第25話 麗玖紗のクセ
三人は連れ立って南門から出て、歩いて十分ほどで辿り着く神社に向かうことになった。さほど大きくない、目立たない神社だ。
途中で麗玖紗のおごりで缶コーヒーや紅茶を買って境内に乗り込み、それぞれが居場所を決めた。曇天ではあるが雨が降りそうと言うわけではなく、強いて問題点を挙げれば少し肌寒いぐらいのものだろう。
「なるほどな……昨日の話で引っかかってたんだ。アンタがどうして共学に来たんだろうって。それだけ家が近いなら、趣味がどうでもこの学校にするな」
呆れたように麗玖紗が言う。
麗玖紗は境内のど真ん中、鳥居の真下辺りに立って、二人を神社に閉じ込めるような立ち位置にいた。
持っている飲み物は冷たいミルクティー。
三人はこの神社に着くまで黙って歩いていたわけでは無い。北門と南門の話が継続し、当然それは紀恵達の家がどれだけ学校に近いか、という話になってしまう。
それを聞いた麗玖紗は、即座に紀恵の事情を察した。
「しかも、朝起きれない口か。私は朝のうちに声をかけようと思ってたのに、アンタ全然来ないから。それで、あんな時間に声をかけたってわけだ」
これにて紀恵の朝の事情は丸裸というわけだ。
ほとんど何も話をしてないのも同然なのに、わずかな会話だけでこれである。
そして本殿の前の木製の階段に腰を下ろし、温かいミルクティーを抱えた紀恵。
その傍らに立ったまま温かい缶コーヒーを大事そうに啜る亮平。
二人の目が爛々と輝いていた。
こんな能力を麗玖紗が使えるとは!
使える! 妄想に!
……などと考えて興奮している変態達である。
一方で麗玖紗は、こんな風に詮索をしてしまう自分のクセをあまり良いものだとは思ってないようだ。
覆い被さってくる前髪ではっきりとはわからないが、頬が赤くなっている。
しかし、ここまで来て躊躇するわけにはいかないと思い直したようだ。
何しろ二人を呼び出したのは――
「実は昨日の話でも引っかかるところがあってな。それが気になって、どうにも落ち着かない。それで大きなお世話……って言うのも違う気もするんだけど、とにかく確認したくて」
――そういった理由があるかららしい。
だからこそ自分のクセを隠しても仕方がないと思い直したのだろう。随分早口になってはいたが。
もちろん、そんな麗玖紗のクセを気にする二人では無い。
むしろ大歓迎――とは言わないが、全く気にする素振りも見せず、
「いいよ! 全然! なんでも確認して!」
「うん、そうだな。気にしなくても良いと思う。答えられる事なら……」
と、麗玖紗を励ますように声をかける。
変態も使いようという奴だ。
麗玖紗もそれで腹が据わったのか、唐突に切り出した。
「例のラーメン屋に行ったのはどうして?」
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