第16話 夜の王都を駆ける影
月明かりが街を照らす深夜。
俺とリリアとヨルは待ち合わせ場所であるとある建物の屋根上に立っていた。
「……来たみたいだな」
王都の街中を走る七つの影を見つける。
素早く走るその影たちは、俺の前に来ると一斉に
「お待たせしました
「ああ、ご苦労」
レイラを筆頭としたダークエルフたちは夜に溶け込む黒い衣装を身に着けていた。
肌の色も相まって暗闇じゃかなり視認しづらい。夜の任務にこれ以上適した種族は中々いないだろうな。
彼らの後ろには預けていたベルもついてきている。
どうやらいい子にしていたみたいだ。
「して
「あれだ」
俺が指差した先にあるのは、五階建ての大きな建物。
表向きはデズモンド商会の所有する倉庫となっている。
だがその中には捕まえた違法な奴隷を隠している。見過ごすことは出来ない。
「俺ともう一人で中に入る。レイラ達には外で見張りをお願いしたい。この建物は大きいから、三手に分かれてくれ」
「かしこまりました。中に入るもう一人はどなたなのですか?」
「ああそうだ。紹介しておく」
俺がそう言うと、暗闇の中からすうっ……と一人の女性が姿を表す。
全く気配なく現れるものだからレイラは驚きビクッとする。
「……初めまして。リンと申します。以後お見知りおきを」
「あ、ああ、君が協力者か。私はレイラだ。よろしく頼む」
レイラには予め王都に協力者がいることは伝えている。
俺が元王子であることまでは話していないのでリンの素性までは知らないが。
握手するリンとレイラから視線を外した俺は、リリアとヨルに話しかける。
「それじゃあ二人とも、外は任せたぞ」
「は、はい! 私頑張ります!」
「ん、任せて。リックは安心して暴れてきて」
二人とも気合十分といった感じだ。頼もしい。
次に俺は肩に乗っているソラをベルの上に乗せ替える。
「二人で協力してみんなを守ってくれ、出来るか?」
「うん! 任せてー!」
「わんっ!」
「よし、いい子だ」
最後に二人をわしわしと撫でて、俺はリンの横に並び立つ。
「……まさかリッカード様とこの様に肩を並べ、仕事をするなど思いもしませんでした」
「そうだな。俺も思わなかったよ」
数ヶ月前までは外に出ることもあまりなく、城の中に引きこもっていた。
それが今では外に出てモンスターや悪人と戦うことになるなんてな。誰が想像つくんだこんなの。
「この様なことを言っては不敬かもしれませんが……こうして隣に立ち、お役に立てること、大変嬉しく、光栄に思います。リッカード様のお役に立てるよう、誠心誠意努力させていただきます」
「心強いよ。それじゃあ早速……始めるとするか」
俺は影のマントを生み出し、身にまとう。
口元にもそれを覆わせて一応顔を隠しておく。
リンも同様に黒い布を巻いて顔を隠す。誰一人逃すつもりはないけど、リンも俺も顔を知られたら面倒くさいからな。
「それじゃあみんな。ここは任せた。行ってくる」
力強く頷く仲間に見張りを任せ、俺とリンは建物めがけ音もなく駆け出すのだった。
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