第3話 ここで装備していくかい?

 この森に飛ばされる前に何をしていたかと言うと、二人はとあるローカル列車に乗って移動している最中だった。


 目的地は新設された工場視察のためだ。


 普段の勤め先から新設工場は、遠く離れていたため、工場の最寄りにある大都市へと前日入りをしていた。


 明けた翌日に列車を何本か乗り継いで移動している、そんな時のことだった。


 二人はガラガラの列車の中で、スマホを弄って暇を潰しており、長野がSNSを一通り見終わったところで顔を上げると、そこは森に囲まれた河原だった。


 そのとき隣に座っていた奥田は、岩に腰掛けた状態でスマホを弄っていた。


「あれ?通信エラーがでた。田舎だから?」


 うん正解。田舎だからだと思うよ。



◇◇◇◇◇



 しばらくして異常事態に気付いた奥田。


 二人して思い付く限りの大混乱アクションを一通り軽く流した後に、冒頭へと繋がる。


 今日が金曜日だったこともあり、視察を含む仕事を全て終えた後に、新設工場がある町で宿をとり、週末の休みを使い、近くの清流で釣りをする予定を立てていた。


 『せっかくの機会なので、釣りというものを、私も実際に見てみたい』と奥田からの参加希望を受けていた為、二人の荷物には、数日分の着替えやお泊まりセット(歯ブラシやタオル等)が入っていたことは不幸中の幸いだった。



◇◇◇◇◇



「若いってこんなに動けるんもんなんだな」


 長さ2mほどの太い流木を抱えながらそう言った。


 洞穴の入り口と、洞穴の奥の方から余計な動物が入り込まないようにするため、河原から石や木を運び込み、簡単なバリケードを作るつもりだ。


 土木作業でスーツを汚しそうなので、二人はすでに動きやすい服装へと着替えていた。


「大きめの石でも結構持ち上げれるもんですね」


 異世界に来たことで気が昂っているのか、バリケードの材料を運び入れるために何度も往復しているが一向に疲れてこない。


 入り口側のバリケードは、何本かの木を動かすことで出入りするための隙間が出来るようにし、奥へと続く通路はバリケードで完全に封鎖した。


「さて」


 鞄から釣り道具を取り出し、竿を継いでいく。


 超コンパクトタックルの釣竿は、バラした状態だと30cm程度に畳める優れものだ。


「ホンキで釣りするんですか!?サハギンが釣れたらどうするんです!」


「サハギンって海洋性じゃね?」


 この森を抜けるためには手持ちの食料だけでは到底足りず、現地で何らか食料を得る必要がある。


 比較的簡単に手に入りそうなキノコ類は流石に怖い。


 その点、川魚なら大抵のものは焼けば美味しく食べられる、はずだ。


 意気揚々と釣竿を担いで滝壺へと向かう。


「さあ行こうぜ!異世界滝のヌシ、サハ太郎編の始まりだ!」


「やっぱりサハギンじゃないっすか」


◇◇◇◇◇

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