第54話 V田からの情報
「どうも、今はあんまり知らないみたいだけど、助かるには助かる。友達……では無い?」
前提条件が整ったところで、麗玖紗がV田への質問に具体性を持たせた。
その確認に、V田は重々しく頷いた。
これまでのやり取りも、V田は背中で聞いていたと思われるポジションだったので、椅子ごと振り返る形で、麻美達へと向き直っている。
「友達じゃ無いけど、知り合いなのは確かだ。ガキの頃、町内の集会所というか、そういう建物あるだろ?」
「ああ、そういうの……いや、俺はこっちのことは良くわかんないんだけど」
亮平が、V田の言いたい事をすぐに察したようだが、そもそもこの地域の出身でない事で慎重に言葉を継ぎ足す。
「わかるよ。町内会の集会なんかで使われる奴でしょ? 地蔵盆とかでお菓子配ったりしてたり」
そこに弥夏がフォローを入れた。
V田はすぐ、それに同意する。
「ああ、そんな奴だ。で、そういう場所があるから、習字とかそろばんとかを教えてくれたりする場所なんだけど、俺とロキは空手教わりに行ってたんだ」
「……空手か」
麗玖紗が、ぼそりと呟いた。
その情報で何かに疑問を感じたのか、それとも疑問に思っていたことを解決できる糸口を見つけたのか。
結局、麗玖紗はそれ以上発言しなかったので、麻美が続けて質問する。
「それって……道場に通うのとは違うの?」
「いや、まだ小学校低学年の頃だしな。そのまま続けて、それぞれそれなりの道場に行く奴もいるかもしんないけど、集会所で教わる空手てって、半分は体操みたいなものだから」
「わかる。そういうのあるよね」
弥夏が突然、割り込んできた。
一斉に自分に集まる視線に戸惑いながら、弥夏は慌てて手を振った。
「い、いや、あたしんとこの弟達がね。そういう習い事に行かせてみようかって話があってさ。パンフレット見たことあるんだ」
「そうそう。それだ習い事。そういう感覚なんだよ。それで学校とは別に皆で集まって、何かするってのが俺、結構好きでさ」
地域の一員としての認められているという感覚と言っても良いのだろうか。
奇妙な承認欲求が満たされる様な感覚になるのだろう。
「それは……久隆くんも同じ?」
それは質問というか確認ではあったのだろう。
比奈子がボブを斜めに揺らしながら、V田に尋ねる。
だが、V田はそれにかぶりを振った。
「いや、ロキは何というか真剣だったよ。切羽詰まってるって言うか……俺にはその印象があるから、イケメンって話とあんまり繋がらなかったんだ」
まるで言い訳するかのように、V田は昔を思い出しながら説明を続けた。
「で、人づての人づてぐらいでさ。集会所に集まっていた連中は今どうなっているのかねぇ? って話になることがあって、ロキは男子校に行ったって聞いたんだよ」
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