第10話 長い耳の逃走者
「ソラ、お前喋れたのか?」
「んー、なんか急にしゃべれるようになった。こう体をぶるぶるってやったらできたよ」
「そうか……」
確かに喋ってる時、ソラは体を細かく震わせている。
もしかしたらこれはスキル『超振動』の効果かもしれないな。
体を喉のように震わせて、声を出してるんだ。スライムってそんなことが出来るんだな、不思議な種族だ。
「話せるようになって嬉しいよソラ。これからもよろしくな」
「うん!」
頼もしい味方を得た俺は再び狩りを再開しようとする。
すると、その瞬間森の中に女性の叫び声が響いた。
「なんだ!?」
声は結構近くから聞こえた。
モンスターに襲われているのだとしたら、まだ助けられるかもしれない。
「……よし」
何かの罠の可能性はある。
でも助けられるかもしれない人を見捨てるなんて俺には出来ない。気づけば俺は声のした方向に駆け出していた。
五分ほど森の中を駆け抜けた俺は、森の中を走る人物を二人見つける。
一人は大きな体をしたモンスター。赤い皮膚に頭に生えた角、あれは
そしてオーガから逃げるのは金髪の少女だった。
歳は俺と同じか、少し下くらいだろうか。とても整った顔立ちをしている綺麗な人だ。
でも俺は顔よりも気になる所があった。
「あの長い耳。まさかエルフか?」
ツンと尖った長い耳。それはエルフの特徴だ。
森の中に住む希少種族エルフ。
弓と魔法が得意な彼らは、人間の前にはあまり姿を現さず、森の中に里を作ってひっそりと生活している。
中には冒険者になるエルフもいるそうだけど、俺は城からほとんど外に出てことがないのでエルフを見るのは初めてだった。
「ひとまず助けなきゃな」
速度を上げた俺はオーガの背中に迫る。
俺の接近を感じ取ったのか、オーガは振り向いて俺と目を合わせるが、もう遅い。俺の聖剣は既に振り抜かれている。
「終わりだ」
高速で放たれた剣閃が、オーガの首を刈り取る。
頭を失った体は数歩歩いた後、その歩みを止め、その場に崩れ落ちる。あの状態で歩くとはたいした生命力だ。
「大丈夫か?」
エルフと思わしき少女に近づき、話しかける。
彼女はオーガが死んで気が抜けたのかその場に座り込んでしまっていた。よく見れば体のあちこちが擦り切れている、逃げた時に傷ついたんだろう。
「安心しろ、俺は敵じゃない。オーガは倒したからもう大丈夫だ」
「あ、ありがとうございます……助かりました……」
震えた声で彼女は喋る。まだ恐怖が抜けきっていないようだ。
無理して聞き出すのも気が引ける。どうしたもんかと考えていると、彼女は何かを思い出しハッとすると、大きな声でこう言った。
「た、助けを呼んでください! このままじゃ私の家族が、同胞が全員殺されてしまうんです!」
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