第183話
オズワルドにビデオのデータを渡すのを拒否されて、ヨハンはオズワルドの意図が読めずにオズワルドを睨んだ。
「そうですよ。僕はヨハン•レイノルズ、、ヴァイオリンの帝王と呼ばれるリチャード•レイノルズの息子です。父と比較されるプレッシャーに潰れてクラシックを諦め、一時はヴァイオリンも辞めたのは事実です。
、、髪や瞳や苗字は、僕を心配しすぎる父の強い意向で偽っていました。
でも、僕は自分を偽るのは嫌だったので、イギリス滞在時に父にも話して地毛に戻しました。
僕は僕で、父にはなれないけど父も僕ではないんだと今は思えるから。
、、僕を苦しめたくないなんて言いますが、それならなぜそもそも、そのビデオを出してきたんです?最初から黙っていれば良かったのではないでしょうか。意図がわからないです。
、、オズワルドさんは嫌がらせなんてする人じゃないと、、思いたいから余計にわかりません。」
ヨハンは父に似た長身のために長い腕を前に出して机の上に置き、身を乗り出してオズワルドに詰め寄る。
「ビデオを出してきた理由ね。。
ヨハンにとってこのビデオが自分に活かせるものなら、渡したいと思ったからさ。もちろん君をいじめたかったわけじゃない。
、、君はさ、、自分らしく弾けって言われても自分がわからないって悩んでない?」
オズワルドは一旦、ヨハンのパソコンに手を伸ばし、再生を止めてからヨハンを落ち着いた態度で見つめながら話す。
「、、どうしてそれがわかるんですか?確かに、そうですが、、。」
ヨハンは驚いて尋ねる。
「君のライブに前に俺行かせてもらったろ。
俺は音楽は素人だけどそれなりに仕事で編集してきたからなんとなく聴くとわかる。
、、君の演奏がリチャードさんを無意識に真似てしまってるのも。
、、それじゃまた同じ石に躓いてしまうね?
、、、俺は思うんだけどさ、、自分のことすら人はわからないと思うんだ。」
煙に巻くような答え方をしながらオズワルドはタバコを吸い始め、ヨハンがいない方に煙を吐く。ヨハンはそれをみながら更に困惑した。
オズワルドは理屈よりはフィーリングで発言するタイプなので、よく分からない発言にはヨハンは慣れていたが、今回の話題でそれをされるとどうして良いのか分からない。
「、、そうかもしれませんが、、だから僕は困ってますよね。話の着地が見えません。」
「だからさ、自分の個性!とかを出そうとか見つけるんじゃなくさ、自分が人よりちょっと得意なものとか、好きなものとかが取っ掛かりになるんじゃないかい?
、、俺より動画編集が上手くてセンスがあって、もっと儲けてる同業者わんさかいるけどさ、息詰まりそうなときは俺はそう考えてるんだよなー。
意外と苦手なことや嫌いなことも君の特性の裏返しかもしれないし。
あ、、ただあれだな、ヨハンは頭良いし、卒ない優等生だからな、、弱みは俺にはよくわからんな。」
「、、なるほど、、そう考えたことはあまりなかったです、、その視点から弾き方を考えてみます、、。
、、それで、ビデオは、、」
ヨハンはようやくオズワルドが言いたいことがつかめ、微笑んだが、相変わらずビデオをどうしたら貰えるのか、そもそもくれるのかがわからず尋ねる。
「あ!そうだな。ビデオなんだけどさ、、社長の持ち物って言ったじゃん?社長って実はクラシックもジャズも詳しいんだけどさ、、ヨハンが良い演奏したらもしかすると無料で譲ってくれるかもな??」
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