第78話 魔王誕生
結局は梢の懸念、それに麗玖紗の推測は的中していたのである。
呂貴也は徹底的な女嫌いであった。それどころか完全に女性を見下していたのだ。
では、何故百合に興味を持ったのか。
そして、麻美と梢の仲を取り持とうとしたのか。
実はこの二つは関係してるのである。
「女は女同士で潰し合ってくれるのが一番良いことがよくわかった。その点では西山さんの妄想の方が良いんだが、そのまま生存し続けるのが厄介だな」
呂貴也はまず、自分の百合妄想の要としてその前提を確固たるものとした。
そのあまりに過激な発言に、さしもの変態達も黙り込んでしまう。
「となると
ドンドン、無茶苦茶を追加してゆく呂貴也。
だが、呂貴也の無茶苦茶まだ止まらなかった。
「俺が二人と知り合うきっかけになった……そうそう、遠藤麻美と佐々木梢。この二人で実験してみよう。仲直りするように言ってみるよ。デートのついでに。女同士を近くに置けば、勝手に自滅するからな。西山さんがそうしたように、俺も自分の妄想に従って、現実に干渉してみる」
「それは禁じ手なんやって! それでどれだけ面倒なことになったのかは説明したはずや!」
呂貴也のあまりの無茶で、ようやく亮平が動き出した。
さらに亮平は続ける。
「そもそも久隆のは百合でも何でも無いやろ!」
「亮平は関西出身なんだな。俺のこともロキで良い」
「それは今は関係ない!」
と、必死なって亮平は呂貴也を諫めようとしたが、呂貴也は完全に覚醒しまくっていた。怜悧な双眸に極北の冷たさが宿っている。
「あ、あんた、O次郎! 女の子が嫌いって……それはそれで良いけど……そうだ! お母さんは? 女の人なんでしょ?」
紀恵も声を上げるが、呂貴也は全く動じなかった。
「何を言ってるんだ、西山さん。大事な人はダブスタ扱いするんだろう? お母さんは俺にとってダブスタだ」
「そ、それは……」
再び言葉につまる紀恵。何しろダブスタの理屈を持ち出したのは紀恵なのであるから抗いようが無い。
「実は俺の中で、お母さんをどのポジションにすれば良いのか見当がつかなかったんだ。俺の女嫌いは絶対に覆すことが出来ないしな。……ダブスタね。確かに大事な相手は特別扱いにして、悪いはずは無いよな」
それは確かにそうなのだろう。
だが、その結果無惨な百合妄想が許されるのかどうか。
いや、そもそも妄想で留まれば、これもまた悪いはずが無い。
さらに呂貴也は麻美と梢の仲直りさせてみせると宣言しているのである。
その動機が自滅を期待するものだとしても、それによって紀恵の望むキャッキャウフフ空間が出来上がることまた確実。
そして未来は未確定だから「未」来なのであり、それは呂貴也の思う世界に繋がるのかどうかわからないのである。
で、あればあとは――
呂貴也の言うとおり、自滅してしまうのか。
紀恵が夢見る、優しい世界が顕現するのか。
それぞれの未来が訪れると確信する呂貴也と紀恵はどうなってしまうのだろう。
そして亮平は如何にするべきなのか。
その答えが見えないまま、ゴールデンウィークは明け。現在に至る。
とりあえず現状は紀恵の望んだ世界の近似値になったのだが、果たして――
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