第77話 呂貴也の真実
では秘匿された部分。
亮平の部屋に呂貴也が訪れた時を振り返ってみよう。
ちなみに、あの時以降呂貴也から亮平に「遊びに行っても良いか?」というお伺いもあるのだが、それはスルー状態だ。
だから、ゴールデンウィーク明けまで呂貴也が亮平の部屋に訪れたのは、あの時一回切りである。
そのたったの一回で、随分歯車が狂ってしまったのだ。
順番に見ていきたい。
何しろ「もっとゆっくり話をする必要がある」と呂貴也が言った後、本当に二人は順番に話をしなければならなくなったからである。
麻美が暴発した昼休みから話を始めるのが、二人にとっては都合が良かったのだが、そうすると、
「何故、二人は
と、呂貴也に詰め寄られることになる。
確かに麻美が暴発した理由を説明していくと、必然的にそこが疑問点として浮き上がってしまうのだ。
では麗玖紗と同じように、呂貴也もやたらと疑問を持ちたがるタイプなのかというと、それも違う。呂貴也は単純に二人の行動の理由を知りたがる、一種のストーカーだったのである。
友人と呼べる存在が希薄な状態であったために、こんな呂貴也が出来上がってしまったのだろう。
だからといって、呂貴也が二人の「ファン」――言葉を選んでみました――だと考えようとしても、気持ち悪いものは気持ち悪い。それに面倒であることも確かだ。
そこで二人は気付いてしまった。
呂貴也は違う学校通っているのだ、と。
そして、この場を乗り切ってしまえばなんとかなる――という、その場しのぎにしかならない理屈に身を委ねてしまったのである。
結果として、二人は吐いてしまった。
百合妄想のことを。
そこから説明しなければ、まず梢と紀恵の接触が説明出来ないからだ。
後から考えれば、それによって麻美と梢の確執についても、呂貴也が自然と知ることになったことは幸運と呼べるかも知れない。
だが、その幸運はあざなえる縄のように、不運な部分もあったのである。
いや、不運だけしか無かった、と強弁することも可能だったのだろう。
何しろ、百合妄想について説明を受けた呂貴也は実に興味深げに、二人の妄想のやり方について、さらにレクチャーを受けた。
紀恵からは、女の子同士がキャッキャウフフ、男はいない世界の妄想について説明される。
それによって、紀恵が紀恵である理由の一端を知ることになった呂貴也であったが、これには感銘を受けなかったようだ。
紀恵がいくら熱心に語っても、冷めた瞳のまま。何やら見下している様な雰囲気まで発し始めたのである。
では、亮平の妄想はどうか?
これに呂貴也は反応した。「なるほど」「そういうパターンもあるか」などと、熱心に合いの手を入れた。
もちろん、紀恵は頑強に修正を試みたのだが……
「……俺、女って、大っっ嫌いなんだよね」
呂貴也のこの告白で、紀恵も停止せざるを得なかった。
その告白が本当だとするると、呂貴也は何故、亮平の妄想にだけ反応したのか?
いやそれ以前に何故「百合」に興味を持ったのか?
紀恵か亮平か。
はたまた二人ともであったのか。ゴクリと唾を飲み込む音が響く。
呂貴也の美貌が、凄味を増幅させていた。
そう。この時――
――魔王が誕生したのである。
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