第17話 昼休みの乱・承
麻美の爆発は当たり前に注目を集めることになった。
教室内はもちろんのこと、廊下でたむろしていた生徒達まで息を呑んで麻美の様子を窺っている。
「どうしてそうなるのよ! そんな風に彼氏がいるってアピールして! それって罪滅ぼしか何かなの!?」
はっきり言おう。
わけがわからない。
これは周囲の生徒達にとっても同じ事で、麻美が怒っていることは伝わっているのだが、その理由がまったく見当がつかないのだ。
これが麻美でなければ、そのまま
だがしかし、麻美は可愛いのである。
庇護欲だってくすぐられる。
だがやはり、言っていることがあまりにもわからな過ぎた。
結果、音も含めた「空白」が教室に満ちた。
皆が顔を合わせて、何かしらの答えを探して視線を交わし合っている。
もちろん紀恵は変態であるので、こんな麻美でも「レアだわ」などと考えて堪能中だ。当然、事態の解決に役に立つはずもない。
相方の亮平は他のクラスメイトよりも少しだけ持っている情報量が多かったが、それでも麻美の爆発の理由はわからないだろう。
この局面で動けるなら――
「待って。待って待って、あさみん。一体、どうしたの? まずは落ち着いてよ」
近くに座っていた弥夏だろう。
「そうだね。まずは……うん、何かあったんだろうね。それを教えてくれなくちゃ」
比奈子もそれに続いた。
比奈子は小柄で百五十には届かない。くるっと丸まったボブで、座敷童っぽい、というのが最も的確に比奈子のルックスを説明出来る。
目もまん丸で、どこか小動物っぽいが、口調からは冷静さが伝わってきた。
麻美達のグループ内でも、しっかり者としての
しゃくり上げながら麻美は――目には涙が浮かんでいる――比奈子に向けて、こっくりとうなずいた。
「……あ、あのね。西山さんが誤魔化してばっかりで、全然……そんなはず無いのに、私を無視して、おかしな事ばっかり言って……」
相変わらずわけがわからないが、訴えているのが麻美ということで、
――どうやら紀恵が何かやらかしたらしい
という雰囲気が教室内で出来上がってしまう。
そして何かしら反論すべきである紀恵は、涙をこぼす麻美を見て恍惚の表情を浮かべていた。
変態の鑑と言うべき鬼畜外道な振る舞いであったが、だからこそ周囲のクラスメイトからは自動的に、紀恵に対して
亮平は何とか弁護を試みようとして、親しい男子に目配せを送っているが事情を知っているものは誰もいないようだ。
男子からの注目も集めている麻美であるので、誰か知っているのでは? と考えたようだが、そう上手くは行かない。
このままでは紀恵が断罪されてしまう。
決して無罪とは言い切れないあたりに業の深さを感じるが、この場合理不尽な目に遭っているのは紀恵だろう。
このままではB組は間違ってしまう。
そういう道に迷い込もうとしたその時――
「――鬱陶しいわね。泣くの止めて」
B組に厳かな声が響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます