第67話 V田の離脱
ここで、お報せがあります。
V田が離脱しました。
きっかけは、ファーストフード店のテーブルに出していたV田のスマホが震えたことから始まります。
そしてディスプレイに表示された文字を見て、途端にV田が落ち着きを失ったのです。
「ど、どうした?」
斜め前に座っていた亮平がすぐにV田の異変に気付く。
「げ、ゲリラ配信の予告だ!」
予告した段階でゲリラでは無いだろうというツッコミは誰もしなかった。
何しろV田の目が血走っている。
「あ、え、えっと、もしかして、お前が追いかけてるアイドルの……」
「そうだよ! 『テンプルにCHU!』の『モニグロ』ちゃんの単独配信だ! これは全裸待機必須!」
こんな事を人目も憚らず主張するV田を止めることが出来るだろうか?
いや、出来ようはずが無い。
……と言うことで、四人でファーストフード店から急いで出ると、V田は脇目も振らず去ってしまった。
そしてそれを見送るしか無い紀恵達。
人にはそれぞれ大事なものはある、というお題目は大切だろう。
だがこの場合は「触らぬ神に祟りなし」ということわざの方が適している。
それにV田は自分の役目を十分に果たしたわけであるので、このタイミングで離脱したとしても、責めようがない事は確かだ。
「……谷って、最近ああなの?」
「俺は最近しか知らないけど、最近は確かにああだな」
呆気にとられた呂貴也が亮平に尋ねると、身も蓋もない答えが返ってきた。
それを聞いた呂貴也が顎に手を当てながら、
「もしかして、いきなり太ったのってアレが原因? 最近道場に来なくなったって聞いたけど」
と、先を続けた。
それにも亮平が答える。
「いや、そっちの事情は知らないな。というか、普通に谷のこと気にかけてたんだ」
「そりゃあね。久しぶりに会いたいって言われれば、ちょっと最近のこと聞いておこうかってなるよ」
当たり前の話だが、V田が呂貴也が調べる事が出来るなら、呂貴也も同じ事が出来るのである。
それも伝手を大事にしている呂貴也の方が解像度を高くして。
そしてV田が呂貴也のことを調べる動機と、亮平の「告白……」という先走った失言は無関係では無い。
明言はされていないが、告白というイベントに向けて、V田が調査したということは自明の理と言える関係性なのである。
となると、呂貴也の立場が圧倒的に強くなる。
つまり「ゆっくり話を聞きたい」という呂貴也のリクエストは無下には扱えないということになってしまうのだ。
まるで麗玖紗のやり口――いや、麗玖紗はこの状況になることまで読んでいたのか?
その場合、呂貴也についても麗玖紗は何かしら情報を掴んでいる可能性も出てくる。
それを察した亮平は、胸の内で頭を抱えるが――
「V田くんに流されて、お店出ちゃったけど、どうするの? ゆっくり話をするんでしょ?」
そう。
この場には
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