第6話 腹が減ってはサバイバルは出来ぬ

 外に出た俺は、一人食べ物を集めた。

 神の目の力を使えば食べれる物の場所もすぐ分かる。モンスターもいないし楽な作業だ。


「結構採れたな。これくらいあればしばらくは困らなそうだ」


 木の実や葉っぱなど、家の近くに自生する物を集めた。

 



【ホアバの実】 ランク:A

赤い色をした栄養満点の木の実。

食べると全身に力がみなぎる。


【エルフグラス】 ランク:A

エルフの耳に似た形の葉。薬草。

傷を治す効果があり、すり潰すと最高品質のポーションの材料になる。



 取った中にはこんなヤバそうな物まであった。

 Aランクの食べ物なんて王族だった俺でもそうは食べられなかった。危険な魔物が多いから希少な植物が残ってるんだろうな。


「いい薬草が手に入ったのも収穫だ。家にあった錬金台でポーションを作ってみるのもいいかもな」


 そんなことを言いながら採った物を『次元神の小鞄ポーチ』に入れていく。

 見た目こそ小さいが、かなり多くの物を入れることの出来る特別な小鞄ポーチだ。おまけにどれだけ物を入れても重くならないすごいアイテムだ。

 これも家にあったのを拝借した。


「さて、そろそろ帰るとするか」


 やることを終えた俺は帰路につこうとするが、突然寒気を感じて立ち止まる。

 そして次の瞬間、木の間から大きな影が姿を現す。


『グゥ……ッ』

「な――――」


 俺の倍以上ある巨体。緑色の肌。そして長い耳と鼻。

 トロールだ。


『グアァッ!』


 トロールは俺をみると雄叫びをあげ、手にした棍棒を構える。

 口からは涎を垂らし気味の悪い笑みを浮かべている。どうやら俺のことをご馳走だと思っているみたいだ。


「……やるしかないみたいだな」


 小鞄ポーチから聖剣アロンダイトを取り出し、構える。

 トロールは家への帰り道を塞ぐように現れたので逃げることは不可能。戦うしかない。


「やってやる。やってやるぞ!」


 聖剣を握っているとはいえ、怖い。

 トロールのレベルは40。それに対して俺はたったの6。その差は歴然だ。


 だけど俺は勇気を振り絞って聖剣を振り下ろす。すると、


『グア……?』


 まるでバターのようにサクッとトロールの体が縦に斬れてしまった。両断こそ出来なかったが、物凄い量の血が吹き出る。

 予想だにしない結果に、俺とトロールは二人して目を丸くする。


「うそ」


 呆然とする俺。

 一方トロールは気を取り戻し再び俺に襲いかかってくる。相当の深手を負っているのになんて奴だ。


「これで、どうだ!」


 今度は横なぎに剣を振るう。

 するとトロールの胴体は両断され、そのまま地面に崩れ落ちる。



「はあ……はあ……やった……」


 聖剣の力に頼りきりだったが、なんとかトロールを倒せた。

 勝利の余韻に浸っていると、突然体がビクン! と震える。


「なんだ!?」


 体に力がみなぎる感覚。

 何か毒でも受けたのかと思って、慌てて自分を【鑑定】してみる。


 するとなんということだろう。俺のレベルが6から一気に30まで上がっていた。

 王城の騎士より高くなってるじゃないか。これがトロールを倒した成果だっていうのか?


 見ればトロールの体は消え去り、そこには奴が手にしていた棍棒と、トロールの牙だけが残っていた。他の肉体はどこにもない。


「そういえばモンスターは死ぬと強力な部位を残して消えるんだったな」


 強力なドラゴンなんかは死体が丸ごと残ることもあるらしいが、ほとんどのモンスターは死ぬと消えてしまうらしい。

 そしてその生命力はモンスターを倒した者に還元される。


 つまりモンスターを倒せば倒しただけ、強くなるのだ。


「こうして数字でどれだけ強くなったのか分かるとテンションが上がるな。レベルも上がったし、今ならハイトロールも倒せそうだな」


 戦利品を小鞄ポーチに収納した俺は、上機嫌で帰ろうとする。

 すると茂みが動き、また何かが俺の前に現れる。


「なんだ!? またトロールか!?」


 聖剣を構える俺の前に現れたのは……小さなスライムであった。



【本日の成果】


【耳長鬼の棍棒】ランク:C

トロールの棍棒。木製。

見た目は悪いが頑丈。


【耳長鬼の牙】ランク:C

トロールの鋭い牙。

すり潰せば薬の材料になる。

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