第5話 好感度

「それじゃどんどん耕して種を植えるとしよう。手伝い頼むぞ」

「まっかせてください! どんどん頼って下さいね!」


 こうして俺はリリアと共に畑づくりに勤しんだ。

 とはいっても金の鍬で耕し、種を植え、『水神の水差し』で水を撒いただけだけどな。


 でも道具以外の部分、例えば種を植える間隔などはリリアがアドバイスしてくれた。

 そうして作業すること約一時間。種植えと水撒きが終わった俺とリリアも土にまみれていた。

 慣れない作業で疲れたけど中々楽しかったな。


「ふう、終わった。ありがとうリリア、手伝ってくれて助かったよ」

「いいえ! 私も楽しかったです! お手伝い出来ることがまた呼んでください! すぐ飛んで行きますのでっ!」


 ふんす! とやる気満々でリリアは言う。

 リリアは元気で素直で優しい、今まで俺が見たことのない、本当にいい子だ。


 そんな彼女の頭が、俺の手の届くちょうどいい位置に来てたので、俺はつい衝動的になでてしまう。


「ひゃえ!?」

「わ、悪い! いい位置にあったのでつい」


 急いで手を離そうとすると、なんとリリアはその手をガシッとつかみ、無理やり自分の頭に乗せてきた。

 ど、どういうことだ!?


「い、嫌じゃないので大丈夫です! もっとなでてもいいんですよ!?」


 顔を赤く、耳をぴょこぴょこ動かしながらリリアはそんなことを言ってくる。

 なんだこのかわいい生き物は……。許可を得てしまった俺はリリアの顔を、普段ソラをなでる時みたいに無遠慮になでもみしだく。


「り、リックしゃん……しょれはやりしゅぎ……」


 頭をなで、頬をもみ、顎下をさする。

 すべすべモチモチでなんとも手触りがいい。ソラの体もひんやりしていて気持ちいが、リリアも負けていない。これはソラに好敵手ライバル出現だな。


「ちょ、もう終わり! もう終わり、です! さわりすぎー!」

「おっとごめん。つい気持ちよくてな」


 怒られてしまった。

 年の近い女の子とあまり接した機会がないから、距離感が分からないんだよなあ。気をつけないと。

 そういえば【鑑定】で『好感度』が見れるようになってたから、後で見てみてもいいかもな。嫌われてないとは思うけど、一応確認しときたい。


 そんなことを考えていると、突然リリアが遠くを見て「あれ?」と声を出す。

 その方向に目を向けると、ソラが小さな獣みたいなものと何かしていた。


「あれ襲われてるんじゃないですか!?」

「あそこは結界の中だから、敵意がある奴は入れないはずだが……見に行ってみるか」


 ソラに何かあったら大変だ。

 俺はリリアと共にソラのもとに駆け足で向かうのだった。

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