第12話 初めての魔法
「ここをこうして……こう」
ソフィアの体を流れていた魔力の動きを真似して、体内の魔力を移動させる。
魔力を動かしている内にコツがつかめてきた。
これなら……いけそうだ。
「
頭の中にソフィアが生み出した炎を想像しながら、指先に溜めた魔力を爆発させる。
すると俺の手からソフィアの放ったものに負けず劣らずの炎が吹き出す。
「おお……!」
これが魔法。
レベルが上がって魔力が増えていたおかげか、凄い威力だ。これなら全然実践でも使えるな。
それにしても俺が魔法を使えるなんて感動だ。
少し前まで魔力がほとんどなかったからな。レベルアップ様様だ。
「ありがとうなソフィア、お前のおかげだよ」
「ど、どういたしまして……じゃなくて今の何!? 何で急にあんな魔法が撃てるようになったの!?」
混乱した様子のソフィア。
まあいきなりあんな魔法撃てたら驚くのも無理ないか。
とはいえレベルのことも、神の目のことも話すことは出来ない。なんと言い訳したもんか。
「ほら、先生が良かったから」
「なるほどなるほど……って、そんなわけあるか!!」
ソフィアの見事な突っ込みが森に反響する。
魔法だけじゃなくてそっちの才能もあるみたいだな。
「魔法系のスキル持ちだってこんなに早く使えるようにならない。いったいあなた何者なの!?」
「少し覚えがいいだけさ。さ、他の魔法も見せてくれないか? 時間はたくさんあるわけじゃないんだ」
「いや、覚えがいいってレベルじゃないでしょ……」
俺のことを怪しみながらも、ソフィアは色々な種類の魔法を見せてくれた。
それらを俺はしっかりと目に焼き付け、覚えた。
これでこれからは剣だけじゃなく、魔法も狩りに使うことが出来る。楽しみだ。
◇ ◇ ◇
「お世話になったね。ありがとう」
次の日の朝早い時間、ソフィアは俺の家を出ていくことになった。
なんでも一回街に戻って中間報告をしなければいけないらしい。
「今回は軽く調査をするだけのはずだったんだけど、モンスターに追われたせいでこんなに深くまで入ってしまった。街で準備し直したらまた来るつもりだからその時はまた挨拶に来る」
「分かった。見つかるといいな、探している人」
「ありがとう、もし誰か見かけたら教えてくれると助かる。それと……」
ソフィアは胸元から一枚の紙を取り出すと、それを俺に渡してくる。
その小さな紙にはソフィアの名前と、冒険者としてのランク。そして長い番号が書いてあった。
「これは?」
「それは冒険者が持っている名刺。それを持っていると私の知り合いだと冒険者組合に証明できる。」
「へえ、そんな物があるのか」
冒険者は気に入った依頼人にこれを渡すらしい。
するとその人は次に組合に依頼をする時に、その名刺を見せて同じ冒険者を指名出来るということだ。
その他にも高ランクの冒険者の名刺を持っていると、組合が丁重にもてなしてくれるという効果もあるみたいだ。確かに高ランク冒険者の知り合いを無下に扱うことは出来ないだろうな。
ちなみに長い番号はソフィアの冒険者識別番号らしい。
「もし冒険者に興味があるんだったらその名刺を冒険者組合に見せて。私は一応『
「わざわざありがとうな。その時が来たらありがたく使わせてもらうよ」
今のところこの家を出ていく予定はないけど、選択肢は多いに越したことはない。
冒険者として旅をするのに興味がないわけじゃないしな。ありがたく受け取っておこう。
「あんたみたいな奴と旅出来たら楽しいんだろうな。前向きに考えておいてくれよ」
そう言って彼女はニッと笑うと去って行った。
なんとなくソフィアとはまた会いそうな気がする。その時には上手くなった魔法を見せられるようにしておきたい。
俺はそんなことを思うのだった。
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