第3話 レベルキャップ

「リックさん。今日は何かするんですか?」


 おいしい食事を終え、椅子に座ってゆっくりとしているとリリアがそう尋ねてくる。

 ふむ……どうしようか。

 特に何をするか考えてなかったな。


「食料は……ひとまず足りてるから急いで狩りに行くまでもないか。レベルも今は上がらないからなあ」


 俺のレベル表示は今「レベル:99(MAX)」となっている。

 どうやらこれ以上レベルが上がらないようだ。


 レベルが99以上にはならないのかと思ったけど、その考えはソラを【鑑定】して覆ることになった。



【ソラ(変幻自在のヴァリアブルスライム)】

レベル:102 状態:仲間 好感度:134(上限突破)

スキル:水刃、超水刃、酸弾、超振動、変形

空色のスライム。リックが大好き。

体を様々な形に変形することが出来る。


 

 色々気になることはあるが、一番大事なのはレベル。

 なんとソラはレベル100を超えていたのだ。

 その影響か種族まで変化……いやこれは進化か? までしていた。


 重要なのはレベルは更に上がるってところだ。きっと俺にもその方法がある。

 その方法も探さなければいけないが、まあリリアが遊びに来てるんだ。今それをする必要はないか。


「あ、そうだ。やろうとしていたことがあったんだ」


 あることを思い出した俺は、ある部屋に向かう。

 リリアもその後をついてくる。


「ここは……?」

「ここは倉庫だ。色んな物が置かれている。武器もあるから気をつけろよ」

「わ、わかりました。気をつけますっ」


 錆びた聖剣や、オリハルコンもこの倉庫に眠っていた。

 この部屋にはまだまだ未鑑定の物品が残っていて。入る度ヤバそうな物を見つけてしまう。


「確かこの辺に……あった」


 俺が取り出したのは一本のくわ。土を掘り起こす道具だ。

 だが普通の鍬がこの倉庫に眠っているわけもなく。


「リックさん。その鍬の先っぽ、もしかして『金』で出来ているんですか?」

「ああ。かっこいいだろ?」


 鍬の先端の金属部分は、光り輝く黄金で出来ていた。

 武器などは錆びている中、この鍬はなぜか錆びることなくその輝きを保ち続けていた。


 もちろん見た目だけじゃなくてその性能も破格だ。



【豊穣神の黄金鍬】

ランク:EX

豊穣神の祝福を受けた黄金の鍬。

どのような土地でも植物が育つのに適した肥沃な土地に変えることが出来る。



 一回死んでしまった土を蘇らせるのは難しいと聞く。それこそ何年掛かりでやるような作業のはずだ。

 しかしこの鍬で耕すだけで、それが可能らしい。

 戦闘能力こそないけど、聖剣に負けないくらいぶっとんだ能力をしていないか?


「リックさん。もしかして畑を作るのですか?」

「ああそうだ。肉とかは狩りでとれるけど、美味しい野菜はあまりないからな。畑作業にも興味があったしやってみようと思ったんだ」


 これも王族のままだったら絶対経験できなかったものだ。

 父上や兄上は絶対やりたがらないだろうな。こういうの。だけど姉さんは好奇心旺盛なタイプだから食いつきそうだ。飽きるのも早いからすぐ俺に丸投げしそうだけど。


「畑を作るということは、リックさんはしばらくここから離れるつもりはないってことですか?」

「まあそうだな。たまに街に行くくらいは考えてるけど、この家を拠点にするつもりだ」

「そうなんですね。よかった」


 なぜかリリアは嬉しそうに笑う。

 不思議な奴だ。


「家から出てすぐのところに畑を作るのに良さそうなスペースがある。リリアも来てくれるか?」

「あ、はい! もちろんです! 野菜と言ったらエルフですからね、お手伝いしますよーっ!」


 なぜかやる気満々なリリアと共に、俺は外に向かうのだった。

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