第75話 麗玖紗の疑問
「ん? なになに? あ、
「違ぇーよ。なんでだよ」
麗玖紗に声をかけられた事で、一瞬にして浮かれ上がった紀恵が相変わらず欲望に忠実に返した。
それを麗玖紗は面倒そうに否定する。
ちなみにこれでも紀恵としては自重しているつもりではあるのだ。
何しろモブのはずなのに、麗玖紗や麻美達に混ざろうとしているのだから。
ちなみに現在のB組の勢力図は、麻美が調子を取り戻し、麗玖紗がすっかり大人しくなったので、かなり安定していると言っても良いだろう。
今も麗玖紗が紀恵達に接触したわけなのだが、それで教室がざわめくことも無い。
麻美達も、長身の麗玖紗を少し見遣っただけだった。
「じゃあ、俺が席を外す……」
「オマエも何でだよ」
そして紀恵を百合の祭壇に掲げようとしていた亮平も制する麗玖紗。
そのまま圧を高めて、二人を大人しくさせると、近くの机と椅子を持ってきて、二人が使っている机に合体させた。
「昼飯のついでに、ちょっと愚痴を聞いて欲しい、ぐらいの話なんだよ。付き合ってくれるよな?」
と、麗玖紗に喧嘩腰で言われると愚痴だけで済むはずが無いだろうと確信できる二人だったが、確信したところで打つ手はないので諦めるしかないのである。
何しろこの二人は脛に傷持つ状態なのであるから。
では、麗玖紗はその驚異の洞察力で何かを確信し、二人を糾弾しに来たというと――
「調子が狂ったが、先に済ませちまおう。――二人には面倒をかけた。正直助かったよ」
それが全くの逆で、謝罪&謝礼から始まったのである。
もちろん二人には。何故麗玖紗がそんな事をするのかわからない。
見事なシンクロ具合で、二人揃って首を傾げてしまった。
その様子を見て、麗玖紗は苦笑を浮かべた。そして、声を潜めながら説明を始めた。
「実はな……例の久隆ってイケメン引っ張り出すのに最適な人選は、西山だと思ってたんだよ」
「私? どうして? O次郎なんか……」
と、答えながら紀恵は歯ぎしりする。
そこですかさず、亮平がフォローを入れた。
何しろいきなり「O次郎」呼びではわけがわからなすぎるからだ。
麗玖紗は「O次郎爆誕」までの顛末を亮平から説明される。
それを黙って聞いていた麗玖紗の口元に、ニヤニヤ笑いが浮かんだ。
「そうそう。西山のそれに期待してたんだ。だが、それを説明するのが難しくてな。西山なら勝手にそうなると思ってたしな」
「どうしてそうなるの?」
と、麗玖紗の言葉にすかさず声を上げる紀恵。
だが麗玖紗は平然と、
「ラーメン屋でそうなるところを見てるんだ俺は。アンタは自然に久隆って奴を無下に扱うって」
と、断言してしまう。
さらに続けて、
「といっても、これを遠藤の前では説明出来ないしな。ましてや、それが久隆に気に入られる方法だなんてことは、どうやっても説明出来なかった」
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