第185話
ヨハンたちジャズバンドの5人は、夜も遅かったためその日はボストンのホテルに宿泊した。
全員で打ち上げがてら飲んだ後、ヨハンは交際している2学年上のアクセルと同じ部屋に泊まり、ソファでテレビ画面を使い動画サイトを検索して互いの好きな曲や演奏を聴いたり雑談したりしたあと、ベッドに二人で入った。
「ははは。可愛いな。ヨハンはさ。
そんなに恥ずかしがらなくて良いのに。
こっち向いてよ。」
アクセルは、女性と寝るのは初めてのヨハンとは違い手慣れた様子で余裕の笑みで、アクセルの顔や身体が近いとそわそわして落ち着かず、背中を向けるヨハンを片手で突く。
「あっ、、アクセルとは違うんだよ、、僕はあんまり女の子と付き合ったこともないしさ、、。ベッドなんてはじめてだ。
、、でもさ、、君に比べてなんか色々知らなくて悔しいし、、今日はこれでも勇気を出したんだ。」
「じゃあもっと勇気を出してみな。
君はお堅すぎるよ。そこが可愛いんだけどさ。ほら。アタシが許してるんだ。どこを触ってもキスしても良いんだぜ。
アタシは初めてじゃないし。だから別に減るもんじゃない。たまには気持ちを開放してみてほしい。」
アクセルはいつも通り冷静な、しかし勝ち気な微笑みで言いながら、ヨハンに後ろから抱き寄せ、ヨハンの片手を自分の胸元に当てる。
「!!ま、、待った!!待った待った!!
無理だ無理、、僕父さんと違ってそういうの慣れてないし、、普通に何もせず今日は隣で眠ろ、、」
ヨハンは、アクセルのほどよく膨らんだ胸の感触に動揺しながら話したが、アクセルの黒い快活な瞳と目が合い、それに魅入られて思わず動作が止まる。
「やっとこっち見てくれたな。
、、そんなこと言ってるけど、ヨハンはかなりモテるんだろ?同学年の女子からたびたび言い寄られたり食事に誘われるけどつれないってマグナスが言ってたよ。
でもそんな君のままでもそうじゃなくなってもありのままで良いのさ。」
アクセルはそのまま、ヨハンをもう一度抱き寄せ、彼女のほうからキスを始める。
二人は付き合い出してから4ヶ月立ち、一緒に寝るのは初めてだがキスは深いものまで何回もしている。
「、、アクセル、、気持ちは嬉しいけど、、僕やり方よくわからないし。
、、これ以上はやめとこ、、」
「ライブに来たちびっちゃい女の子。ヴァイオリニストのイザベラちゃん。
元カノだろ?君たちが送り合う視線や会話の仕方を見ればわかるよ。
、、アタシさ、、ヨハンも噂で知ってるだろうけどこんなかんじで個性的だからさ、
男も女も付き合うんだ。、、それにヨハンと付き合う前までは複数と同時に付き合っていた。。
でも、、君は繊細で真面目だから、、傷つけたくなくてさ。他の皆んなとは別れた。
、、、君にアプローチされてさ。
、、自分とまるで違うのに演奏の息は合う君がどうしょうもなく気になったし好きだったからね。
ただ、、君があの子と唯一無二のパートナーに戻りたいなら,アタシから離れても良いんだ。アタシはそしたら前に戻るだけだから。
、、君には君に素直になってほしいんだ。ほんとの君をもっと見たい。
おいで。、、知らないことはアタシが教えたら良いのさ。」
「!!アクセル、、それは、、、それは多分ないよ。僕とイザベラは一緒にいない方が幸せなんだから。
、、それにさ、、君がこのまま僕だけみてくれさえするなら僕は、」
アクセルは、通常の価値観で言えば別れを切り出しているような,しかしアクセルの価値観では最大の思いやりを口にした。ヨハンは、その言葉を受け止められない感情と受け止めようとする意思に挟まれながら、思考を整理できずに言葉を返す。
アクセルはそれに対して何を思ったのか、落ちついた微笑みでヨハンをリードしてくれ、二人は身体を重ねることになった。
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