第4話 サハギンとの戦闘
滝の下には直径20mほどの水面が広がっている。
初めは手持ちのルアーで釣りをするつもりだったが、折角なので現地の虫などを餌にすることで、小動物の簡単な調査も併せて行うことにした。
手近な石をひっくり返して石の下を覗き込むと、地球と同じく川虫に似た幼虫(と、思われる謎の虫)が見つかった。
形こそ川虫に似ているが、触覚の先だけ明るい黄色をしており少し怖い。
刺されたりしたら事なので、念の為に素手で触れるのはやめて、手袋を装着してから捕まえることにした。
早速川虫モドキを釣り針に取り付け釣りを開始する。
水が逆巻く岩の近くへ仕掛けを投げ込むこと数秒、異世界初の当たりが釣り糸と竿を通して伝わってきた。
「お!きたきたきた!」
暴れ回る魚を巧みな技術(賛否あり)で制御し、徐々に近くへと手繰り寄せる。
足場は水面から若干離れた岩の上だったため、糸が切れないことを祈りつつも一気に水から引っこ抜く。
腰に装着した玉網(釣った魚を取り込むための網)で空中の魚を見事にキャッチすると、眩いドヤ顔を携えて後ろで見ていた奥田の方に振り向いた。
「凄い凄い!!本当に釣れちゃいましたね!!!」
「当ったり前じゃないかー、釣りキチ純平とは俺様のことよ!ガハハハ!」
取り敢えず今晩の食事が手に入った事に安心しつつ、玉網の中にいる異世界魚の確認を行うことにした。
体長は30cmほどでマス科の魚によく似た形状をしており、日本のマスよりも背ビレが長くてビラビラしている。
流れの強いこの川で泳ぐには何だか邪魔そうに思えた。
一番の特徴はその体色で、背中の部分と背ビレがド派手なピンク色をしている事だった。
「これなんて名前の魚なんですか?」
「ええっと、サーモンピンク」
「随分と適当に命名しましたねぇ、ピンクサーモンではないんですか?」
ピンクサーモンはカラフトマスの事だ。
◇◇◇◇◇
予め奥田に頼んで作ってもらっていた石組みの生簀へ釣れた魚を入れ、先ほどのポイントへと戻ると、その後も同じ種類の魚が何匹も釣れた。
途中で奥田と交代してみたが彼女も問題なく釣ることができたため、全くスレていない最高の釣り場ということが判明し、思わず笑いが込み上げてくる。
釣れた魚を手で掴もうとした奥田が言う。
「ちょちょちょ!!暴れないで!!サーモンピンクのビラビラが!粘液で濡れそぼったサーモンピンクのビラビラが!!」
「見た目童女がそう言うことを口にするのはよしなさいって」
◇◇◇◇◇
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