はいはい、異世界異世界

大沢ピヨ氏

第1話 ステータスオープン、せず

「あ、これ異世界転移だ」


 そう結論づけた理由は、目の前で横たわる奇妙な鳥の死骸にあった。


 カラス程の大きさをした茶色い鳥の死骸には、四枚の羽根が生えているのが見て取れる。


 もしかすると昆虫の類かもしれないが、全身が羽毛で包まれており、頭部にはクチバシがある様子からも鳥の仲間であろう。


「それ食べるんですか?」


「いや流石に・・・」


 覗き込むように後ろから話しかけてきた女の名前は奥田美咲といい、先ほどから鳥の死骸を熱心に眺めている男、長野純平の部下だ。

 彼らの正面には深い森、背後には澄んだ水の流れる川があり、スーツ姿の二人の姿は些か浮いている。


 鳥の死骸の他にも、厚さ5センチほどの薄い板状の幹をもつ樹木や、立方体をした灰色の実をぶら下げている草なども確認されており、ここがおおよそ地球ではないことが窺い知れた。


「これからどうします?」


「マヨネーズやリバーシを作る、あと蒸留酒」


「全然まだその段階じゃないですよね?」


「んー、そうだなぁ・・・じゃあせっかく異世界に来たんだし・・・」


 二人は視線を合わせてから頷きあい、手のひらを身体の前に突き出し、自身が考える最強のポーズを決める。


「「ステータスオープン!」」


・・・・・・・。


・・・・・。


・・・。


◇◇◇◇◇

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