第29話 紀恵がプロデュース
では、この時の亮平の妄想を見てみよう。
(確かに、あれもこれも都合よう噛み合っとるな。そもそも遠藤さんが何で俺達がラーメン屋行ったことを知ってんねん? ゆう問題もあるわけやし。……まぁ、それが何でかは別にええか。で、そう状況になるように計算したのが佐々木さん、と。やけど、それが攻撃になるんか? それもええか。肝心なのは、佐々木さんにそういうつもりがあるゆうことやな。したら、その動機は遠藤さんが美形に夢中になって、全然相手してくれへん、ゆう流れになる……そうかヤキモチか。それで遠藤さんを攻撃してしもうたと。うん、この展開は物語の序盤としてはなかなか伸び代があるんとちゃうか? しかもこれが現実いうのがたまらんわ)
再び読み飛ばしタイムです。
まとめてしまうと男に恋い焦がれる相手を想ってヤキモキする百合。そういった関係性が成立する可能性に亮平は萌えている。そう解釈してくだされば十分です。
亮平の小癪な部分は、何かしら整合性を保とうとしているあたりだろう。
吸血鬼などというトンデモ要素を拒否した部分からも窺えるように、亮平の妄想とは自らの妄想通り、ある程度の制約を設ける妄想だったのである。
そしてそれは麗玖紗にとって幸いだった事は言うまでもないだろう。
なにしろ亮平の妄想の中には麗玖紗が登場しないのだから。
亮平の口から再び麗玖紗の腰を引かせる妄言が飛び出すことは無いだろう。
あとは、亮平達が詳しく説明してくれと麗玖紗に要求しなければ……
「ねぇ、安城さん。遠藤さんに優しくしてみてくれない?」
紀恵が突然にそんな事を言い出した。
紀恵の要求は説明ではなく、最大限に言葉を選べば「提案」ということになるだろう。
「はぁ? 何で俺がそんなことするんだよ?」
ついに一人称が「俺」になった麗玖紗が、当たり前にその提案を却下した。
だが、欲望にまみれた紀恵は止まらなかった。
「考えてもみて。実際に、遠藤さんが攻撃されてるのかどうかははっきりしてないわけでしょ?」
「そ、それは……」
麗玖紗の中では蓋然性が高い推測ではあったが、確かに決定的な証拠はない。
「……まぁ、そうかもしんねぇけど」
「だからね、安城さんが遠藤さんに近付いて、それで遠藤さんを守っている――そういう風に見えるだけでいいのよ? そうしたら佐々木さんがどう動くかで、はっきり見えてくるものがあるんじゃない?」
恐るべきは変態の一念。
麻美を守る麗玖紗。そういった構図を見たいが為だけに、もっともらしい理屈をでっち上げてしまったのである。
そして、疑問を疑問のままにしておけないと口火を切ったのは間違いなく麗玖紗なのだ。
これでは、引っ込みようが無い。
そこで麗玖紗は救いを求めるように、
「あ、あんたはどう思うんだよ!?」
亮平に声をかけた。
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