第15話 真相
「一応探してはいる、というポーズを取るためにその者は貴女を雇いはしましたが、報酬を中抜きした上に、虚偽の情報をつかませ殿下を見つけられないようにしていました。嘆かわしいことです」
「え。私は殿下の容姿を少しばかり聞いたのですが……」
「それは全て『嘘』です」
「そんなめちゃくちゃな……」
ソフィアは呆れて何も言えなかった。
組合員の中には不正に手を染める者がいるのは知っていた。
報酬を中抜きしたり、情報を他組織に売って私腹を肥やしている者はどうしても出てきてしまう。
しかし依頼人を脅して金を取ろうとする者はそうはいない。しかも王家関係のネタでなんて……命知らずにも程がある。
「従わなければ国王に密告する。そう言えば従わざるを得ないと思ったのでしょう。国王は民から恐れられていますからね。私は身分を明かしていなかったので、依頼人がただの使用人だと考えたのでしょう。愚かなことです、このような真似をしなければもっと長生き出来たのものを」
静かな殺意をたたえながら、リンは言う。
ソフィアはその愚かな組合員がどうなったのかを聞くことは出来なかった。
「これはこちらの落ち度です。代理を組合員に任せず、最初から私が依頼人として姿を現せば良かった。申し訳ありません」
「い、いえいえ! まさか組合員がそのようなことをするなんて想像出来ません。しかたありませんよ」
「ありがとうございます。それでは引き続き貴女には依頼をお願いしたく思います。よろしいですか?」
「はい、もちろんです。必ずや殿下を見つけ出して見せます」
力強く言い放つソフィアを見て、リンは満足げに頷く。
「では殿下の容姿の情報を改めて伝えさせていただきます。絵の上手いものに殿下の顔を描かせたのでお渡しします」
「はい、助かります」
リンはカバンの中から一枚の紙を取り出し、机の上に置く。
そこに描かれていた顔を見て、ソフィアは「ふぇ!?」と情けない声を上げる。
それもそのはず、そこには絶対に王子ではないと思っていた、森で出会った青年の顔が描かれていたのだから。
(なんで!? どういうこと!? だって王子は弱くて捨てられたんじゃないの!? それにあの森にずっと住んでるみたいだったし家もあった。意味が分からない――――!)
混乱するソフィア。
しかし頑張って頭を切り替えた彼女は、リンに自分が森で会った人物のことを話す。
「実は――――」
その話を聞いたリンは、すぐさま行動を開始したのだった。
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