第46話 そういう順番
しかし麗玖紗の通達は突然であったが、果たして無茶振りと言えるものだったのだろうか?
その疑問に直感的に気付いたのだろう。
弥夏と比奈子の表情が変わる。
それを受けて、と言うわけでは無いだろうが麗玖紗はさらに続けた。
「俺はアンタが嫌いだ。俺にとってはアンタがくっつこうがフラれようがどうでも良い。だからこそ遠慮無く言える。アンタ、そこまで追い込まれてるんだよ」
「お。追い込まれてるって……わ、私はそんな……」
それでも少しは麗玖紗の圧に慣れたのだろう。
必死になって、麻美が反論しようとする。
それを見て、麗玖紗が放埒な髪を揺らした。
「ああ、すまん。追い詰められてるのはアンタもそうだけど、その周囲もだ。例えばそこの秋瀬にしても舟城にしても。アンタの友達だから気を遣ってくれてるが、俺から見れば、それは『優しい虐待』してるようなもんだ」
「ち、違う!」
と、慌てて弥夏が立ち上がったが、麗玖紗は手を上げてそれを制した。
「わかってる。他の言葉知らないから、こういう言い方になったが、その点で俺はアンタ達に文句言おうってわけじゃ無い。ただ、わかってるんだろ? どうにも上手く行ってないって」
「……それは……まぁ……」
重ねての問いかけに、比奈子がふてくされたように応じた。
すでに比奈子は、麗玖紗と梢の繋がりを察しているのだろう。
そうして外堀を埋めた麗玖紗は改めて麻美に向き直る。
「久隆に黙って近付く奴は許さない――それで、あの店に詰めかけてる連中とアンタは協定でも結んでるんじゃ無いか? そこから西山達があの店に行ったことも知ったんだろ。実際はどうかは知らないけどな」
あるいは「いつものごとく」と言っても良いのかもしれない。麻美は麗玖紗に決めつけられて、涙を浮かべ始めた。
だが、それで止まるような麗玖紗では無い。
「――かと言って、学校でファンクラブでも作って牽制しあうのは言うまでもないが建設的では無い。そのターンはもう終わってるんだ」
「お、終わってるって……それにターンとかは……」
泣いている場合では無いと察せざるを得なかった麻美が懸命に反論を試みた。
それを麗玖紗は認めながら、さらに続ける。
「もう、そういうことやってる順番じゃ無いって事だよ。そういう順番になったのはアンタが自分で順番を進めたからだ。そこの西山に文句を付けたときにな」
確かに今の状況になったのは、麻美が昼休みに爆発したからだ。
麗玖紗がここまで仕切るきっかけになったのも、あの爆発なのである。
つまり何もかも、麻美のせい、なのである。
麗玖紗はそういう理屈を積み上げてしまった。
「憧れて、それだけで満足してる時間はもう終わってるんだ。アンタが時間を進めた。なら、やるべきことは告白しか無いだろうが」
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