第65話 O次郎爆誕
O次郎とは――
藤子・F・不二雄氏による漫画「おばけのQ太郎」に登場する。キャラクターである。タイトルにもなっているQ太郎の弟。しゃべる言葉は全て「バケラッタ」というピーキーなキャラクターなのだ。
では何故、紀恵はO次郎と叫んだのか?
そのプロセスを見ていこう。
……だがその前に、この場にいる男子全員がスマホで「O次郎」のビジュアルを確認するところから説明しなければならない。
何しろ紀恵の「呂貴也はO次郎にそっくり」という主張から検証しなければならないからだ。
ちなみに店中の客がスマホをフリックしていることは言うまでもない。
確実に世代が違うのだからこの現象は仕方ないだろう。
逆に紀恵はどうなっているんだ? ということになるが、紀恵はこの方面が明るい大学生と知り合いなのである
だがやがてO次郎のビジュアルが周知されていくと、当然ながらそれは全く受け入れられなかった。
まず背の高さが違う。
O次郎は驚異の一頭身なのである。
そこをまずV田が指摘すると――
「問題なのは顔でしょ? そういう話だったじゃ無い。O次郎の顔はわかるでしょ?」
と、紀恵はあっけらかんと反論してきた。
何しろ驚異の一頭身であるのでO次郎に顔はある。と言うか顔しかないのであるが。
そうなると問題となっている顔だけに論点を絞る事になるわけだが、誰が問題提起するべきか、という事になる。
V田は半ば心が折れている。呂貴也も似たようなものだ。
やはりここでも亮平に頼るしかなくなるわけで……
亮平は店中からの熱い視線を受け、背を押されながら、紀恵に確認することになった。
「……西山さん。O次郎は確認した。スマホ万歳や。やけど、俺にはどこが似ているのかよくわからん。その辺りの解説をお願いしたい」
「え~~」
と、紀恵は不満たらたらであったが、亮平からの要望である。
仕方なく説明を開始した。
「この久隆くんって、顔に全く特徴が無いのよ。ザ・平均値と言っても良いわ」
もちろん、良くはないのだが誰もツッコむものはいなかった。
それどころでは無いからだ。
「だから、点と線で顔書いてるようなものよ。それなりに整っているから……だから特徴が無いんだけど、つまりそんなわけでO次郎なのよ」
確かにO次郎の普段の表情は、目が点であり、口はカーブを描く線でしか無い。
もちろんその配置にも巨匠の技が秘められている、と慰めることは出来るのだが……
「もちろん、O次郎の方が可愛いわよ。だけど久隆くんが誰かに似てるって思わないと、話が面倒になるから、仕方ないけどO次郎」
O次郎擁護にために、躊躇無く呂貴也を生け贄に捧げる紀恵。
そのあまりの扱いに――
「ハッ、ハハハハハハハハハ!」
呂貴也は笑い出してしまった。
それも全力で。
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