第二章 二人の来訪者

第1話 来客

「さて、お楽しみの戦利品チェックといきますか」

「おー」


 エルフの村で一晩過ごした俺は、自宅へと帰っていた。

 俺はオーガの大群を倒したわけだが、村の復旧作業が忙しくて落とした武器や素材を適当に小鞄ポーチにしまったままにしていた。


 だが全部の武器や素材を持ってきたわけではない。

 エルフたちも物が足りなくて困るだろうから普通のオーガが落とした物は分けてあげた。エルフたちは遠慮してたけど、無理矢理渡してきてやった。


「ええと『大鬼人の角』が三十個に『大鬼人の禍斧』が五個。それと『大鬼人の鉄棍棒』が三個、と」


 オーガのドロップ品は全てBランク。普通のお店には中々並ばない高級品だ。

 だが今回の目玉はこれではない。


「こりゃあ中々……!」


 俺が取り出したのは、オーガジェネラルのガルムが落としたアイテム。

 あいつが使っていた斧に硬く鋭い角と謎の丸薬。どれも普通のオーガが落とした物とは格が違う。


「どれどれ、【鑑定】」



【大鬼将軍の赤角】ランク:A

大鬼人の中でも歴戦の猛者、大鬼将軍の赤い角。

すり潰せば高価な薬となる。


【大鬼将軍の無双斧】ランク:A+

大鬼人の中でも歴戦の猛者、大鬼将軍の得物。

圧倒的な重さと破壊力を持つ。その刃は血を吸うことで鋭利になる。

禍々しい見た目に反して扱いやすい。


鬼哭丸きこくがん】ランク:A

大鬼人秘蔵の丸薬。

口にすると一定時間鬼のごとき筋力を得る。

その製造方法は大鬼人の中でも一部の者しか知らない。



「おお! どれも凄そうだな!」


 無双斧を手に取って軽く振ってみる。

 ふむ、確かに大きさの割に扱いやすい。少し重いが振り回せない程じゃないな。

 聖剣だけに頼るのもよくないからこれも持ち歩こう。


「角は後で薬の材料にするとして……なんだこれ?」


 鬼哭丸きこくがんという名前の丸い薬を手に取る。

 見た目は普通の薬だ。こんな物が大鬼人秘蔵の薬なのか。


「まあAランクだから効果は確かなんだろうな。でも一回しか使えないのはもったいないな。いつ使えばいいやら」


 そうぼやきながら丸薬をじっと見る。すると、


「ん?」



鬼哭丸きこくがん

→錬金台で製造可能

材料

・大鬼人の角(大鬼将軍の赤角でも可)

・エルフグラス

・アオシアの木皮

・トロルツリーの根



「お、お、お!?」


 なんと鬼哭丸きこくがんの材料が表示された。

 まさか見ただけでそんなことが分かるなんて……神の目の力、恐るべしだ。


「アオシアの木とトロルツリーは森の中にたくさん生えていたな、今度採取しておくか。くく、楽しくなってきたな」


 錬金と鍛治はやっていて楽しい。王子のままでいたら一生やることはなかっただろうから、そこは追い出されて感謝だな。

 もっと色々な物を作ってみたい。


 と、そんなことを考えていると突然家の扉が開く。


「おじゃまします! 遊びにきました!」


 元気な声でそう言ったのは、エルフのリリアだった。

 長い耳をぴこぴこと動かしてご機嫌な様子だ。


「よう。もう来たのか。村はいいのか?」

「はい! むしろパパ……族長が会いに行ってこいと言ってました!」

「そうか、ならいいんだが」


 リリアが入ってきたことで家の中が一気に賑やかになった。

 たまにはこういうのも悪くないな。


「ソラちゃんもこんにちは! 遊びに来たよ!」

「わーい! やった!」


 ソラもリリアに懐いているみたいだ。

 村にいる時話しているのを見かけたからその時に仲良くなったんだな。


「ところでリリア、昼は食べたのか?」

「へ? まだですけど」

「そうか、ならちょうどいい」


 にやりと笑った俺は、机に置いてある小鞄ポーチの中からある物を取り出す。


「こ、これは……!!」

「おー! おいしそー!」


 リリアは目を丸くして驚き、ソラはテンションが上がる。

 無理もない、これを見れば誰でもそうなるだろう。


「リックさん、これって」

「これは『猪突牛の高級霜降り肉』。今日の昼はこれを食おうと思ってたんだ。お前も食べていくだろ?」


 俺がそう尋ねると、リリアは口の端によだれを浮かべながら首を思い切り縦にぶんぶんと振るのだった。

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