ラーメン食いに行った時にな。西山は言いたくないって。仲のよろしいことで」
「だけど、ここで黙秘権使われると、話が先に……」
反射的に弥夏がそう続けようとしたが、言っている間に自分で気付いたのだろう。
二人のなれ初めを聞き出すことが本来の目的では無いという事に。
では、本来の目的とは――
「……あの、ちょっと思ったんだけど、告白ってそんなに急がなくちゃダメかな?」
そんなタイミングで、本題に回帰できそうな声を上げたのは麻美であった。
麗玖紗の圧が思った以上に心を苛んでいた。
あるいは、おかしな具合ではあったが仲が良いとかしか説明のしようが無い、紀恵と亮平の様子を見てうらやましく思ったのか。
とにかく、告白について前向きに考え始めたらしい。
だが、言葉だけならただ告白を引き延ばしにかかっているように見えることは確かだ。
弥夏と比奈子が恐る恐る、麗玖紗の様子を探ってみる。
ここで改めて、話し合いが最初からやり直しになるかと思われたが――
「それは告白するのは前提として、もっと準備したいってことか?」
麗玖紗は思ったよりも冷静だった。
そして麻美の言葉を前向きに捉えている。
麻美は麗玖紗にそう言われて勇気づけられたのか、さらに自分の考えを説明した。
「そう! いきなり告白するのって大変だし、久隆くんもどうしたら良いのかわからなくなると思うの。でも、西山さんと盛本くんみたいに、最初にきっかけがあって、それで親しくなってから告白なら……」
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