第67話

ヨハンの病室前に行くと、2人が笑ったり騒ぐ声が聞こえてきて、リチャードから聞いていたよりもヨハンがだいぶ元気になったのが分かり、明は嬉しく思った。

もっと歓談してほしいところだったが、もう夕方なので部屋の中に入る。


「ヨハン、久しぶり。、、顔色は良さそうだね。司がいきなり来てびっくりさせたろ?

お詫びと言うかお見舞いというか、、置いとくね。オーガニック店で冷凍できるスープ買ったんだ。俺も体調崩したときは食べていて。おすすめできると思う。」


明は、包みを見せてから、部屋の冷蔵庫に仕舞う。


「ありがとうございます!

いえ、、司も、中本さんもお見舞いありがとうございました。、、、なんか話していたら気分転換になりました。」


「、、リチャードは真面目だし、ヨハンも真面目だから、それじゃ気が滅入っちゃうと思うよ。

、、父親に話しにくいことがあったら俺や礼でも良いし、あんまり思い詰めたら良くないよ。

今度は調子悪くなる前に、誰かに話すんだよ?

、、家も近いんだし、あいつにヴァイオリン始めるの反対されたとき俺と礼は味方したでしょ?覚えてる?今でもヨハンの味方だからね?

リチャードが嫌になったらうちに来なよ。ね?」


中本が温厚な笑顔で椅子に座り、ベッドに座っているヨハンに視線を合わせて言うのを聞いているうちに、ヨハンの視界が滲み始める。


「あっ、、すみません。。嫌だな、、疲れたのかな、、。」

ヨハンは慌てて微笑んだが、涙しているのを見て、司はゲームをやめて振り返ると、ハンカチを貸す。ヨハンは受け取り拭くが、止まらない。


「うっ、、ありがとう、、なんでだろ、、止まんない、、ぐすっ、、」


「、、、最近、少しコンクールとかで上位じゃないときもあるからって、、俺や礼のことも避けてさ、、司には数年前から忙しくなって会いに来なくなったし、めちゃくちゃ寂しかったよ。

俺はさ、別にヨハンが上手くなりそうかってことを1番に考えて、ヴァイオリンを始める時味方したわけでもないし、リチャードの息子だから、ヨハンと親交を得たいんでもないよ。


ヨハンがヴァイオリンをやりたい直向きな気持ちに動かされたんだ。ヨハンがいつでも何にでも真摯であること、、それが魅力的で見ていたくなるんだよ。、、別に上手いかどうかとかあいつの息子かとか気にしたことない。あいつの子どもでも人柄が嫌いならこんなに話したりしたくない。


、、俺も日本では有名なヴァイオリニストの一家で、それを踏まえて自分を見られてるのが嫌でたまらなかったけど、、少し場所を変えてみたらそんなの関係なかったし、、今になって振り返ると、日本でも家や楽器のうまさに関係なく付き合ってくれた人はいた。、、悩んでいたときには視野が狭くなって気がつけなかっただけで。」


明はたまに嗚咽を漏らして泣くヨハンの背をさすりながら、自分の経験談が少しでも助けになればと話す。






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