第48話 アンタは可愛い

「……いい加減、俺ばっかり話すのも疲れてきた。遠藤、アンタはどうなんだ? 告白するのかしないのか」


 確かに、麗玖紗はずっとしゃべりっぱなしだ。

 この辺りで麻美に意見を言って貰いたいというのは、実際切実なものなのだろう。


 だが、麻美は当たり前に判断できない。

 やはり無茶振りである事には違わないのだから。


 そんな麻美の様子を見て、麗玖紗は頭を掻きながら、なんとか言葉を継いだ。


「そもそも、アンタ。久隆の写真は?」

「え?」

「別に根拠があるわけじゃ無いが、写真でも見せれば秋瀬と舟城は告白に前向きになるんじゃないかと思ってな」


 そう言われて、麻美はギョッとする。

 それは写真――隠し撮りになるだろう――の所持を問われたからか、友達二人がどう思っているのか気になったせいなのか。


 だが、告白せよ、と迫られるよりは楽だったのだろう。

 ポツポツと話し始めた。


「しゃ、写真は持ってない……わ」

「ああ、それは感心だ。その辺りの倫理観も暴走してるのかと思ってたよ」


 即座に麗玖紗が応じる。

 実際は持っているだろうと考えながら。


 麻美が写真所持を隠したのはリテラシーを鑑みて、と言うことでは無く、弥夏と比奈子、もしかしたら梢の事が頭にあったからなのだろう。


 だからこそ麗玖紗は即座に麻美を肯定したのである。


「そ、それは……そ、その……」


 麗玖紗の言葉に戸惑うばかりの麻美。

 そのタイミングで声を上げたのは弥夏だった。


「こうなったら、あたしも言わせて貰うけど、あさみん。告白するかどうかはともかく、告白したい、っていう気持ちはあるんだよね?」


 それは麻美に対しての裏切りだったのだろうか。

 それとも、何とか麗玖紗の圧力から麻美を庇おうとしているのか。


「そ、それはあるわ」


 親しい弥夏からの問いかけだからだろう。

 麻美はしっかりと答えを返した。


「あ……それなら。ああ、そうか。それで西山さんもいるわけだね」


 比奈子が麗玖紗の考えを理解したのだろう。

 そして疲れたように続ける。


「順番がおかしいよ、安城さん。とにかく告白しろって話じゃ無くて、何とか上手く行くように、みんなで考えようって事なんでしょ?」

「フラれて泣かれるのも面倒だからな。それならくっついてくれた方が俺には都合が良い」


 比奈子の指摘に、してやったりの笑顔を見せる麗玖紗。

 確かに麗玖紗の今までの進行振りを総合すれば、そういう結論に辿り着くはずなのだ。


 それを麗玖紗が説明しなかったのは……


「どんなに作戦を練っても、土壇場で遠藤がよれちゃ台無しだからな。先にきちんと決意して欲しかった」

「じゃ、じゃあ本当に?」

「同じこと言わせるのか? 俺は別に嫌がらせでアンタに玉砕させようってつもりは無い。アンタがイケメンとくっついた方がスッキリするんだよ」


 そして繰り返された言葉に、短く付け足した。


「アンタ、可愛いんだし可能性は高いと思うぜ」

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