第47話 呪いの根源2

「そんな簡単に生き方が変えられるわけないんです!

、、ここじゃ、嫌なら力で示してねじ伏せるしかなかった。父親が働かないし母さんも大変そうだし、、妹が変なやつに目をつけられないように不良に加わって、、ますます力頼りになって、、そうして、、この家である日、父親を危うく殴り殺しそうになりました。。情状酌量と少年法で免罪になったけど、、俺の手が汚いことに変わりはないんです!


そんなとき、アランさんが母さんの弁護士になり、、父と母さんが離婚できることになった。


俺は全て忘れたくて、昔やってたフルートをやり直した、、アランさんは援助してくれました。それで、勉強もわからないしフルートなら得意だから、フルートで食べていくことに決めて、、でも、、そっからはミカエルさんも知ってのとおり。素行が悪かったり教授に反抗して音大も停学になるし、、オケのいくつかは団員とトラブって切られたし。

、、ミカエルさんとは相性よく吹けたと思ってきたのに、ミカエルさんが精神薬飲んでまで演奏していても俺はなんの力にもなれないし、アランさんに払ってくれた学費を返したいのにアランさん受け取ってくれないし、、自分の力で俺は何もできない。更生したつもりでも全然だめだった。、、あんな、まともな人どころか一流奏者ばかりの楽団の舞台に立つ資格はないんです。ここがお似合いで、」


サイモンはアランに会ってから、もともとミカエルの最近の振る舞いのせいで気が立っていたのに輪をかけて明らかに不安定になっており、取り乱した口調で言いながら俯いている。


ミカエルはサイモンの過去の出来事が予想以上に重く、何を言ったら良いか考えたが、一つだけ自分と重なる点に思い至り、サイモンに静かに近づくと、埃の積もったソファへサイモンの隣に座り、口を開く。


「私の父は、、あなたも聞いているかもしれませんが経営者でね。経営者としては優秀ですがお世辞にも良い性格ではなく、息子や妻にすら完璧なことを求め、そうではないと価値がないと判断する、冷酷な能力主義者です。そんな父親の血を私は引いています。でも、同じようには生きないつもりです。

人としても、夫としても父親としても。

、、だからこそ私の息子、、ベネディクトもフルートをやっていますが、私はベンに私と同じようになることは求めたくありません。ベンの人生はベンのもの。。父のように、、誰かを能力や素質だけで評価するような人間にはなりたくない。、、もし私の中に父と同じような側面があったとしても、私はそれに抗いたいと思います。

血を引くからだけではなく、言われてきたことは呪いになって、、自分を侵食しますが、、私はそれに屈したくない。


サイモンはどうなんですか?

あんなやつと自分は同じだと、自ら成り下がるんですか。そうやって逃げれば楽だとは思います。、、それで、楽団をやめて、フルートもやめる?


辞めるのは自由ですが、明日のコンサートはいきなり降板されても困るので出てもらいます。

、、そして、プロのオケ団員であり舞台に上がる以上、どんな出自で事情があっても求めるレベルを下げることはできません。

、、少なくとも、私はね。

、、、ペール、ライオネル、ホテルに戻りましょうか。遅くまで付き合わせてすみませんでした。」


ミカエルは服についた埃を払い、立ち上がると2人を促す。


「え?でも、、サイモンがまだ、」


「あとは自己判断です。行きましょう。」


ライオネルはサイモンを振り返り言ったが、ミカエルは短く返すと先にアパートを出た。


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