第63話 イケメン・ブルー
亮平達の欲求をそのまま形にすれば――
――これから告白しようとする女子を紹介するから断ってくれ。
になる。
これは言うまでもないが、欲求としてはおかしすぎる。
真正面からこの欲求を受け入れた場合、悪巧み以外の意図は感じられないだろう。
実際、悪巧みであるわけだし。
それにこの場にはV田が同席しているわけで、呂貴也にあからさまに伝えるわけにも行かないのである。
もしかしたら、この二人と同調できる可能性はあったかもしれないのだが「告白……」から切り出してしまったことで、そこから修正する方法が、亮平には即座には思いつけなかった。
「盛本くん、どうしたの?」
と、隣の席に座る紀恵が停止した亮平を心配して声をかける。
紀恵にしても、亮平と
そもそも紀恵は自分がこの場所にいることすら、よくわかってはいないのだ。
このままでは、空気も会話も硬直してしまう。
あとは逃亡の一択になるかと思われたが……
「告白……ああ、やっぱりそういう話になるんだ」
呂貴也が、その甘い声をフローズン状態にして、亮平の勇み足を拾い上げてくれた。
とりあえずこれによって場の硬直は免れる事になる。
だが、その代わりに呂貴也の声で次第に冷凍されていく可能性が出現してしまった。
「ろ、ロキ……」
その気配を察したV田が怯えながら、横に座る呂貴也のあだ名を呼ぶ。
呂貴也はその声に反応して。しっかりとV田を見つめた。そして幾分か温度の上がった声で慰める。
「ああ、谷は別に気にしないで良いよ。久しぶりに会えるきっかけにもなったし、そっちの学校の付き合いだってあるんだろ?」
「そ、それはまぁ……」
V田としてはそう答えるしか無いだろう。
呂貴也は優しく頷いた。
「付き合いは大事にした方が良い。俺も『森飯店』ってラーメン屋でバイトしてるんだけど、それはナベさんに頼まれたからだし」
「ナベさん!? あの人、空手の道場をやってるって聞いたけど」
「だからさ。道場の門下生がラーメン屋開いて、しばらく手伝ってやってくれって頼まれたんだ」
確かに呂貴也は伝手を蔑ろにするタイプでは無いらしい。
そして、そんな呂貴也の信条は紀恵と亮平にも及んだ。
「えっと、西山さんだったよね? あの店のラーメン食べに来てくれた。俺のこと覚えてるだろ? それで君が俺への伝手になるって思われたんじゃ無いかな?」
それは見事な推理と言うべきだろう。
この状況――呂貴也に会いに来た面子――が出来上がった理由として、圧倒的な説得力がある。さらに彼氏であるところの亮平が同行している理由も窺えるというものだ。
だがそれは通常の人間を相手にした場合だ。
残念ながらこの場にいたのは西山紀恵なのである。
「何言ってるの? 自意識過剰? あなたのこと、全然知らないんだけど」
紀恵は無慈悲に呂貴也を切って捨てた。
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