第5話 思わぬ出会い

「よーし、やるか」


 外に出た俺は、矢を一本筒から抜き取り弓につがえ、引く。

 リリアの持っている弓より硬くて重い。

 だけどその分耐久力も高い、これなら結構力を込めても壊れることはなさそうだ。


「いいね、気に入った」


 弓がミシ……となるところまで引いた俺は、遠くに生えている木をめがけて、射る。

 バシュ! という大きな音ともに放たれた矢は、ものすごい勢いでまっすぐ飛んでいき、狙っていた木に命中。そしてその木を木端微塵に粉砕したあと、その後ろにある木を何本もなぎ倒してしまう。


「おいおい、まるで大砲みたいな威力だな……」


 この威力なら城壁もぶち抜けてしまうだろう。この強さだと狩りには使いづらそうだが、弓のいいところは威力の調整が出来るところだ。もう少し力を弱くすれば狩りにも使えるだろう。


 弦の張り具合などもうちょっと調整したほうがいいところはあるが、ひとまず完成と言ってもいいだろう。俺だけの弓、テンションが上がるな。


「うひゃー……すごい威力ですね……あれ?」


 弓の性能に感心していたリリアが、なにかを見つける。

 俺もその視線の先に目を向けると、倒れた木の近くに転がる黒いなにかを発見した。


「なんだありゃ?」


 警戒しながら近づく。


「鳥? いや……コウモリか?」


 それの正体は大きめのコウモリであった。

 どうやら木に留まっていたみたいだが、俺が木を倒したことで落ちてしまったみたいだ。うつぶせに倒れてピクピク動いている。


「コウモリって食えるのか?」

「えっと、エルフはあまり食べませんね。そもそもこの森にコウモリはほとんど生息していないはずですが……」


 などと話していると、突然コウモリががばっと起き上がる。

 なんだこのコウモリ、片眼鏡モノクルなんかつけてやがる。


 そのコウモリは辺りをキョロキョロと見回したあと、俺のことを発見し口を開く。


「な、なにが起きたのですか!?」

「うわ、喋った」


 やけに表情が豊かだと思ったが、喋れるとはいよいよ普通のコウモリじゃないな。いったい何者なんだ?


「この惨状はあなたの仕業ですか!?」


 なぎ倒されている木を見て、コウモリはそう尋ねてくる。


「えーと……はい。まさかコウモリが留まっているとは思わず」

「ふむ、なるほど。これほどの力を持つものであれば……」


 怒られるかと思ったが、コウモリの反応は少し違った。


「御仁、腕に覚えはおありか」

「えっと、そこそこ?」

「なるほど。このような森の中で強者に出会えたのは僥倖ですな」


 強者認定されてしまった。あまり厄介事に頭は突っ込みたくないんだけど。


「ここで会ったのもなにかの縁。無理を承知でお願いがあります!」


 やけにかしこまった口調で話すそのコウモリは、地面に手を付きこう言った。


「力を貸していただけませぬか! このままでは『姫』の身が危ないのです!!」

「姫……?」


 やれやれ、また大変なことに巻き込まれそうだ。

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