第28話 名は体を表す
「えー、皆さん、先ずはロッコくんからこのギルドで見かけるパーティ名を教えてもらい、それを参考にしてみるというはどうでしょうか」
「なるほど、悪くないですね」
「そうしましょう」
本当は初依頼達成とギルド登録完了を祝って、簡単な宴会を催す予定だったのだが、パーティ名を決めるというお題が突然投下されてしまったため、誰しもが自分の案を推し進めようとして、ギスギスとまでは言わないが、明らかに朗らかな雰囲気とは言い難い、微妙な空気に包まれていた。
「ええと、まずこのギルドで一番有名なパーティの名前が『湖水の導き』っすね。大ベテランのパーティっす」
「ふーん、結構いいね」
「いいんじゃないでしょうか」
「かっこいいと思います」
「この街に似合ってる」
「私も聞いたことがあるほど有名です」
皆からは高評価のようだ。
「あと有名なところでは、メンバー全員が女の『ヤコーミの抱擁』っすかね。街で酷い目にあった女や困窮した女なんかを集めて救ってるパーティっすわ」
「めっちゃいい人じゃん」
「一部翻訳されませんでしたね」
「あー、ヤコーミは団長の名前っすよ。ものすごくゴツい女っす」
「活動に見合ったパーティ名のですね」
「ミサキの抱擁・・・んー」
「優しそうな名前だね」
「人助けはかっこいい」
一部が妙な発想を抱えているようだが、このパーティ名も高評価のようだ。
「あとはそうっすねー、中央冒険者ギルドの方で有名な『勘定王』ってパーティがありやす。帳簿整理や税金計算が得意なメンバーで構成されてて、食堂や商店は元より、憲兵隊の経理仕事にも助っ人として派遣されてるらしいっす。特に税金を納める年末には引っ張りだこで、一部界隈からは神のように扱われてるっす」
「会計ソフトみたいな名前だ」
「冒険者の定義が揺らぐ」
「名前がかっこいい」
「王を呼称するのは不敬にあたらないの?」
「ロッコが色々なことに詳しすぎて怖い」
「シンプルで好き」
やはり有名どころのパーティ名はどれも高評価みたいだな。
「この街で特に有名な冒険者パーティはこんなところっす。パーティ名の参考にってなら、思い出せる限りのものをどんどん言っていきやしょうか?」
「ぜひお願いします」
ロッコが有能すぎて怖い。
「ええとそうっすねぇ、鋼の誓い、迷宮踏破団、螺旋の刃、ゴブリンの友達、戦槍隊、明日を夢みて、馬鹿騒ぎ、ツキノヨルメイキュウノチニクルフモノ、美食の集い・・・」
結構なツッコミどころが詰まってるな。
「あとは、水龍の福音、王国華撃団、鬼雪隊、犬犬犬、高速青年、迷宮の雄叫び、リフオク調査団、昼下がりの人妻、悠久申請、乱れた果実、長屋の誘惑・・・」
お、やっと始まったな。
「えーっと他には、春風の囁き、奥さん服屋です、エント=リオ親衛隊、赤き紅蓮、新緑の風、王国の風、妖精の風、蒼穹の双丘、濡れた果実、引き裂かれた果実・・・」
「えっと、ちょっと止めて止めて、一旦待ってもらえる?」
「はい?」
「これ全部はツッコミ入れれないんだわ」
「と言いますと?」
「いや無理でしょ、風多すぎとか、スケベワード混ざってない?とか、全部拾ってらんないでしょ?エント=リオ親衛隊ですら後回しにしなきゃいかんのだよ?無理だよ」
赤き紅蓮って実在してたんだな。
「もう自分たちのパーティ名の参考にするには十分な数が確認できたので、そろそろ決めてしまおうか」
「「了解です」」
「えーっと、ではここは公平に、各人この紙に希望するパーティ名を書いて、中身が見えないように2回折り曲げてから、この袋に入れて下さい。ロッコとオサートちゃんは、俺たちの使う文字が書けないので、自分の名前か、自分のものだと分かるマークを記入して下さい」
そう言って皆に紙とペンを渡す。
皆がテーブルを離れ、空いた席へと座ると、背中を丸めて書き始めた。
「このペンなんすか?めちゃくちゃ書きやすいっすよ?」
ロッコの声が聞こえてくる。
「俺も書いておくか」
しばらくして皆が紙を袋に入れたことを確認し、ついにパーティ名が決まる!と、その時に食堂にリオがやってきた。
「お、みんな何してるのー?」
張り詰めた空気が弛緩する。
そして興味深そうにしているリオにこれまでの話を伝えた。
「じゃあ私がその袋から紙を引く役をやらせてよ。ジュンペーたちの国の文字はわからないから、引いた紙はすぐにジュンペーに手渡すよ」
「わかった、それでいこう」
皆が固唾を飲んで見守る中、リオは袋の中から紙を一枚取り出した。
「はいどうぞ」
その紙を受け取る。
「では、我々のパーティ名を発表します!!」
◇◇◇◇◇
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