第三章 森の異変
第1話 いつもの日常
よく晴れた日の昼頃。
俺は日課となっている畑仕事に精を出していた。
「うん、これもそろそろ収穫時期だな。いい出来だ」
何かを育てるというのは楽しい。俺はすっかり栽培にハマっていた。
「しっかし……色々育てたな」
目の前に広がるたくさんの植物たち。
今では野菜だけでなく果物も育てている。
本来であれば育つまでに何年もかかるのだろうが、豊穣神の加護がかかった土地でその常識は通用しない。一晩で芽が出て、次の日にはもう木になっている。正直ちょっと引く。
「この果物とかも街で売ったらとんでもない金額になるんじゃないか? こんなの王族でも食えないぞ」
金色に輝くリンゴを一つもいで、そのままかじる。
口の中に広がる芳醇な甘味とほどよい酸味。一口ごとに果汁が口の中に溢れて溺れそうだ。
こんなの食べたら普通の果物じゃ満足できない。
ちなみに今採れるものはというと、
【黄金リンゴ(品質:最良)】
ランク:S
金色に輝くリンゴ。別名知恵の実。
爽やかな甘味とほどよい酸味が特徴的。
食べると僅かに魔力が上昇する。
古代では神から与えられた果実として扱われ、王のみが食べることが出来た。
現代では絶滅していると言われている伝説の果実。
【
ランク:S
竜族が好んで食べる赤い果実。
数キロ先まで届く芳醇な香りと、舌が痺れるほど強烈な旨味を持つ。
食べると僅かに筋力が増加する。
【サンライズハーブ(品質:最良)】
ランク:A+
太陽の力を秘めた薬草。別名日輪草。
食べると体力が回復し、体がポカポカ暖かくなる。
【ルナティックベリー】
ランク:A+
月の力を秘めた果実。別名月光果。
食べると魔力が回復し、しばらく眠らないで活動できるようになる。
こんな感じだ。
流石に一人じゃ処理しきれなくなったので、エルフたちにもおすそ分けしている。
高ランクの物を食べているからか、エルフたちは前より強くなっているらしい。
もしまたオーガに襲われたとしても、あいつらだけで対処できるかもな。
「それにしても不思議な能力だよな、これ」
最近改めて思う。
【神の目】、そして【鑑定】は他のスキルとは全く異なる、異質な力を持っている。
身体能力が上がったり、魔法が上手くなるスキルは分かる。共通性も感じる。
でも文字が見える能力ってなんだ? そもそもこの名前は説明文は、誰が用意したものなんだ?
便利に使わせてはもらっているけど、俺はこの能力のことを何も知らない。いつか分かる日が来るのだろうか。
と、そんなことを考えていると、
「おはよーございますリックさん! 今日もいい天気ですね!」
もう聞き慣れた元気な声が畑に響く。
声のした方に顔を向けると、エルフのリリアがぱたぱたと走りながらこっちに来ていた。
その頭には麦わら帽子が被さっている。エルフと麦わら帽子……悪くない組み合わせだな。
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